2009年から続く、東京造形大テキスタイルデザイン専攻学生とヤマナシ産地のハタヤさんによる
コラボ事業、『富士山テキスタイルプロジェクト』。
この発会式の前日(2013 8/2)に学生産地見学ツアーを行い、同行してきました!
今回、その様子について、ブログ「シケンジョテキ」史上最高枚数の写真でお伝えいたします。
①マルヒデ整経(アイテイシー株式会社)
スタートは、経糸をつくる整経の工場から。
ちょうどこの時に合わせて、シケンジョのビーム(タテ糸の巻物、11880本:テキスタイルのセイケイ業参照)を巻く実演を実施していただきました。
まずはこちらの動画をご覧ください。
ドラムのようなものが回転していますが、「太鼓をまわす」と表現するようです。
蛍光染色された3色の糸が動き出すと歓声があがりました。
約600本のボビン、3色ヤスラ(ヤスラとは先染めの色違いのタテ糸を規則正しく並べたもの)のため、1本でも間違うことなく錘を並べる必要があります。
奥のボビンから糸を手前側へ。
バンドと呼ばれるひとまとまりで巻いていきます。
円周5mだと100回転して500mになるわけです。
次のバンドを巻くときはピッタシに巻いたバンドのスグ隣に位置合わせしています。
プロフェッショナルの桑原さん。
学生も整経工程を間近で見るということは初めてかと思われます。
細い糸がいっせいに巻き取られていく様子は圧巻。
巻きとり始めは段差に気をつけながら、少しずつ回転させ、間に紙(ひとつおいて上の写真中央に立てかかっているボール紙のような紙)を挟んでいきます。
今回の動画でご紹介したシケンジョのビームでは、100枚近く紙を挟むそうです。
まさに職人仕事、という印象。
織りがうまくいくためには、整経の職人さんの技が不可欠なんですね。
ビームの到着が楽しみです。
②高山織物整理株式会社
整理加工は織りあげた生地の加工工程です。
例えば、生地をしわなくぴしっとさせる、ヒートセットや、
撥水性をもたせるための加工など、
ほとんどの生地はこの整理加工という工程を経て反物になります。
整理加工次第で、織りあがった生地にさまざまな風合いをもたせることができます。
イメージとしては巨大なアイロンのような働きをする機械です。
この暑い夏の季節、整理加工屋さんの中は蒸気や機械の熱でさらに暑くなっています。
暑い工場で働く職人さんたちに脱帽です。
見学中にも、ハタヤさんが次々に生地を担いで玄関にいらしてました。
見学ツアーを引率してくださった、㈱オヤマダの小山田さん。
まるで自分の会社のように説明してくださっています!
このようなハタヤさんと整理加工屋さんの密な連携プレーも、学生さんに見ていただきたい大切なポイントです。
今回のツアーで引率してくれた小山田さん(後で登場される(有)光織物の加々美さんも)、
これまでのコラボでも、学生とともに目を見張る斬新な商品を生み出してきています。
各見学先でも、多くのアドバイスをいただけました。
触ってこそ実感する、加工による変化。
この見学のために、高山さんが半分だけ撥水加工を施した生地を用意してくださいました!
見た目には分かりませんが、水をピシャっとかけてみると…
加工した部分は見事に水をはじいています!お~っという学生さんの声。
整理加工のマジック。撥水性。
最近では、普通の洋服でも、汚れにくくするために軽い撥水性が求められるそうです。
はじくミズをちょんちょんと。
小山田さん(左)と同じくこの日、1日引率してくださった(有)光織物の加々美さん(右)。
コラボ(デザイナー井上綾さん×(有)光織物)から多くの商品(大人気のGOSHUINノートやおまもりぽっけ等)が生まれています。
今日が吉田うどん初体験の学生さんも。
これからコラボプロジェクトがすすむにつれて、吉田のうどんプロになることでしょう…
④土屋繊維株式会社(撚糸)
撚糸とは糸を撚ることです。
手ぬぐい等を捻じるとめちゃくちゃ固くて強度が高まる感じを、とても細い糸へ施す工程です。
土屋社長さんが、撚糸を初めてみる学生さんにも分かりやすいように、資料を用意して解説してくださいました。
原糸を撚ることで、強度をもたせたり、織ったときにスリップしてしまうのを防ぐことができます。
規格外の太さの糸に対して、撚ることにより任意の太さに調整することも多いそうです。
三峰染織工業代表の加々美さんにより、2本の糸を合わせる諸撚り(もろより)について説明してもらっているところ。
学生さんたちから、糸について様々な質問が飛び交います。
明るく、とても気さくな土屋社長が丁寧に対応してくれました。
⑤妙高富士染工場
シケンジョテキでもご紹介させていただきました「富士・・染め・・工場!」
2013 8/27の産地見学バスツアーでも魅(!)せてもらうことになっています。
こんにちわー、と。
丁度、染色加工の作業中でした。
主に、キュプラという素材の染色加工が多いとのこと。
萱沼社長さん。
丁寧な、撚り+染色+整経+織り+整理加工により、キュプラ糸が高品質な袖裏地等になります。
特別に稼働中の機械の蓋を開けていただきました。
ぶわ~っとでる蒸気の迫力に学生さんたちは釘付けです。
ロッド(糸のかかっている棒)には小さな穴が無数空いていて、内側からシャワーのように染色液が出ています。
かせと呼ばれる、わっか状の糸の束を丁寧に動かしながら染料を定着させ、リンスして斑なく綺麗に染め上がります。
色見本を参照中。
糸が繊細なため、簡単そうにみえて、実は竿で干す作業ひとつとっても、実際非常に難しいです。
キュプラは、糸の扱いに特に気を遣うとのこと。
撚糸、整経、整理加工の各企業さんを見たあとは、いよいよコラボ当事者のハタヤさんへ。
⑥渡小織物(ネクタイ製造)
渡小織物の太郎さんといえば、
「コラボウェルカムなネクタイソルジャー!」
過去の学生さんとのコラボネクタイを、学生さんの人柄も交えて解説する太郎さん。
学生も先輩の作品に興味津々。
モチーフが
芝生のネクタイに、
陶芸のネクタイ。
表面が(煎餅上の砂糖が溶けて固まったように)凸凹になっています。
織物だからこその風合いで、それを可能にする高い製織技術が隠されています。
なんとすでに、今回のコラボの試織が。できたてほやほやの生地を見ながらうちあわせ。
富士急ハイランドにオープンした「リサとガスパール タウン」で販売されている
リサガスちゃんのぬいぐるみも渡小さんのネクタイをしめているそうです。かわいい…。
富士山ネクタイ。
工場内の様子。
紙管。
ヨコ糸を巻く芯になります。
伊勢丹新宿店における「ヤマナシハタオリトラベル」では展示においても活躍しました。
⑦槙田商店(傘製造)
つづいて、プロジェクトに初参加となる西桂町の槙田商店さん。
常務の洋一さんから、会社の説明。
同じく、コラボ初参加となるご近所のストールマイスター、武藤(株)さんも一緒に説明。
西桂町の機屋(ハタヤ)さんについては「ヤマナシハタオリトラベル2012 冬 西桂町編(鈴木淳 客員研究員(台東デザイナーズビレッジ村長)のブログより)」参照。
産地見学バスツアーでも人気の傘地をカットする職人さん。
カットも解説も切れ味鮮やかです。
傘地のキズは透かしてよーく調べるそうです。
三角にカットした生地に関する大きさは、この他にも様々な規格のものがあります。
JUPA(ジュパ)マーク。
1866-kawazu-。
内側にも生地がはられた、蛙張りの傘。
内側の柄には、服地の技術が活かされています。
ほぼぴったしに柄の異なるひまわりが位置合わせされています(驚)。
1枚ずつ全く異なる組成や柄の生地(もちろんテンションがバラバラ)を匠の技で1本の傘にする、「moZaiQue(モザイク)」。
大きな高速ジャカード織機にくぎづけの学生さんたち。学校では手織りで制作しているメンバーもいて、スピードの違いに驚きの様子。
槙田さんが収集されている、ヨーロッパの古い生地が貼られた貴重な資料も見せていただきました。
さすがテキスタイルの学生さん。貴重な資料に、夢中になっています。
東京造形大学の大橋先生も、「どうやって織ってたんだろう…」とため息をつくような生地も。
織物を作るためのモンセン図も書かれていますが、楽譜のようです。
昔の人が生地づくりにかけた情熱と手間は計りしれません。しばし、勉強タイムになりました。
以上、発会式前日の富士山テキスタイルプロジェクト2013、学生産地見学ツアーの様子でした。
糸から整理加工まで、織りだけではない、産地に集まる技術を体感できた一日。
この日の経験も、これからのコラボプロジェクトに活かされていくことと思います。
プロジェクトでどんな新しいテキスタイルや製品が生まれるか、
シケンジョ一同も楽しみに応援していきます!
(上垣&秋本)