2011年9月29日木曜日

濡れ巻きを使ったネクタイ

山梨県だけに伝わる、幻の技法、濡れ巻き(整経)の調査に行ってきました!
濡れ巻きとは、郡内産地の独特な整経手法です。
整経とは機(はた)を織る準備段階として、タテ糸の必要な本数・長さ・張力などをそろえる作業のことをいい、今ではすべて機械化されているところを、濡れ巻きでは昔ながらの方法で、ほとんど手作業により行われます。
濡れ巻きを使って織られたサテン生地は、光沢や質感が違い、昔から「鏡の様なサテン」と言われ、愛されてきました。

昭和30年代までは、郡内産地ではほとんどが濡れ巻きで機を織っていましたが、整経機の普及、技術者の高齢化や安いものを求める市場など、さまざまな要因によって濡れ巻きはゆっくりと衰退して行き、濡れ巻き整経の要である「機巻き」工程の職人は、郡内産地の中でも、5人ほどしかいなくなってしまいました。今や幻の技術と言われるのがこのゆえんです。

シケンジョでは、この郡内産地が生んだ、濡れ巻きの技術を後世に残すため、一年前から調査を始めました。
濡れ巻きの調査で大変なところは情報がほとんどないということです!
ましてや、インターネットで得られる情報は皆無なため、情報収集は濡れ巻き関係者からの聞き取り調査から始まりました。人伝いに人を訪ね、地道な調査をした結果、郡内産地の中で約30人の濡れ巻き関係者の方を探し出すことが出来ました。

今回は濡れ巻き整経したおまきを使い、ネクタイを織っている方がいるという情報を聞ききつけ、大明見にある宮下さんの織り工場を訪ねました。

これは宮下さんが織ったネクタイ。
今まで見た黒のネクタイとは全く違う、黒の奥行き感がありました。
そして、濡れ巻き独特の光沢感もさることながら、織り方もネクタイ用の生地として工夫しており、絹の独特の重厚感があるのに、締めてみた時の締めやすいのは、さすがでした!
これぞ匠の技!!

こちらは、機場。
古い織機が並ぶ木造の工場の壁は飴色に変色し、味があるという言葉では片づけられないような、時代を感じる空気に包まれていました。 
  
長い年月、動き続けているシャットル織機は摩擦で木製の部品がツルツルになっており、まるで宝石の様!





このような、小さいながらも魅力的な機屋さんがまだまだ沢山ありますので、随時紹介していきます。(高須賀)






2011年9月27日火曜日

ファイルNo.3 「明治四十一年 織物標本帖 No.4」

シケンジョに眠るビンテージテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョ書庫より」です。

 明治四十一年に集められた、新潟の絣織りの生地の見本帳です。
絣織りとは、織った生地に柄を染めるのではなく、糸の段階で色を染め分け、織ることで柄を出していく織り方です。
絣織りは柄が少しずれることで、柄の周りがかすれるのが特徴です。幾何学模様のようだけど、どこか人間味あふれる表情が魅力的な生地です。

この織物見本帳の生地が織られた場所は、織物では昔から有名な越後で織られており、柄の繊細さや趣は、流石越後!と言ったところでしょうか。(高須賀)




















2011年9月16日金曜日

PAKI PAKI

シケンジョで開発しているテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョテキスタイル」

今回は、タテヨコに引っ張ることで、パキパキと音が鳴り、張りと質感が変わるテキスタイルの紹介です。
組織織りと収縮する糸を組み合わせることで、不思議な動きのあるテキスタイルをデザインしました。下の二つの写真は同じ生地なのですが、タテヨコに引っ張ることで、ここまで表情が変わるんです!!引っ張るときもパキパキと小気味いい音と動きが病みつきになってしまうような、愉快な生地です。
興味ある方は、是非シケンジョにいらしてください。  (高須賀)







下の3枚の写真は収縮する糸を使わずに織ったものです。


「PAKI PAKI」 designed by takasuka




2011年9月15日木曜日

ビ セ イ ブ ツ


シケンジョで開発しているテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョテキスタイル」


微生物をモチーフにデザインした生地です。
ヨコ糸にスパンデックス(ゴム)を織り込むことで、微生物の柄を立体的に表現しています。 


「biseibutsu」 designed by takasuka

 

余談ですが、シケンジョは繊維の種類や織物の構造を調べる為の顕微鏡が沢山あります。
繊維を調べる為でだけでなく、自分の気になったモノを調べることもできます。
人間の目では見えないミクロの世界は、ネタの宝庫です!
テキスタイルづくりに行き詰った時は、シケンジョにきて、顕微鏡を覗いて、アイデアを探すのもいいかもしれませんね☆ (高須賀)










2011年9月14日水曜日

FUJIYAMA TEXTILE PROJECT 2010

FUJIYAMA TEXTILE PROJECT 第三弾目は二年目を迎えた、プロジェクトの展示発表会の様子を見てみましょう。

2010年の11月にRin(南青山)にて行われた展示発表会の様子です。

2009年に引き続き、同じタッグを組んでいるペアーは、さらに磨きをかけた作品を作り上げており、このプロジェクトもどんどん成長してきていることが見てとれました。

プロジェクトの副団長を務める、田辺織物の田辺社長は、
「プロジェクトをやる意味は、目先の利益を得ることではなく、人を育てる為にやっている。プロジェクトに関わった学生が、社会に出た後、もう一度富士吉田という織物産地を見てくれればいい。」と語っていました。

学生のやる気と、広く産地の未来を考える機屋さん、また全面的に協力してくれる鈴木マサル氏など、様々なエネルギーが相まみえた、素敵なプロジェクトなんだと、あらためて感じました。

このプロジェクトを通して、機屋さんも学生さんもモノづくりをしっかりと見つめなおすきっかけになっていることが、一番の成果であったと思います。モノを作る難しさと楽しさ両方にぶち当たり、その中で答えを出すこと。あらためてモノづくりと真剣に向き合うことで、見えるもの。プロジェクトメンバーの一人一人が沢山のことを得ることが出来たのではないでしょうか。


今年のプロジェクトも着々と進んでおります。さて、どの様なモノが生まれるのか!
楽しみです。


宮下織物株式会社×渡辺絵美

ネイティブアメリカンの図柄「ナホバ」とカットジャガードを合わせたテキスタイルの提案


有限会社田辺織物×高須賀活良

座布団生地を織るときに使われる金属糸から発想した電子基盤柄のパソコンケースの提案


株式会社オヤマダ×白木茂

障子をコンセプトに二重織り用いてデザインした透け感のあるテキスタイルの提案

有限会社渡小織物×塚田真史

陶器の質感をモチーフにデザインしたネクタイの提案


 舟久保織物×井野若菜

「雨と風景」をテーマにデザインしたスートールと傘の提案


有限会社光織物×井上綾

仏具に使用されることの多い金襴織りを用いデザインしたバッグの提案 


有限会社オサカベ×伊藤文

片面段ボールの構造をモチーフにデザインした服地の提案


富士ファブリック株式会社×戸塚真菜

板締めという伝統的な染め方をポリエステルの傘生地に用いデザインした傘の提案
FUJIYAMA TEXTILE PROJECT 2009
FUJIYAMA TEXTILE PROJECT 2011



2011年9月13日火曜日

FUJIYAMA TEXTILE PROJECT 2009

昨日に引き続き、FUJIYAMA TEXTILE PROJECTについてお伝えします。

今回はプロジェクトが始まった一年目に行われた、展示発表会の様子を振り返ってみます。

上の写真が、プロジェクトが始まって一年目の展示発表会の様子です。
会場は南青山にある地場産業のセレクトショップ「Rin]で行われました。

一年目ということもあり、手さぐり状態で進んできたプロジェクトではありましたが、開けてびっくり!!織り構造だけで作る無縫製の服の提案や、「板締め」という伝統技術と、地場産業を掛け合わすことで作る傘の提案など、今までに見たことのないような商品にあふれ、なかなか見ごたえのある展示会になりました。

どれも見劣りしないものばかりで、会場に来てくれた方々も興味深そうに展示物を見ていました。
一年目としては好調なスタートをきったFUJIYAMA TEXTILE PROJECTです。

宮下織物株式会社 × 渡辺絵美


ヨコ糸を浮かせて織り、最後にカットすることで出来るフサを生かしたテキスタイルの提案




富士ファブリック株式会社 × 戸塚真菜


古代三大染織の一つである板締めの技法を使った傘の提案




光織物有限会社 × 斧山真弓


四重織り技法による無縫製の衣服の提案




舟久保織物 × 植木靖奈


広げたときに一枚の絵になる、ほぐし織りの傘の提案




株式会社オヤマダ × 小林裕理子


熱帯魚のような色鮮やかで魅力的なテキスタイルの提案




有限会社渡小織物 × 塚田真史


田園にある苗や、芝生のようなネクタイの提案




有限会社オサカベ × 斉藤綾子


楽しく賑やかな色のテキスタイルの提案




有限会社田辺織物 × 高須賀活良


織り組織でプリーツ状の表面効果を作りだした生地の提案


次回は二年目の展示発表会を振り返ってみます

(高須賀)





2011年9月12日月曜日

今年もコラボレーション企画がスタートしました!!

三年目を迎えた、産学官コラボプロジェクト「FUJIYAMA TEXTILE PROJECT」がスタートしました! 
「FUJIYAMA TEXTILE PROJECT」とは、東京造形大学准教授でファブリックブランドOTTAIPNUのテキスタイルデザイナーでもある、鈴木マサル氏監修のもと「既成概念にとらわれない、新たな繊維製品の開発」をテーマに行っているプロジェクトです。

郡内織物産地はOEM(受注生産)の産地であるため、オリジナルのブランドや商品がもともと少なく、一般への知名度もあまりありませんでした。
その状況を打開しようと、富士吉田の織物メーカー8社が集まり自社製品の企画をし始めたのがこのプロジェクトの始まりです。

そこに鈴木マサル氏の協力を得て、東京造形大学でテキスタイルを学ぶ学生とのコラボレーションが決まりました。シケンジョもプロジェクトを円滑に回す為にメンバーに加わり、産学官のスーパーコラボレーション企画としてスタートしたのでした。

3年目となる今年、東京造形大学の学生のあいだではプロジェクトの人気もあがり、たくさんの参加希望者がありました。鈴木マサル氏による厳しい審査のすえ、学生8人が選抜され、企業とのマッチングが決定し、今年の「FUJIYAMA TEXTILE PROJECT」がスタートしました。

毎年、出来た商品は都内の展示会で発表されています。今年は11月におこなわれる、デザインの祭典「TOKYO DESIGNERS WEEK 2011」での発表が予定されており、学生たちも気合十分の様子です。


今年から初めてプロジェクトに参加する学生もいるので、まずは郡内織物産地を知ってもらおうと工場見学を行いました。









テキスタイルを学んでいる学生さんたちですが、工業的な織物生産に使われる本格的な織機を生で見るのは初めて、という方も多いようでした。繊細でかつ力強い織機の動き、そして織機を手足のように操る職人さんたちの姿は、彼女たちの目に強い印象を残したにちがいありません。

今回、学生さんたちによって沢山の種が産地にまかれていくのを感じました。産地が一丸となり、この種を一つ一つ大事に育てていければ、魅力的な花が咲き乱れる、素敵な織物産地になるのではないでしょうか。


そんなモノづくりの息吹を感じる工場見学会でした。


次回は2009年、一年目に行われたRinでの成果品発表の様子をご紹介します。   (高須賀)








2011年9月5日月曜日

ファイルNo.2 「大正時代 試験場 試作見本帳」

シケンジョ書庫に眠る織物サンプル集の紹介コーナーです。


今回は「大正時代 試験場 試作見本帳」の紹介です。
この見本帳は大正時代にシケンジョで試織した、ストライプ生地やジャガード織りなどが集められていますが、その中でも特に注目なのがほぐし織りのサンプル!!


ほぐし織りとは、同じタテ糸を織機で2回織らなければいけないという、大変手間のかかる織物です。
まずはじめに粗く仮り織りします。次に仮り織りしたタテ糸を織機から外し、捺染(プリント)で柄を染めます。そして染め上がったタテ糸をふたたび織機にかけ、仮り織りのヨコ糸を外しながら、また織りなおすという作業工程により作られる生地です。
この技法で織られた生地は、柄の周りが独特のかすれ方になり、柄に奥行き感が生まれることで魅力的な生地に仕上がります。

今でもこの産地で織られている技法なので、織られる工程などは後ほどブログで紹介していこうと思います。



 
(高須賀)