甲斐絹の紹介、第2弾です。
前回のトラに続くのは、やはり獅子!唐獅子牡丹の登場です。大迫力の獅子と牡丹!
百獣の王である獅子と、百花の王である牡丹、最強のコラボレーションによる図案です。
「牡丹と唐獅子」は、前回の「竹に虎」同様、古くから好まれてきたモチーフですね。
唐獅子は牡丹の下でだけ、安らかに休むことができる、ということでペアになっているという話もあります。牡丹と獅子の意味や由来については、いろいろ興味深い情報がネット上に流れていますので調べてみると面白いと思います。
しかし、こんな風にうつむき加減になっている唐獅子の様子を見ると、もしかすると美しい牡丹にメロメロなのかも?
さて甲斐絹の話にもどりましょう。
甲斐絹は、14中(なか)2本という細い絹糸で織られます。
その薄さを実感してもらうために、下にスマホを置いてみました↓
ばっちり透けて見えますね。
今度は、印刷した紙を置いてみます。
スケスケです!
手織りをしたことがある方なら、このように薄く高密度な平織りの生地を作るのが、
どれほど困難なことか、おわかりになるのではないでしょうか?
今度は、唐獅子の頭のグルグルに注目です。
細い線までキレイに再現されています。これは、ほぐし織りでは不可能な精密さです。
しかし一方、尻尾の先を見ると、ほぐし織りに近いズレが見えます。
これはどういうことでしょうか?
前回お話したように、絵甲斐絹は織機の上で経糸だけに型染めをします。
場所は筬の手前です。
絵を付けたとき、手前(織り前)側の部分は、すぐに緯糸が織りこまれるので、ズレがほとんど生まれません。
しかし、奥の方(ビーム側)は、緯糸が織りこまれるまで時間がかかるので、わずかにズレが生まれます。
その違いが、上の2枚の写真というわけです。つまりこの唐獅子牡丹は、織り前から見ると、唐獅子の頭を下にして、逆さに型染めされたことが推測できます。
図にしてみると、こんな風になります。
図案の中で、精密に表現したい部分を手前にして織ると、そこのズレが少なくなるという、絵甲斐絹ならではの工夫なんですね。
今回は、唐獅子牡丹の絵甲斐絹をご紹介しました。
この絵甲斐絹は、甲斐絹ミュージアムで「E148」という名前で紹介されていますので
こちらでもぜひご覧ください。
□甲斐絹ミュージアム
http://www.pref.yamanashi.jp/kaiki/
(五十嵐)