2012年3月13日火曜日

濡れ巻き技術保持者、武藤うめ子さんの組み込み作業

「濡れ巻き整経」の技術保持者の武藤うめ子さんを訪ねました。

経枠(糸を巻き取る作業)、組み込み(糸を交ぜ合わせる作業)、機巻き(男巻にタテ糸を巻き取る作業)の三つの濡れ巻き整経の工程の中の、組み込み作業をご紹介しようと思います。
組み込みとは2~5個に分けて染色された経玉を、手作業で混ぜ合わすことで色ムラや張力のムラを防ぐことを目的として行われる作業です。


こちらは組み込みの前に行われるタガ落としという作業。
染色されてきたタテ糸を絡まないように、ほどいていきます。




手際よくタテ糸がほどかれていきます。


きれいにほどかれたタテ糸。


組み込み作業に入ります。


四分割されていたタテ糸を一本づつ混ぜ合わせていきます。
とにかくものすごいスピードで手が動いているため、見ていても何が行われているのか分からないくらい速いです。


今回は特別に組み込みを教えてもらいました。
これはとにかく、難しい!!両手の10本の指がそれぞれの動きをしないといけないので、脳味噌フル稼働にて、10分そこらでオーバーヒートでした。。
長年培われた濡れ巻き技術に脱帽です。


(高須賀)





2012年3月12日月曜日

濡れ巻き技術保持者、経枠職人の渡辺勝彦さん

山梨県郡内織物産地にしかないタテ糸整径「濡れ巻き整経」の技術保持者の渡辺勝彦さんを訪ねました。

濡れ巻き整経とは、普通機械でタテ糸を整経するところをほぼ手作業で行う郡内織物産地独特のタテ糸整経技術です。今では珍しいスロープロダクトです。
この技術を使って織られた生地は、光沢感や肌触りが普通のモノとは違い、今でも好んでこの技法を使って織られた生地をほしがるデザイナーさんも少なくありません。

しかし、手間と時間がかかる濡れ巻き整経は、繊維産業の機械化にともない衰退の一途をたどり、今ではほとんど濡れ巻き整経が行われることはなくなってしまいました。そのため濡れ巻き整経の技術は伝承されることなく、関係者は郡内織物産地の中でも20名くらいしかいない状況となってしまっています。
シケンジョではこの貴重な技術、濡れ巻き整経を2年前から研究し、データとして記録を取ってきました。

今回はその一環とし、ハイビジョンカメラで映像を撮影してきました。その時の取材の様子の写真を撮ってきたのでご紹介します。


濡れ巻き整経とは大きく分けて、経枠(糸を巻き取る作業)と組み込み(糸を交ぜ合わせる作業)と機巻き(男巻にタテ糸を巻き取る作業)の3つに分けることができます。
ここで行われているのは、経枠という作業になります。



針金で作った自作の道具で、綾をとっていきます。



糸枠と糸

巻き取った糸

カウンター

部屋にぶら下がっていた糸
部屋のいたるところに張ってある詩吟の歌詞


明日は組み込み作業をご紹介しようと思います。

(高須賀)




2012年3月9日金曜日

ファイルNo.11「昭和51年度収集 甲州織収集見本帳 洋傘地 No.1」

シケンジョに眠るビンテージテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョ書庫より」です。

昭和51年に郡内織物産地で織られた洋傘地を集めた織物見本帳です。
郡内織物産地でおなじみの洋傘地!
この時代は今より、より多くの洋傘が生産されていました。

レトロな空気感もさることながら、この見本帳で注目すべくはランダムな縞柄!
これは、我が郡内織物産地にしかない経糸整経技術「
濡れ巻き整経」を使って織られた傘生地ではないかと思われます。この様なランダムな縞組は量産体制の機械整経では作ることができないため、この様な傘はなかなかお目にかかることが無くなってきてしまっているのが今の現状です。
古き良きものが見本帳の中にしかないのが残念です。


シケンジョとしても郡内織物産地にしかない「濡れ巻き整経」を残すため努力していくつもりです。


(高須賀)




2012年3月8日木曜日

郡内直送織物展レポート

以前ブログで紹介した郡内の織物にフォーカスした展示会「郡内直送織物展」の会場の模様を撮影してきたのでご紹介します。
この展示の企画をしたナノリウムは富士山のすそ野の森の中にひっそりとたたずむギャラリーカフェなのですが、この展示会では県内外からのお客さんも多く、
予想以上の反響にオーナーの中植さんも驚いていました。

それでは、郡内産地の作る織物の世界をご覧ください。

こちらは会場の様子。


 郡内直送織物ではおなじみのほぐし織りの傘は、天井から吊り下げられており、まるでランプシェイドの様でした。

織物がつくられる現場を想像できるインスタレーション(空間演出)。
織物だけ売るのではなく、織物の裏側ににあるストーリーをモノと一緒に持って帰ることで、
お客さんの満足度も違うようでした。

こちらも郡内ではおなじみの仏間用座布団(通称:テラザブ)。
座布団の他にも、ペンケースやPCケースなどの商品展開もありました。

絢爛豪華!!

産地から出た端切れを使ったインスタレーション。
影がとてもきれいでした。

普段は捨ててしまう織物のミミも、扱い方次第では立派なオブジェに変わっています。

こちらは電子基板をテキスタイルにしたプロダクト「KIBAN」シリーズ。
金襴緞子の技術を使い柄をデザインしているので、プリントでは出すことのできない立体感と輝きが特徴です。



珍品、紗織りのネクタイ!!
紗織りとはタテ糸をヨコ方向にも動かしながら織る、とても難しい織り方です。
紗織り独特の透け感で涼しげな夏のビジネスシーンにもってこいなネクタイです。

東京造形大学とのコラボレーション企画で生まれたネクタイ。
芝生をイメージしたシリーズです。

今年の東京造形大学とのコラボレーションで生まれたモノもありました。

TREND UNION JAPAN、家安香氏ディレクションの企画
NO TIE, YOU DIE. 」で生まれたネクタイも数多く置いてありました。

上の写真はリネンやシルクを組み合わせた、カワイイネクタイ。
女の子でも使えそうです

綿のネクタイ!?
とっ、思いきや、100%シルクネクタイ!

会場にはひっそりとシケンジョで開発した「銀染め」の糸も置かせてもらいました。

シャットル織機のシャトル。



店では売っていないような素敵な傘が沢山ありました。

hengen
hengenは山梨で生まれた天然の国産絹を使った「甲斐絹」によるブランドです.
上の写真は国産のシルクを使ったストール。
 


写真:右)ジャカード織機に使用する、紋紙
写真:左)シケンジョで研究している、濡れ巻き整経の途中工程の経玉。

100%シルクのオーガンジ―ストール。
青とオリーブグリーンの糸で織られており、先染めならではの美しい色合いが素敵でした。

izumi okuno



日本の一地方の織物産地から発信する小さな展示会ですが、なにか世界に打ち出せるような大きな魅力を感じました。この様な産地発の展示が同時多発的にいろんなところで生まれれば、郡内織物産地がもっともっと魅力的な産地になっていくのではないでしょうか?