ヤマナシ織物産地には、県外から若者が3名*という、
(産地としては)驚異的な人数のニューカマーがやってきました。
もちろんハタヤさんの新入社員として働くため、ヤマナシに移住を決意してやって来たのです!
*もしかしたら他にも県外からのニューカマーがおられるかも知れません。とりあえずわかっている限りの数字です。
その他にも、以前こちらでご紹介した、ヤマナシに移住して自分たちのブランドを立ち上げた
デザイナー井野若菜さんと水野智章さんによる「炭酸デザイン室」も含めれば、総勢5名!
これは、小さな地方の繊維産地にすると、大変なことです。
なかでも東京造形大学OBの比率は著しく高く、
5名のうち4名(80%)は、東京造形大学テキスタイルデザイン専攻の卒業生。
また2名は、東京造形大学とヤマナシ産地のコラボ事業
「FUJIYAMA TEXTILE PROJECT」の経験者です。
振り返ってみると、5年前に始まった「FUJIYAMA TEXTILE PROJECT」以来、
シケンジョで2年間働いた高須賀活良君、
4年前から宮下織物㈱で働く渡辺絵美さんを含めると
東京造形大学はこの4年間で6名もの卒業生をヤマナシ産地に送りこんでいることになります。
いままさに、観測史上最大級のテキスタイルデザイナーの大移動が起こっていると言えるでしょう。
2014年は、数十年後のヤマナシ産地の年表には大移動の年として記されるに違いありません。
そんななか、シケンジョでは、それらニューカマー達をサポートするため
彼らを中心とした若手のための勉強会を「技術者研修」として
4月から週2回ペースで開催しています。
そして平成26年5月13日(火)には、
4月から新しく客員研究員としてヤマナシ産地に来てくれた
トレンドユニオンの日本支社にあたるエデルコートイースト㈱代表、家安 香さんを講師として、
『求められる産地のためのトレンドセミナー』
と題したスペシャルなセミナーを開催しました!
シケンジョ客員研究員、家安 香さん。 |
トレンドユニオンは、トレンド情報を発信する世界的な企業のひとつで、
その日本での拠点を任されているのが家安さん。
家安さんの語る「トレンド」は、
近い将来の「流行」を予測・解説することというより、
市場の変化がなぜ生まれてくるのか、
暮らしにはいま何が起こっているのかを、
しっかりと分析して理解するという主体的な行為を重視しています。
市場の分析結果を使うのではなく、
いま目の前にある世界という「結果」を分析することに
力を注がなければいけないことを、
セミナーでは様々な事例をもとに解説してくれました。
たとえば「車」をデザインするというとき、
考えなくてはならないのは車の形の提案ではなく、
「車との生活」の提案であること。
まず自分の暮らしをとりまく身の回りの世界にたいして感覚を研ぎ澄ませよう、
変化の兆しを感じよう、というメッセージをいろいろな形でいただきました。
「自分たちの感じることを信じて、未来を作ること」
「新しい仕事を作ることは、新しい関わり方を提案すること」
「自分にしか読めないアプローチをすること」
いくつもの言葉が受講生たちの心に響いている様子…
セミナーには、都内から勉強に来たお二人(寺尾さん、茶畑さん)の姿もありました。
このお二人は、昨年モノマチに出展していた羽田忠織物さんに出会ったことがきっかけで
ヤマナシ産地の魅力にはまり、茶畑さんは昨年6月のバスツアーにも参加、
その後、ヤマナシ産地の生地を扱うビジネスを立ち上げようと産地に通ってくれている、
いわば筋金入りのヤマナシハタオリトラベラーです。
そして学ぶ若手の横顔。
メモを取る秋本研究員。
家安さんのレクチャーは、この数年分のトレンドユニオンによるプレゼンテーションを
45分ほどに凝縮したもので、相当密度が高い内容でした。
5月23日には、文化学園にて2015-16AWのトレンドセミナーが開催されます。
ご興味のある方はぜひ。
そして家安さんのスライドをまじえた第一部レクチャーのあと、
第2部はフリートークのワークショップとなりました。
この席にいる13名(家安さん以外)のうち、地元出身は5人しかいません。
こんなに大勢の若者が山梨を目指してくるのは、山梨で「トレンド」を考えるうえで
かなり重要なことです。
Q.なぜ山梨で仕事をしようと決意したのか?
その問いには、こんな答えがありました。
自然
富士山がすばらしい
自然のなかで仕事ができる
空気がいい
人
いい人が多い
家族経営で雰囲気が暖かい
ハタヤさんたちの独自性が強い
田舎なのに閉鎖的じゃなくて開けている
モノづくり
いろんな工場があって、なんでも作れそう
作りたいものがすぐ作れる
地理
東京に近い
自然だけでなく、人の魅力を感じて来た方が多いようです。
また、大きい会社とちがって、思ったことがすぐ形にできるモノづくり環境も
ヤマナシ産地の大きなポイントのようですね。
発信力 (情報が少ない、どこで売っているか分からない、新製品が出ても分からない…)
地元で作っているものを買える場所がない
魅力はあるのに、
そこにアクセスできる人、情報を受け取れる人がまだまだ限られているのは確かなようです。
(シケンジョテキも、もっと発信力をつけなくてはいけません)
この日のセミナー参加者のように、山梨にたどり着いて就職し、
ものづくりの人生を歩みはじめる人がどんどん増えてくるようになれば
ヤマナシ産地のポテンシャルはもっと上がっていくことでしょう。
そして、この日のセミナーに参加したニューカマー達の
これからの活躍にぜひぜひご期待ください!
(五十嵐)