この松竹梅がスゴイ!と題して、とっておきの2点をご紹介しましょう。
[1] E013 絵甲斐絹 『松竹梅』
西暦 1914 年[ 大正 3 年] 北都留郡上野原 製作者: 佐藤林之助
http://www.pref.yamanashi.jp/kaiki/kaiki_museum/kaiki-sample/e/e013.htm
松皮菱、竹の輪、梅花、の3種が描かれた絵甲斐絹です。
これまで見たものと同じように、絵甲斐絹では
具象的なところと、抽象的な描きかたが
不思議なハーモニーで入り混じっていますが、
今回も「なんだこれ?」と思ってしまうような図案です。
では、この不思議な図案を読み取ってみましょう。
黒々とした巨大な松皮菱を背景に、梅が咲いている様子は、
おそらく梅の花が咲いた山の風景。
そして、その背後にある竹の輪は、
ズバリ、山の背後から昇る朝日!
竹の輪=太陽 松皮菱=山 梅花=山の梅の木
つまり松竹梅の意匠を使いながら、
風景画を同時に描いているわけです。
こういうダブルミーニング、いかにも洒落た、江戸っぽいセンスですね。
ほかの甲斐絹でもよく見られる、常套手段です。
上半分を風景画だとすると、下はいったい何なんでしょうか??
それでは、画面を180度回転してみましょう。
竹の輪=満月 松皮菱=夜の山 梅花=夜の梅の木
すると、上の写真にあるように
こんどは松竹梅をつかって描かれている風景は、
まさしく夜の山の風景です!
梅もモノトーンになっていて、
松皮菱も、輪郭だけがうっすら見えています。
そして竹の輪は、こんどは山からのぼる満月に!
この作品は、松竹梅の意匠をつかって朝と夜の風景を一度に描く
という豊かな発想も素晴らしいですが、
上下どちらの向きでも使うこともあり得る裏地ならではの意匠、
という意味でも特筆すべきものではないでしょうか?
この松竹梅はスゴイ!
[2] 甲斐絹ミュージアム E088 絵甲斐絹 『松竹梅』
http://www.pref.yamanashi.jp/kaiki/kaiki_museum/kaiki-sample/e/e123.htm
この2枚目も、モチーフは松竹梅です。
梅花は、分かりますね。
松は、梅の後ろに敷き詰められている松葉に気が付けばわかります。
では、
竹はどこにあるでしょうか??
…この竹には、
僕も長いあいだ気づかずにいました。
もう見つけられましたか?
答えはここです!
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90度回転すると、見えてきました!
なんと、竹の節だけ(~)を絵甲斐絹の技法で描き、
竹の本体は縞柄で描いていたのです! ( ̄0 ̄;)..オオ!!
絵甲斐絹の技を知り尽くした意匠ですね。
この竹、細かくみると非常に芸が細かいです。
節の部分の輪郭は、なんと少しだけ膨らんだリアルな形になっています。
恐るべし、甲斐絹…。
この松竹梅もスゴイ。
「この松竹梅がスゴイ」シリーズ、
これを大賞に選びたいと思います!!
(そういうシリーズではなかったのですが、年末なのでなんとなく…)
では次回の甲斐絹も、お楽しみに!
(五十嵐)