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2012年9月24日月曜日

八王子産地へ行ってきました

 9月21日(金)、ヤマナシ産地(富士吉田&西桂)の機屋さんと一緒に、八王子織物産地の㈱奥田染工場みやしん㈱を見学させてもらいました。

 奥田染工場さんは、シルクスクリーンプリントを中心とする染色工場で、ミントデザインズなど日本を代表するクリエイティブなブランドから信頼されている小さな職人工場。ヤマナシとも関係の深い鈴木マサルさんのブランドUNPIATTOイイダ傘店さんの仕事もされている実力派です。

 代表の奥田博伸さんのブログを愛読している方は、いまこの時期に、みやしんさん訪問と同日に奥田さんの工場を訪問することの歴史的意義(大げさですが)をご理解いただけるのではないでしょうか。。。

 *奥田染工場代表 奥田博伸さんのブログ『 okuda print works
  「みやしんの廃業について思うこと 『いいものを作ることと儲かることはそもそも違う』について」

 奥田さんのものづくりに賭ける真摯な姿勢が伝わって、ガツンと来ます。ぜひお読み下さい。

 そして奥田染工場のあとは、みやしん㈱さん。

 宮本英治社長のもと、日本の先進的なテキスタイルメーカーなら知らぬ者はいない、クリエイティブなものづくりを追求してきた、あの「みやしん」さんです。
 みやしんさんは、つい先週、繊研新聞紙上で廃業が衝撃的に報じられ、大きな話題にもなりました。

 今回の訪問は、8月27日の「ヤマナシ ハタオリ トラベル 夏の産地見学バスツアー」に参加していただいた「COOVA(コーバ)」の瀬谷志保さんから、「来ませんか?」と声をかけていただいたのがキッカケです。瀬谷さんはみやしんで宮本社長から織物づくりを学び、COOVAブランドとして今秋、独立することが決まっています。

 「みやしん廃業」の噂の流れるこの時期、本当にお邪魔してもよいのだろうか、という心配もありましたが「ぜひ」という瀬谷さんのご好意に甘え、八王子産地訪問が実現しました。

 ではまずは奥田染工場さんから。


 出迎えてくれた奥田さんについていくと、無数のシルクスクリーンのアーカイブ。
 有名なデザイナーの名前が記された版がそれこそ山のよう。まさに宝の山です。

使い込まれた捺染台(なっせんだい)。生きる歴史資産です。日本のテキスタイルの歴史を彩ってきた生地の数々がここで生まれてきたと思うと、感慨もひとしおです。


刷毛やスキージなど、使い込まれた道具の数々。
さまざまな大きさ、種類があります。


こういう雰囲気、いいですね。伝説のレコーディングスタジオの壁に描かれたミュージシャンという感じでしょうか。新しいモノが生まれている現場の空気が感じられます。(デザイナーさんのプライバシーを配慮してボカシを加えてあります)
力強いメッセージ。右に書いてあるのは、有名な東コレブランドのように読めますが、、、まさか署名でしょうか。


シルクスクリーンの説明をしてくれる奥田さん。コレクション間際でデザイナーさんたちの仕事が多く、忙しい時期でしたが、丁寧に教えていただきました。


過去の作品や試作品を食い入るように見るヤマナシ産地の職人、デザイナーたち。このネクタイ地のサンプルは、白い部分が手描きだということです。ありえないほどの手間がかかった生地です。

この模様は生地ではなく、捺染台に映しこまれた過去の版の柄が地層のように重なったもの。美しいです。



上は4色分解された4版による手刷りでのフルカラーだそうです。CMYKのそれぞれの濃度は、刷るときのスキージの圧力で変わってくるという職人技。伝説のバンドのジャケイラストですね。

錆染めの試作品。防染×錆染めによるデザイン。


紙幣の透かしのように柄が浮かび上がっている錆染め。すごい表現が何気なく置いてあります。


本物の捺染の現場です。(発表前の生地のため、ボカシが入っています。)

奥田染工場さんは、手捺染のシルクスクリーンプリントを主体にした工場で、ハイテク電子機器や巨大な自動機械は見当たりません。人の手による職人技を武器にした企業です。
八王子という首都圏の一角で、こうしたスロープロダクトな工場が成り立っているのは、それだけですごいことではないでしょうか。
奥田染工場さんを成り立たせているのは、日本を代表するようなクリエイティブな活動をするデザイナーたちの信頼といえます。奥田さんはデザイナーの求めるものを理解し、デザイナーは奥田さんの技術を信じて仕事を依頼する。そこには「良いものを作りたい」という思いが結んだ絆があります。


「デザイナーには直接来てもらって、工場を見せてから注文をとるようにしています。そうすればより良いものができるし、B品が出てもあまり文句を言われない(笑)」

「絶対に今は安い仕事はしないと決めています。いったん安くすると値崩れしてしまう。あと偉そうな人の仕事はしない(笑)」


冗談めかしてそう話す奥田さん。とてもシンプルな言葉ですが、しかしそこにはしっかりした哲学がこめられているように思います。

生産現場を理解した相手と仕事をするメリットは、言い換えればいかに生産現場を理解していない相手との仕事が世の中に多くあってそれがロスを生んでいるかを。
そして安い仕事をしないというのは、小ロットで高い工賃の仕事、つまり安いけれど機械を回せば回すだけ儲かる仕事の反対、手間ヒマを掛けた高付加価値なモノ作りを表しています(単価が高くて機械がたくさん回る仕事が企業にとってベストなのはもちろんですが)。
偉そうな人と仕事をしないのは、対等な関係が作れなければ良い仕事はできない、という考えの表れではないでしょうか。

シケンジョで開催している産地見学バスツアーが目指すのは、多くの人に生産現場を理解してもらい、高付加価値商品を目指すデザイナーやブランドと産地が出会って、対等な関係づくりでより良いもの作りをしてもらいたい、という所にあります。これを奥田さんの言葉からも伺うことができたのは、大きな収穫でした。
奥田さんはとても楽しく明るい人柄で、いつまでもお話しを聞いていたいくらいでした。そして、もの作りの質にこだわり、強い信念のもとで素晴らしい仕事をする方が、こんなに近くにいることをうれしく、また誇りに思います。

ヤマナシからはすぐお隣の八王子産地ですが、まだまだ知らない世界が広がっていそうです。

次回はいよいよ、みやしん㈱の訪問レポートをお届けします。



(五十嵐 写真:高須賀)



2012年9月19日水曜日

ヤマナシ ハタオリ トラベル 夏の産地見学バスツアー

8月27日、今回で4回目となるヤマナシ織物産地バスツアーが行われました!!
その名も「ヤマナシ ハタオリ トラベル 夏の産地見学バスツアー」!!!

シケンジョプレゼンツの今回のバスツアー。繊維産業に携わるクリエーターやライターの方々をチャーターしたバスで産地に来てもらい、工場見学をしたあと、富士吉田の一大イベント「ススキ祭り」まで見てもらおうという、いつになくスペシャルな内容となっています。

エキュート立川で好評開催中のイベント「ヤマナシ ハタオリ トラベル」と同名ですが、こちらのトラベルはプロ対象のBtoB、出会いと交流の場を目指してのプロジェクトです。

それでは、2012年の夏に繰り広げられた熱い産地見学ツアーの模様をご紹介しようと思います。

まず、最初に向かったのが傘生地から傘の組み立てまで一貫生産している槙田商店へ。
なんとその歴史は古く140年も前から洋傘の生地を織っている、日本の洋傘生地界のパイオニア的存在です。
やはり傘づくりも生地の生産から始まります。職人じきじきに織機の違いや、織れる生地の種類などの話をしていただきました。
こちらは織機の裏側。1万本以上の経糸が寸分の狂いもなく動いています。
織物とは(織機=機械)が織っていくのですが、糸は細く繊細なため、織機のスイッチ一つでかんたんに織れるわけではありません。細心の注意をはらって織機に向かう職人がいるからこそ、きれいな生地が織りあがります。
こちらはジャガード織機の吊り紐、通糸(つうじ)。この糸一本一本が動いてタテ糸を操作していきます。
織り工場を見たあとは、傘の組み立ての工程の見学です。
何枚も重ねた傘生地を鋭く研いだ専用の包丁で三角形にカットしていきます。
傘の部品。
すべて手作業で組み立てていきます。
こちらの傘は、最近槙田商店が出展した展示会で反響を呼んだ、10枚の違った生地を使った日傘。透かすととてもきれいです。
次に向かったのがリネンの織物を得意とするテンジン。
工場に入る前に、リネンのことや織機のことを教えてもらいました。
有限会社テンジンでは古い織機を使うことでしか作ることの出来ない、風合いのよい織物を織っています。


工場の見学を終え、テンジンのショルームで一休み。
リネンの織物は洗えば洗うほど風合いが増し、黄なりだった生地は白く変化していきます。
リネンの肌ざわりに思わず笑顔。

テンジンを後にし、次に見学しに来たのは、糸や生地の染色と後加工のエキスパート、株式会社富士セイセン。
先染め織物では糸を染めてから織るため、糸の色管理も重要です。染色工場棟では染料の調合などデータを管理する部門や、カセで糸を染める染色機を見学。そして加工を主に行う棟では様々な後加工をする巨大な装置を見学しました。織りあがった生地を様々な機械に通すことでビックリするほど生地の質が変わっていきます。さまざまなブランド品を手掛ける高度な技術とその設備は写真NG、お見せできないのが残念です。
ひと通り工場を見終わり、つぎに向かうはシケンジョです!


ここではネクタイ生地を専門に織る渡小織物と、ウェディング生地を得意とする宮下織物の二社がバスツアー参加者を出迎えます。

写真の4人は渡小織物とバスツアーに参加していたファッションブランドのネバアランド。

両者は昨年の山梨産地ツアーがきっかけでコラボレーションが始まりました。その時にできた女性用ネクタイの「リボニッシュタイ」は各メディアにも取り上げられ、今でも大好評。「ネバアランド」ブランドの顔といってもいい存在に成長しています。ネバアランドの3人が胸につけているのがそのリボニッシュタイです。
宮下織物のテキスタイルデザイナー、宮下珠樹さんのプレゼンテーション。次々に魅力的なテキスタイルが紹介され、みなさん真剣にきいています。
シケンジョからは明治時代から集めた「甲斐絹」のお話。織物を知っている人ほどこの技術力の高さに驚いている様子でした。
そして、ひととおり見学が終わり、バスツアーメンバーと産地の職人の懇親会。
工場を見てから職人さんと話すことで、ぐっとクリエーターと職人との距離が近くなっているように見えました。

ここで終了と思いきや、まだまだバスツアーはつづきます。
最後に向かうは、 日本三大奇祭といわれる富士吉田の火祭り2日目の「すすき祭り」 !!!
漆塗りの真っ赤な御神輿が富士吉田中を練り歩き、最後は富士浅間神社の境内の中を7周まわり奉納されます。
境内の中を回る御神輿にススキを持った人々が付いていきます。
御神輿の担ぎ手のみなさん。




お祭りの勢いに圧倒されながら、バスツアー終了。今回のバスツアーはススキ祭りの力も借り、壮大なフィナーレとなりました。なんだかいいことありそうです。

今年度のバスツアーはあと2回企画予定です。もっとこの織物産地のことや地域のことを皆様に知っていただく為に、楽しく愉快なバスツアーを企画し、もっともっと産地のものづくりが元気になるようになればいいと願っています。そして産地と外部のデザイナーなど、ものづくりに携わる方々同士のネットワークを強く、太く育てていくお手伝いをしていきたいと思います。
ご興味のある方、次回はぜひご参加を!


(高須賀)


2012年9月14日金曜日

ヤマナシのハタオリ職人がエキュート立川に進出!!

 山梨のハタオリ職人が集まって期間限定でひらく店「ヤマナシ ハタオリ トラベル」が立川エキュート3Fイベントスペース「TORICO」にて、9月10日から10月14日まで開かれています!!

コンセプトは「富士山のふもと、スロープロダクツに出会う旅」。

シケンジョでは同名でテキスタイル・ファッション業界向けの産地バスツアーを開催したばかりですが、こんどは一般消費者のみなさんに産地を知って楽しんでもらう企画として、このイベントを全面バックアップしています。


売り場には、郡内織物産地で織られたとびっきりでスペシャルな織物を使って作ったストールやネクタイ、キッチン周りの布製品など、様々なものが紹介されています。

また 「ヤマナシ ハタオリ トラベル」の企画名にもあるように、売り場にはトラベル(旅)的な要素もふくまれていて、山梨の織物産地と富士北麓の雰囲気を感じれるようなマップも無料配布されています。

買い物だけではなく、ついついヤマナシに行きたくなってしまう、素敵な展示会です。


ヤマナシ ハタオリ トラベル(会場POPより)
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どーん、とそびえる富士山のふもと、今も変わらずハタオリの音が響いている富士吉田、西桂など山梨県の富士北麓エリア。どちらかというと縁の下の力持ち的な産地で、これまで一般にはあまり知られてきませんでした。
そんなヤマナシ産地が、近ごろデザイナー、クリエイターたちから注目を浴びています。
その鍵をにぎるのは、ヤマナシで育っている元気なハタオリ職人たち。いま伝統の技と若い感性が出会い、それぞれ独自のブランドのもとで富士山麓の美しい土地ならではの透明感あふれる布たちが、次々とうまれています。
シルクやリネンなど、天然繊維のファッショナブルなテキスタイル。数々の有名ブランドを支えてきたメイドイン山梨の安心感。布の魅力を肌で実感し、こころから味わえる極上のやさしい布たちを
古くて新しい、いま一番熱い産地、ヤマナシからお届けします。
ヤマナシ ハタオリ トラベルは、富士山のふもとでたっぷり時間をかけて育まれたスロープロダクツの数々、そして美しい自然とスローライフの息づく町と出会う旅です。

会場の真ん中には「ヤマナシ ハタオリ トラベル」のロゴ!!
会場はこんな感じ。

機屋さんの自社ブランドやデザイナーとのコラボレーションで生まれた商品が並びます。空間には織物工場で使用されていた道具も置かれていて、普通の売り場とは違うものづくりの現場の空気感も味わえるようになっています。

なんと会場には、染めた糸を織機にかけるために繰り返しを行うための機械「繰り返し機」が!!しかも、今はあまり見ることのなくなった木製の機械です。なかなか渋いです!

繰り返し機にはきれいなシルクの糸がかかっています。この細い糸を巧みに操り、ネクタイの生地を織りあげていきます。

会期は一ヵ月以上もあり売り場の商品も入れ替えがあるそうです。何回行っても楽しめそうなイベントです。皆さまも是非足をお運びください!
[ 出展ブランド(会社名) ]
 ALDIN (㈲テンジン
 G-style (G-style
 harefune (舟久保織物)
 Kai's Farm (㈱前田源商店
 kichijitsu (光織物㈲×井上綾)
 NEGENTROPY (㈲田辺織物)
 opiyo 大飛世 (武藤㈱)
 渡小織物
 富士桜工房 (山崎織物㈱)
 'Olu'Olu (㈲羽田忠織物)


[ LINK ]

 ecute立川HP http://www.ecute.jp/tachikawa/event/e597.html

 ヤマナシ ハタオリ トラベルFacebook http://www.facebook.com/YamanashiHataoriToraberu


(高須賀)