濡れ巻きとは、郡内産地の独特な整経手法です。
整経とは機(はた)を織る準備段階として、タテ糸の必要な本数・長さ・張力などをそろえる作業のことをいい、今ではすべて機械化されているところを、濡れ巻きでは昔ながらの方法で、ほとんど手作業により行われます。
濡れ巻きを使って織られたサテン生地は、光沢や質感が違い、昔から「鏡の様なサテン」と言われ、愛されてきました。
昭和30年代までは、郡内産地ではほとんどが濡れ巻きで機を織っていましたが、整経機の普及、技術者の高齢化や安いものを求める市場など、さまざまな要因によって濡れ巻きはゆっくりと衰退して行き、濡れ巻き整経の要である「機巻き」工程の職人は、郡内産地の中でも、5人ほどしかいなくなってしまいました。今や幻の技術と言われるのがこのゆえんです。
シケンジョでは、この郡内産地が生んだ、濡れ巻きの技術を後世に残すため、一年前から調査を始めました。
濡れ巻きの調査で大変なところは情報がほとんどないということです!
ましてや、インターネットで得られる情報は皆無なため、情報収集は濡れ巻き関係者からの聞き取り調査から始まりました。人伝いに人を訪ね、地道な調査をした結果、郡内産地の中で約30人の濡れ巻き関係者の方を探し出すことが出来ました。
今回は濡れ巻き整経したおまきを使い、ネクタイを織っている方がいるという情報を聞ききつけ、大明見にある宮下さんの織り工場を訪ねました。
今まで見た黒のネクタイとは全く違う、黒の奥行き感がありました。
そして、濡れ巻き独特の光沢感もさることながら、織り方もネクタイ用の生地として工夫しており、絹の独特の重厚感があるのに、締めてみた時の締めやすいのは、さすがでした!
これぞ匠の技!!
こちらは、機場。
古い織機が並ぶ木造の工場の壁は飴色に変色し、味があるという言葉では片づけられないような、時代を感じる空気に包まれていました。
長い年月、動き続けているシャットル織機は摩擦で木製の部品がツルツルになっており、まるで宝石の様!
このような、小さいながらも魅力的な機屋さんがまだまだ沢山ありますので、随時紹介していきます。(高須賀)
ツイート