2012年4月10日火曜日

事業報告会&特別セミナー開催しました

3月28日、平成23年度に行った取り組みの報告会と、清水早苗さんのセミナー「生産現場からの情報発信の重要性」を開催しました。

天井から吊り下げられたバナーは、この1年間のうごきを写真でまとめたものです。
客員研究員として招いた台東デザイナーズビレッジ村長こと鈴木淳さんと一緒に開催した、3回の工場見学バスツアー、産地企業の皆さんとの個別相談、合同勉強会などなど。






まず鈴木客員研究員からのイントロダクションのあと、シケンジョからの事業報告。そして、「ブランド力向上サポートプロジェクト」に参加してくれた産地の機屋さんたちから1年間の活動報告をしてもらいました。

 

まずは㈱槙田商店の槙田洋一さん。
1866年創業、産地を代表する洋傘地メーカーです。

傘地のほかに婦人服地にも力を入れています。生地からオリジナル傘を作れるという強み、多彩な婦人服地を一流ブランドに提供してきた経験値を生かして自社のブランド力をどう生かしていくか?そんなテーマでブランド力向上の作戦会議を重ねてきました。

その結果うまれたのが下の写真の傘。ギフトショーへの初出展にむけて開発した、マルチテキスタイルパラソル。
色、柄、素材感や風合いが違う複数の生地を一本の傘に縫製したものです。
槙田商店の強みを端的に表現しつつ、ブースでの絶大なインパクトを実現しました。
そのブースの様子は、槙田商店公式ブログにも掲載されています。→こちら




そして次には光織物㈲の加々美琢也さん。
掛け軸に使われる生地や雛人形に使われる金襴など、和のテイストを得意とする生地メーカーです。

テキスタイルデザイナー
鈴木マサルさんの指導を受けつつ、東京造形大学テキスタイルデザイン専攻領域の井上綾さんとのコラボ事業にも取り組んでいます。

コラボ事業3年目の今年、ドキッとする色使いで和柄の魅力を現代の若者向けにリデザインしたブランド「kichijitsu」を立ち上げ、「おまもりぽっけ」 「めでたいバッグ」を発売。

なかでも「おまもりぽっけ」は東京キッチュ茨城県近代美術館ミュージアムショップ「みえる」などで取り扱いがスタートしています。

さらに、もともとビジネスの土台になっている掛け軸にも注目し、都内のデザイナーさんとのマッチングを経て、現在新しい掛け軸を提案する商品開発に取り組んでいる状況をレポートしてくれました。




そして㈲テンジンの小林新司さん。
リネンを昔ながらのシャットル織機をつかって織り上げ、キッチンクロスなどのALDIN、セミオーダーカーテンのPROCESSUS、ネクタイ・ストールのLOPEN、バッグなど雑貨のFlax&Grains、というブランド展開をして人気を博しています。

プレゼンでは、10年ほど前に初めてリネンに取り組んだときの試行錯誤や、知名度のなさで苦心した販路開拓時代のお話が印象的でした。

この1年は、工場のオープンファクトリー化の準備やアイテム数の管理など、付加価値をより高めるための仕組みづくりに取り組んできました。


最後は郡内地場産業振興センターが幹事となって、産地企業グループで立ち上げたブランド「阿吽蜻蛉」。
地場産業センターの勝俣裕介さんからのプレゼンでした。

「勝ち虫」として知られる蜻蛉をモチーフにしたこのブランドについては、先月こちらで紹介していますので、ご覧下さい。

一つのコンセプトのもと、ネクタイ、ストール、名刺入れ、ふくさ、ハンカチなどのアイテムを一つの産地内で組み立てられるのは、様々なアイテムを作る多彩な機屋さんが集まっている山梨産地ならではの取り組みです。
これまでのブランドの歴史、現状分析や課題を織り交ぜながら、今後の展望についてのプレゼンをしてもらいました。



この日、都合がつかず欠席でしたが、舟久保織物の舟久保勝さんは、ほぐし織りの傘地を作る日本有数の織物職人さん。この1年は、いろいろな活動のまとめ役を果たしながら、ほぐし織り傘のブランド「harefune」を、光織物さん同様、学生コラボ事業のなかで井野若菜さんとともに立ち上げました。
ブランド力向上サポート事業では、ほぐし織りならではの魅力とは何か、どのように伝えていくかということや、ほぐし織りの工程のひとつ「絵付け」工程の担い手をどのように確保していくか、という難しい課題に取り組んできました。


後半は、いよいよファッションエディターの清水早苗さんによるセミナー「生産現場からの情報発信の重要性」。



清水さんはファッションジャーナリスト・クリエイティブディレクターとして、パリコレをはじめ東京コレクションや、デザイナーへの長年の取材経験を持つ一方、日本のいろいろな産地にも足を運び、モノづくりとクリエーションのかけ橋となる活動をされています。

その代表的なものが、中小企業基盤整備機構で発行された冊子、SHIN-KA、SHIN-ZUIです。

日本のテキスタイル、日本のデザイナー、日本の生産地の素晴らしさを再認識できる、貴重な資料です。

清水さんがクリエイティブディレクターとなって発行されたこれらの冊子は、PDFでダウンロードできるよう公開されています。

ぜひご覧になってください。素晴らしい写真、記事が満載です。

SHIN-KA2007

(繊維ファッション産業におけるクリエイションの情報発信資料)
http://www.smrj.go.jp/keiei/seni/info/pub/022695.html


SHIN-ZUI

(平成19年度中小繊維製造事業者自立事業事例集)
http://www.smrj.go.jp/keiei/seni/info/pub/034668.html


SHIN-KA2008

繊維産地からファッション産業へと繋がるクリエイションの情報発信資料
http://www.smrj.go.jp/keiei/seni/info/pub/034664.html


講演では、さまざまな話題を例に挙げながら、モノづくりに必要なさまざまなメッセージをいただきました。
特に、「良く観察すること」、「オリジナリティを追求すること」。
これは2月23日のトレンドユニオン家安香さんのセミナーでも強く印象に残った言葉でした。
本当に大事なことなんでしょう。

その他、オリジナリティのあるものづくりの態度に加え、ビジネスの出会いの場でも、産地、工場からの情報発信が重要だと語っていただきました。






今回のセミナーでは、若手を中心に産地の新しいエネルギーが高まりつつあることを実感しました。

平成24年度に向けて、山梨県織物産地は引き続き要注目です!



(文 五十嵐/写真 高須賀)