奥田染工場さんは、シルクスクリーンプリントを中心とする染色工場で、ミントデザインズなど日本を代表するクリエイティブなブランドから信頼されている小さな職人工場。ヤマナシとも関係の深い鈴木マサルさんのブランドUNPIATTOやイイダ傘店さんの仕事もされている実力派です。
代表の奥田博伸さんのブログを愛読している方は、いまこの時期に、みやしんさん訪問と同日に奥田さんの工場を訪問することの歴史的意義(大げさですが)をご理解いただけるのではないでしょうか。。。
*奥田染工場代表 奥田博伸さんのブログ『 okuda print works 』
「みやしんの廃業について思うこと 『いいものを作ることと儲かることはそもそも違う』について」
奥田さんのものづくりに賭ける真摯な姿勢が伝わって、ガツンと来ます。ぜひお読み下さい。
そして奥田染工場のあとは、みやしん㈱さん。
宮本英治社長のもと、日本の先進的なテキスタイルメーカーなら知らぬ者はいない、クリエイティブなものづくりを追求してきた、あの「みやしん」さんです。
みやしんさんは、つい先週、繊研新聞紙上で廃業が衝撃的に報じられ、大きな話題にもなりました。
今回の訪問は、8月27日の「ヤマナシ ハタオリ トラベル 夏の産地見学バスツアー」に参加していただいた「COOVA(コーバ)」の瀬谷志保さんから、「来ませんか?」と声をかけていただいたのがキッカケです。瀬谷さんはみやしんで宮本社長から織物づくりを学び、COOVAブランドとして今秋、独立することが決まっています。
「みやしん廃業」の噂の流れるこの時期、本当にお邪魔してもよいのだろうか、という心配もありましたが「ぜひ」という瀬谷さんのご好意に甘え、八王子産地訪問が実現しました。
ではまずは奥田染工場さんから。
有名なデザイナーの名前が記された版がそれこそ山のよう。まさに宝の山です。
刷毛やスキージなど、使い込まれた道具の数々。 さまざまな大きさ、種類があります。 |
力強いメッセージ。右に書いてあるのは、有名な東コレブランドのように読めますが、、、まさか署名でしょうか。 |
シルクスクリーンの説明をしてくれる奥田さん。コレクション間際でデザイナーさんたちの仕事が多く、忙しい時期でしたが、丁寧に教えていただきました。
過去の作品や試作品を食い入るように見るヤマナシ産地の職人、デザイナーたち。このネクタイ地のサンプルは、白い部分が手描きだということです。ありえないほどの手間がかかった生地です。
この模様は生地ではなく、捺染台に映しこまれた過去の版の柄が地層のように重なったもの。美しいです。
上は4色分解された4版による手刷りでのフルカラーだそうです。CMYKのそれぞれの濃度は、刷るときのスキージの圧力で変わってくるという職人技。伝説のバンドのジャケイラストですね。
錆染めの試作品。防染×錆染めによるデザイン。
本物の捺染の現場です。(発表前の生地のため、ボカシが入っています。)
奥田染工場さんは、手捺染のシルクスクリーンプリントを主体にした工場で、ハイテク電子機器や巨大な自動機械は見当たりません。人の手による職人技を武器にした企業です。
八王子という首都圏の一角で、こうしたスロープロダクトな工場が成り立っているのは、それだけですごいことではないでしょうか。
奥田染工場さんを成り立たせているのは、日本を代表するようなクリエイティブな活動をするデザイナーたちの信頼といえます。奥田さんはデザイナーの求めるものを理解し、デザイナーは奥田さんの技術を信じて仕事を依頼する。そこには「良いものを作りたい」という思いが結んだ絆があります。
奥田染工場さんは、手捺染のシルクスクリーンプリントを主体にした工場で、ハイテク電子機器や巨大な自動機械は見当たりません。人の手による職人技を武器にした企業です。
八王子という首都圏の一角で、こうしたスロープロダクトな工場が成り立っているのは、それだけですごいことではないでしょうか。
奥田染工場さんを成り立たせているのは、日本を代表するようなクリエイティブな活動をするデザイナーたちの信頼といえます。奥田さんはデザイナーの求めるものを理解し、デザイナーは奥田さんの技術を信じて仕事を依頼する。そこには「良いものを作りたい」という思いが結んだ絆があります。
「デザイナーには直接来てもらって、工場を見せてから注文をとるようにしています。そうすればより良いものができるし、B品が出てもあまり文句を言われない(笑)」
「絶対に今は安い仕事はしないと決めています。いったん安くすると値崩れしてしまう。あと偉そうな人の仕事はしない(笑)」
冗談めかしてそう話す奥田さん。とてもシンプルな言葉ですが、しかしそこにはしっかりした哲学がこめられているように思います。
生産現場を理解した相手と仕事をするメリットは、言い換えればいかに生産現場を理解していない相手との仕事が世の中に多くあってそれがロスを生んでいるかを。
そして安い仕事をしないというのは、小ロットで高い工賃の仕事、つまり安いけれど機械を回せば回すだけ儲かる仕事の反対、手間ヒマを掛けた高付加価値なモノ作りを表しています(単価が高くて機械がたくさん回る仕事が企業にとってベストなのはもちろんですが)。
偉そうな人と仕事をしないのは、対等な関係が作れなければ良い仕事はできない、という考えの表れではないでしょうか。
シケンジョで開催している産地見学バスツアーが目指すのは、多くの人に生産現場を理解してもらい、高付加価値商品を目指すデザイナーやブランドと産地が出会って、対等な関係づくりでより良いもの作りをしてもらいたい、という所にあります。これを奥田さんの言葉からも伺うことができたのは、大きな収穫でした。奥田さんはとても楽しく明るい人柄で、いつまでもお話しを聞いていたいくらいでした。そして、もの作りの質にこだわり、強い信念のもとで素晴らしい仕事をする方が、こんなに近くにいることをうれしく、また誇りに思います。
ヤマナシからはすぐお隣の八王子産地ですが、まだまだ知らない世界が広がっていそうです。
次回はいよいよ、みやしん㈱の訪問レポートをお届けします。
(五十嵐 写真:高須賀)