2012年3月30日金曜日

ファイルNo.13 「大正五年 染織物標本 第五類」

シケンジョに眠るビンテージテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョ書庫より」です。

大正5年に集められた浴衣地の染物見本帳です。
さわやかなブルーの使い方がなんとも日本人らしいです。
今の若者がこんなにお洒落な浴衣を着ていたら、すごく格好いいだろうなー、なんて思いました。

柳の柄

枝豆柄

点描で表現された波の柄

これは何でしょうか‥
パセリ!?

サツマイモ柄!?


(高須賀)




2012年3月23日金曜日

男のための織物、阿吽蜻蛉

 今日は郡内織物産地でうまれたブランド「男のための織物、阿吽蜻蛉のご紹介をしようと思います。阿吽蜻蛉は 財団法人 山梨県郡内地域地場産業振興センターが声かけをし、郡内織物産地の機屋さん数社とデザイナーの米山喜美人さんによって作られた、新しい男の身だしなみを提案するブランドです。



ブランドコンセプト(阿吽蜻蛉HPより)
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蜻蛉(とんぼ)は勝ち虫と呼ばれ、前にしか進まず決して退かない事から、日本では古来より「不退転」のシンボルとして、特に武士が好んで使用した紋様であるとされています。時代は現代に移り、男の「戦場」は「仕事場」へと変化しました。この「男のための織物・阿吽蜻蛉」は、二匹の蜻蛉に阿吽の思想を込め、そんな「戦場」へ向かう男のためのアイテムとして、そして「守護神」として現代社会に生きる男の"粋"を、富士北麓をはじめとする山梨県郡内地域の地場産業である郡内織物に表現しました。











ブランドコンセプトの中にも書いてあるように蜻蛉は前にしか進まないことから、古来戦国時代の「不退転」のシンボルとして、特に武士が好んで使用した紋様でした。特に山梨県ではおなじみ、甲斐の虎 武田信玄の家臣の一人、板垣信方(武田二十四将)の兜には蜻蛉が付いていることでも有名です。戦国時代、兜に堂々とつけられた金属の蜻蛉のモチーフは敵を威圧したことでしょう。

阿吽蜻蛉の一つ一つの商品にも蜻蛉のモチーフがあしらわれており、現代社会で働く(戦う)男を強くバックアップしてくれます。また全体は洗練されたブラックでまとめられており、いかななるビジネスシーンでも使えるようなデザインとなっています。

 デザインもさることながら阿吽蜻蛉のブランドを支えているのが、メンバーである郡内織物会社の4社(舟久保織物、有限会社前田源商店、有限会社田辺織物、株式会社山崎織物)!
郡内の繊維産業の歴史は古く、1000年前の平安時代の文献にも出てくるほどです。江戸時代には南蛮貿易の発達と共に郡内の絹織物は多く生産され、高度な技術力を持つ絹織物は「甲斐絹」と呼ばれ全国で名をはせました。また、高度経済成長期にさらなる発展を遂げ、今では高い技術を持つ織物産地として世界のブランドを支えています。また、この産地の特徴として、一つ一つの機屋さんが専門分野(ネクタイ、ストール、裏地、傘地などなど)に特化した生産をしているため、産地の中で多くのアイテムが作れることもこの産地の強みとなっています。
この阿吽蜻蛉というブランドもアイテム別の生地づくりに特化した機屋さんが集まり作られたブランドです。それぞれ個性的な機屋さんが集まり出来たのが阿吽蜻蛉というブランドなのです。
それでは、個性豊かな阿吽蜻蛉の機屋さんメンバーを一社一社紹介していこうと思います。  

                                                                                                                                                                                


阿吽蜻蛉の代表を務める舟久保織物の舟久保勝さん。舟久保社長はFUJIYAMA TEXTILE PROJECTや上海の遠征展示会グループなどのプロジェクトでも代表を務めており、機屋さんの中でもキーマンとして動いている方です。舟久保織物の一番の特徴はなんといってもほぐし織りの傘!ほぐし織りとは、同じタテ糸を織機で2回織らなければいけないという、大変手間のかかる織物です。この技法で織られた生地は、柄の周りが独特のかすれ方になり、柄に奥行き感が生まれることで魅力的な生地に仕上がります。もちろん阿吽蜻蛉の商品に入っている傘はここ舟久保織物で織られたほぐし織りの傘です。熟練職人ならではのレアなほぐし織りの傘は、スペシャルな男のためのビジネスアイテムとして強い存在感を放っています。

また、舟久保社長は阿吽蜻蛉は産地にとっても良い流れだと語ってくれました。今までの生産システム(OEM生産)だけだと、発注元からの仕事が無くなってしまえば産地がダメになってしまうという危機感が背景にあるなかで、阿吽蜻蛉の様なブランドをつくり、産地側から発信することによって、今までとは違う新しい流れを作ることができる。そしてその流れが産地全体を後世に残す動きになっていくだろうと話してくれました。









前田源商店は知る人ぞ知るオーガニックコットン織物を得意とする機屋さんです。
創業は大正10年に初代の前田源太郎さんにより、傘生地の買いつぎ業(問屋業)としてスタートしました。会社のロゴマークが傘の形をしているのはそのような経緯を経てるからです。
そののち前田市郎さん(現社長)が後を継ぐと婦人服地をはじめ、その中で、よりよいものを作りたいという思いから、当時日本では糸すら出回っていなかったオーガニックコットンに目を向け、独自のルートでオーガニックコットン糸の開発に取りかかりました。まさに日本におけるオーガニックコットンのパイオニア的存在なのが、前田源商店です。
今でこそ当たり前に売られているオーガニックコットン製品ですが、この当時オーガニックの考え方すら浸透していなかったので、どうしても値段が高くなってしまうオーガニックコットンの価値観を説明するのはとても大変だったそうです。
しかし、今ではオーガニックコットンに対する妥協のない前田源商店のモノづくりの姿勢に、多くのファンが付いています。
阿吽蜻蛉では長年培われてきた綿織物を織る技術を使い、ハンカチを作っています。



オーガニックコットンのモノづくり(ブログ)
http://tmptommy.blog16.fc2.com/







有限会社田辺織物は座布団地を作り続けて40年、座布団地づくりのプロフェッショナルの機屋さんです。
創業は昭和21年。先代社長が買い入れた木製の力織機二台で田辺織物はスタートしました。最初は裏地を織っていたのですが、だんだんと夜具地座布団地の生産もするようになり、その中でゴブラン織り風の座布団がヒットしたことから、座布団の生産に特化した機屋さんになりました。田辺織物は郡内織物産で座布団地づくりを専門でやり始めた機屋さんのパイオニアといっていい存在なのです。

現在は、高い技術力を必要とする金襴緞子を使った、仏間用座布団(通称:テラザブ)などを生産しています。阿吽蜻蛉ではふくさの生産を担当しており、阿吽蜻蛉のブランディングを通して機屋だからこそできるサービスと品質の向上を目指していきたいと、気合十分の田辺社長でした。








創業は古く、大正5年に山崎絹店として絹織物(服裏地、傘地)の仲買業ととしてスタートしました。昭和41年に手がけたフォーマル用の白いネクタイの大ヒットをきっかけに、ネクタイ生地生産に特化。郡内織物産地ではネクタイ生地の生産のパイオニアです。
今では、膨大な織り組織を駆使して作るネクタイ生地のノウハウを使い、服地や変わった組織織りを使ったストールなども作っています。近年では展示会に積極的に参加することで、自社製品のアピールし、その中で多くのテキスタイルコンテストでの賞を受賞している凄腕の機屋さんなのです。
阿吽蜻蛉ではネクタイと扇子の生産を手掛けています。




2000ジャパンテキスタイルコンテスト準グランプリ
2003ジャパンテキスタイルコンテスト入賞
2004 J.C.テキスタイルコンテストメンズアパレル賞
2006 J.C.テキスタイルコンテストレディスアパレル賞
2007 J.C.テキスタイルコンテストニュートラディション賞
ジャパンテキスタイルコンテスト入賞多数








このように、様々な強みを持った機屋さんが「男のための織物、阿吽蜻蛉」の名のもとに集まり、メイドインジャパンのクオリティーを消費者に届けるために、日々丹精込めて織物を織っています。是非、阿吽蜻蛉の商品を生活の中に入れてみてはどうでしょうか?


<販売>
財団法人 山梨県郡内地域地場産業振興センター
〒403-0005
山梨県富士吉田市上吉田2277-3
TEL 0555-24-4406
FAX 0555-24-5319


(高須賀)

2012年3月21日水曜日

生産現場からの情報発信の重要性

3月28日(水)13:30より山梨県富士工業技術センター(シケンジョ)にて『生産現場からの情報発信の重要性』をテーマにセミナーと事業報告会を開催します。
セミナー講師にはファションジャーナリストの清水早苗氏をお招きして産地側からの情報発信についてのお話をしていただきます。清水氏はパリ・東京コレクション、デザイナー等の取材を通して、様々なデザイン誌や新聞などに寄稿されています。その為、広い目線で日本の産地のことを見ている方なので、これから日本はもとより世界に広く事業を拡大していきたい機屋さんは必聴のセミナーです。

また、郡内織物産地からは一年を通して客員研究員の鈴木淳氏の指導のもと行ってきた、機屋さんのブランディングの成果発表を各機屋さんから発表してもらいます。この一年、郡内織物産地は様々な人が訪れ、そして機屋さんも活発に動いていたので、是非こちらの発表会にもご参加ください。


セミナー講師:清水早苗

ファッションジャーナリスト・クリエイティブディレクター
金沢美術工芸大学大学院、武蔵野美術大学  文化ファッショ ン大学院大学 非常勤講師

スタイリストを経て、ファッション雑誌の構成、カタログ制作のディレクターとして活躍。その一方で、パリ・東京コレクション、デザイナー等の取材を通して、衣服デザインに関する記事を、デザイン誌、新聞に多数寄稿。代表的な仕事として、「新・日曜美術館ー三宅一生展Making Things(NHK)の監修(2000)。川久保玲に焦点をあてた「NHKスペシャル」では企画からインタビュー、制作まで携わる(2002)。「アンリミティッド;コム ギャルソン」(平凡社)編者。「プリーツ プリーズ イッセイミヤケ10周年記念」冊子(エル・ジャポン)のディレクション・編集(2002)など。最近では、日本の繊維・ファッションの創造性を発信する情報誌や展示会、セミナー等のディレクションに従事。2010年より毎日ファッション大賞選考委員も務める。




[ コーディネータ:鈴木淳氏 セミナー講師:清水早苗氏 ]
*協力* 山梨県絹人繊織物工業組合/富士吉田商工会議所繊維部会

↓申し込みフォームこちら

http://www.pref.yamanashi.jp/shinchaku/kougyo-fj/2403/entry_1.html


(高須賀) 





2012年3月15日木曜日

ファイルNo.12 「大正五年 染織物標本 第六類」

シケンジョに眠るビンテージテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョ書庫より」です。

大正五年に集められた着尺地の見本帳です。
絣の技術や組織織りを巧みに使った変化に富んだ生地が多く集められています。
中には、今の技術では再現することが難しい、タテ糸の揺らいだ大変珍しい縞生地もあります。

シボのかかったほぐし織り。
動きのある大胆な柄がかっこいいですね!


タテ絣の糸と織り組織を使ったテクニカルな生地。


これは珍しい!!
タテ糸が揺らいでいる生地。染め物じゃありませんよ!織物です!
どうやって織ったのでしょうか‥?謎は深まるばかりです。


地味に入った地模様が気になるタテ絣の生地

縞柄と思いきや竹柄。



(高須賀)




2012年3月14日水曜日

濡れ巻き技術保持者、武藤うめ子さんの機巻き

「濡れ巻き整経」取材、第三弾です。
タテ糸の組み込みを終えると、機巻き作業に取りかかります。
機巻きとはタテ糸を仕上がりの生地幅にし、男巻き(おまき)に巻き取っていく作業のことを言います。



自宅の廊下をいっぱいに使いタテ糸を伸ばすことで、濡れていた糸を乾かしながら男巻きに巻いていきます。この時、糸が乾きすぎていると静電気が起こり、糸の扱いが非常に難しくなり、タテ糸をいためてしまう原因になってしまします。
適度の湿り気が濡れ巻き整経には重要なポイントになっています。


西日を浴びたタテ糸。




<今までの濡れ巻き関係の記事>
濡れ巻き整経技術保持者、武藤うめ子さんの組み込み作業

(高須賀)