2012年11月6日火曜日

ポリフェノールたっぷり五倍子ハンティング


いまシケンジョではバナジウム×ポリフェノール⇒耐光性の濃黒色染色技術を研究しています。

これまで、市販の五倍子(ごばいし)で染色していましたが
地域性のあるモノ作り
(富士山麓の材料及びバナジウムを使うことで製品にストーリー性をつける)
を意識して
富士山麓の「天然五倍子」をハンティングしてきました。
場所は富士吉田市内にある「ふじさん牧場」。
ここに天然五倍子があるという目撃情報(携帯画像)を入手し、さっそく牧場オーナーに
特別に許可をもらって採取に行ってきました。





ブラックシープ(ウメェ~、ウメェ~~と鳴いていました

五倍子はヌルデというウルシ科の木にできる虫こぶ(ストレスで植物が異常発達したこぶ)で
タンニン(ポリフェノール)を60%近く含んでいます。五倍子は中国が一大産地でChinese Gallと言われています。また、同様の虫こぶで中近東のブナ等の若芽に蜂が産卵・傷つけると生じるこぶは没食子(ぼっしょくし:Gallnuts)と呼んでいます。
これらはタンニンが豊富なため、「皮なめし」にも用いられています。

シケンジョではこれまで、タンニン(ポリフェノール)の構成成分である没食子酸が、
バナジウム媒染での耐光性の高い濃黒色染色に欠かせない成分であることを明らかにしました。


ヌルデの木は早めに紅葉するため、この時期見つけやすいです。
ちなみに五倍子は抗菌・収斂・止血・解毒作用があるとされている(生薬:しょうやく)でもあります。





採取した「ふじさん牧場産の天然五倍子」


これはアブラムシが花に近い変な場所に住み着いてできたのでしょうか?変わったカタチでした。



じつは五倍子を粉砕した粉はお歯黒に用いられていました。
お歯黒はバナジウムではなく鉄と反応させた被膜で、虫歯予防としての働きがあったとのこと。
また、五倍子から精製されるタンニン酸や没食子酸は鉄と混ぜると黒くなり、Gall inkとして用いられています。
残念ながらこれらの黒い液では繊維を濃黒色にできないため、
微量のバナジウムを使った新しい化学反応を研究しているわけです。


落ちていた雨ざらしのものも拾ってきたので表面にさまざまな変色が見られましたが
染色結果は良好でしたので、次回の(五倍子×バナジウム:天然染料で驚きのスーパーブラック!)
においてご紹介します。


(上垣)