2020年2月14日金曜日

織機の企画展「織り機につどう」が開催されています

2020年2月7日から、富士吉田市のFUJIHIMUROにて
「織り機につどう」という企画展が開催されています。

この産地でつくられる織物は、数十年も昔の機械織機によるものが多くあります。
そうした織機は「機屋番匠」と呼ばれる機械工の方による修理やメンテナンスにより支えられています。
そんな番匠さんもこの産地では2人になり、またそれぞれ高齢になっているという今、
織機に注目しこの産業を未来につなげるための展示会として
「織り機につどう」は企画されています。



展示は3つの部屋で構成されています。


1つ目の部屋は、織り機を構成するパーツと実際の織り機に触れられる部屋「織り機の分解展」です。

壁面に織り機のパーツが働きごとに並べ展示され、
中央には長年、機を織ってきた実際のレピア織機をほぼ1台そのままの形で設置展示しています。



ハタヤさん以外は普段見ることのない織機やその部品をじっくり見ることができます。




2つ目に部屋には、職人のインタビューや仕事の風景、そして、さまざまな立場の人の言葉を集めた「織り機につどう人々」の展示があります。
ハタオリに関わる人たちの想いを見ることができます。



ケースに入った織機部品はアート作品のようです。




そして3つ目に部屋は、
「織り機の記憶」と題したインスタレーションが展示されています。

織り機からみた風景をコンセプトに、
走馬灯のような体験を表現したインスタレーションとのことです。


織機と投射映像の組み合わせが印象的な空間をつくっています。




そして織機の展示室では定期的に
織機番匠の渡邊徳重さんによる織機のメンテナンスの実演、
兼、若手のハタヤさんへの織機調整のレクチャーが行われています。


この時は、舟久保晴基さんが番匠さんの教えをメモを取りつつ学んでいました。

産地を未来につなぐための伝承が行われています。


その様子を見させていただきましたが、
番匠さんの説明のもと、織機の各部位の働きや部品が動く仕組みを見ることができました。

動力が各部に伝達され、様々な仕事に変換されている仕組みは関心です。





展示会の様子はサイトやブログで発信されています。

  織り機につどう公式Webサイト: http://weaving.yosowoigarden.com

「織り機」という目線からの企画展、体感されてはいかがでしょうか。


企画展詳細
 タイトル:「織り機につどう」
 開催期間:2020年2月7日(金)〜3月29日(日)
 時間:10:00〜17:00
 入場料:無料
 休館日:火・水・木
 場所:FUJIHIMURO
     山梨県富士吉田市富士見町1-1-5(ふじよしだ定住促進センターの隣)


(鈴木)

2019年12月26日木曜日

ジャカード研修、開催中!(組織の固さと密度について)

シケンジョでは産地の機屋さん、織物関係者を対象に、
希望者を募って研修事業「技術者研修」を行っています。


ただいま実施しているのは、ジャカード織の設計技術を学ぶ研修。
6日目の今日は、
今年最後の研修でした

今日は、ジャカード織では織物組織はどのように選ばれているかについて
いろいろな角度から考えてみる勉強です。

この写真は、組織の固さ=サイズと、緯糸の打ち込みの関係を
シケンジョの織機で実演したところです。




写真の下半分は、平織と繻子織を一緒に織っています。

最も緊密に糸が織り込まれる平織の丸い部分は、
緯糸を織り込むときの密度が高すぎて、織るときに織機が「あおって」しまいます。


筬が緯糸を打込んでも、組織が堅すぎるので織り込みきれず、

盛り上がっているのが見えます。密度は70本/インチです。

これ以上、密度を高めると経糸の張力に問題が出てくるでしょう。


一方、8枚繻子(朱子)の方は、平織よりずっと緩い組織なので、
まだまだ密度に余裕があります。

生地の上半分は、8枚繻子だけで織っています。

緯糸密度を2倍の140本/インチにしても問題なく、緯糸の黄色が繻子織らしく、しっかり濃く見えています。


緯糸の打ち込みと見え方の変化。70本/インチ(↖)と、(↗)140本/インチ


このように、どの組織を使うかは、緯糸密度や緯糸の太さとの
関係を考慮し、適切な「固さ=サイズ」であることも重要となります。


このようなことを踏まえつつ、ジャカード柄をどんな風に織りあげるか、
設計の基礎を勉強しました。



大活躍のデジタルホワイトボード。

プロジェクターとホワイトボードの珍しい競演。
組織のサイズと[固←→柔]の図と、緯糸密度の関係を説明。

組織図の事典をみながら、課題に取り組む研修生。カンニング中ではありません。




ここから下は、今日の研修で使用したデジタルホワイトボードのデータの一部です。


経糸密度と口数から、柄の最大リピート幅を計算。ほぼ算数の授業。


デザイン画のタテ・ヨコサイズをどう糸本数に合わせるか?


色まとめとメートル表。メートル=Maître 説


デザイン画の織り上がりサイズを基にピクセル数を計算。ほぼ算数の授業。

今年のシケンジョテキはこれでおしまいです。

皆さま、良いお年を!


(五十嵐)

2019年11月29日金曜日

「定規織り」でペンケースを織ってみた

2019年夏にシケンジョで誕生した新しい手織り技法、

定規織り」で、ペンダント型のペンケースを作成しました!







ご覧のように、ペンがすっぽりと入る筒形になっています。

このペンケース、定規織りで織ったあと、裁断・縫製はいっさいしていません。

織ることだけで、この「封筒型」の構造が作られています。

一体どんな風に織られているのか、図解と一緒にご紹介しましょう!


織った部分は、その構造から大きく3パートに分かれます。

一番下から見ていきましょう。

一番下は、ふつうの平織で、一枚の帯状になっています。

封筒状のペンケースの、「底」にあたります。




真ん中は、筒状になった二重織、またの名を「風通(ふうつう)」です。

風通組織で織ると、一度に二枚の布が生まれる、不思議な結果が生まれます。

上の図では、青系と赤系の2枚の平織が、風通組織で織ることで

一度に生まれる状態を表しています。


このペンケースの真ん中部分は、風通組織で織られた表と裏、

二枚の布が両端でくっついているので、筒状になっています。

緯糸1本だけを使って織ると、緯糸は表、裏、表、裏、と交互に、

らせん状に織られていくことになります。









ぜんぶ風通組織だけで織っても、緯糸1本だけなら筒状になりますが、

両端の折り返しを綺麗に揃えるために、両端だけ平織になるよう織っています。

(といいつつ、あまり綺麗に織れていませんが…)



一番上は、ペンが入りやすいよう、
ワニの口のように二つに分かれています。

このように完全に分かれるために、表用と裏用、2本の緯糸を使って、


経糸を表用と裏用に半分ずつに分け、それぞれを平織りで織っています。

これは、緯糸2本を交互に使って、

ぜんぶ風通組織で織ったときと、同じ結果になります。


そして、ワニ口の先は、まだ織られていない部分の経糸を、糸の束にしています。

糸がばらけないように、別の糸でぐるぐる巻きにしました。




糸づくりの世界では、これは「カバーリング加工」と呼ばれるものに近いものです。

この図では、Z撚りのあと、S撚りをかけて、2段階のカバーリングをしています。

専門的には「ダブルカバーリング加工」というものに近いです。


(実際には、芯の糸がもっと隠れているのがふつう)



この「経糸」は、じつはもともとシャトル織機で織った元の生地では、

「緯糸」だったものを、90度回転し、経糸として使っています。

シャトルで織った緯糸なので、経糸は耳のところで折り返しています。

(写真の生地では、上の端の紺色の部分が耳)


これを利用して、首にかけるループ状の紐の部分ができあがりました。

以上が、このペンケースの織り方です。


難しいのは、「風通組織の部分の組織を決して間違えてはいけない!」

ということです。

もし間違えていたら、そこだけ表と裏の布がくっついてしまい、


ペンがそこで止まってしまう、という悲劇が訪れます。

この恐怖にたえながら、間違えないよう織り続ける強い気持ちと、


また、途中で間違えていてもよくわからないので、

「間違えていないはずだ!」と
自分を信じる心が必要となります。




下の写真は、このペンケースを織っているところです。



ご覧のように、電車での移動中に織りました。

外の風景は、京都市内から京丹後市へ移動するときの風景です。

シケンジョテキFacebookでもお伝えした、

プレ・テキスタイル産地ネットワーク in 丹後へ向かう車中で織っていたところです。

定規織りは簡単な仕組みですが、すべて手作業なので、

織っていくのは、とても時間が掛かります。

それでも、「あそこでこのへんを織ったなあ」という

旅の思い出が生まれるのは、定規織りならではの風情です。


縞模様のうち、真ん中の明るい白の部分の緯糸は、

京都府
宮津市上世屋地区にある「いとをかし工房」で作られた

手撚り和紙糸を使っています。


京都府与謝野町のデザインスタジオ「PARANOMAD」の


原田美帆さんに上世屋地区に案内いただいたとき、工房でお土産に買った糸です。

買った糸を、旅の帰り道にさっそく織ってみる、という


定規織りならではの旅の思い出にもなりました。



(五十嵐)


2019年11月20日水曜日

誕生! やまなし縄文シルクスカーフ!

シケンジョ(山梨県産業技術センター富士技術支援センター)と山梨大学(茅・豊浦研究室)

共同研究で生まれた特許技術を用いて、 (株)前田源商店による新商品、

「やまなし縄文シルクスカーフ」が誕生しました!




縄文土器に刻まれた文様「渦巻文」を、ジャカード織りで立体的に再現しています。




カラーは3色。経糸・緯糸ともに、富士山の湧水で染められた、



山梨県産100%のシルクです。


サイズは54cm×54cm。

先染めシルクならではの微妙な色合いと光沢感により、

遠目には無地調ながら、角度によって縄文柄が浮かび上がるさりげなさが魅力です。


やまなし縄文シルクスカーフ=山梨×山梨×山梨×山梨×山梨!


「やまなし縄文シルクスカーフ」の誕生の背景には、

これでもか!というくらい、いくつもの山梨のリソースが潜んでいます。

その秘密をご紹介しましょう!






1:やまなしの縄文土器の文様

写真:山梨デザインアーカイブより



「やまなし縄文シルクスカーフ」のデザインのオリジナルは、


山梨県笛吹市桂野遺跡で発掘された、

大型深鉢(渦巻文)土器
[笛吹市教育委員会所蔵/山梨県指定文化財]です。

この土器は現在、山梨県立博物館(かいじあむ)にて展示もされています。

このような渦巻文は縄文時代中期(4500年前頃)に流行したそうですが、

土器の胴部全体にこのように一面の水の流れのように渦巻文がほどこされた土器は

他に例がなく、大変めずらしい土器とされています。

山梨は「縄文王国」とも呼ばれ、縄文文化がもっとも花開いた5000年前、

もっとも栄えていた土地だったそう。


およそ5000年前の山梨生まれのデザインが、現代の技術でよみがえったのが、

「やまなし縄文シルクスカーフ」です。


2:やまなしのデザインアーカイブ


やまなし縄文シルクスカーフのデザインは、

縄文時代の逸品「渦巻文土器」がモチーフとなっていますが、

このデザインモチーフは、2016年にオープンしたサイト、


「YAMANASHI DESIGN ARCHIVE」
に登録された図案を活用しています。


山梨デザインアーカイブは、山梨県に伝わる過去の優れた物品の造形や模様、

自然から得られる色彩、今に伝わる昔話・伝説を、産業上で使用することのできる

デザインソースとしてデジタル化して配信する山梨県のプロジェクト。

甲府市にあるシケンジョ、甲府技術支援センターのデザイン技術部が

主体となって完成させたものです。「やまなし縄文シルクスカーフ」は、

このデータを活用して生まれました。



3:やまなしの絹糸





かつては全国有数の生糸生産量を誇った山梨ですが、

現在は養蚕農家はごくわずかになってしまいました。

「やまなし縄文シルクスカーフ」は、この
現在では非常に希少な、

山梨県内の養蚕農家が育てたお蚕さんから生まれた


山梨県産シルク
100%使用しています。


4:やまなしの伝統織物技術



山梨の郡内エリアは千年以上の歴史を持つ織物産地です。

明治から昭和初期には細い絹糸を巧みに操り、

「甲斐絹」の名で全国に知れ渡りました。

この技術を受け継ぐ織物職人の手で「やまなし縄文シルクスカーフ」は織られています。



5:やまなしの最新研究成果

晴雨兼用傘「こもれび」((株)槙田商店/西桂町)


「やまなし縄文シルクスカーフ」はシケンジョ(山梨県産業技術センター富士技術支援センター)

山梨大学茅・豊浦研究室の共同研究から生まれた特許技術を用いて作られました。

この技術は、上の写真にある
(株)槙田商店による晴雨兼用傘「こもれび」と同様に、

ゆるやかなグラデーションをジャカード織で表現することのできる技術です。

→バックナンバー こもれび誕生!


さらに今回は、土器のざらざらした質感を表現するために、


「こもれび」で使用した普通の繻子織のパターンではなく、

「変則繻子」と呼ばれるパターンを使ってグラデーションを表しています。





変則繻子パターンを採用したことで生まれる質感、お分かりいただけるでしょうか?

繻子織や変則繻子について知りたい方は、シケンジョテキのバックナンバー、

以上、ご覧いただいたように、「やまなし縄文シルクスカーフ」は、


やまなしの

縄文土器の文様
×
デザインアーカイブ
×
絹糸
×
伝統織物技術
×
最新研究成果
||
やまなし縄文シルクスカーフ



このように、どこを切っても山梨要素がたっっっぷり詰まった、

山梨ならではのプロダクトとなっております。

現在は、山梨大学により国内外の来賓などに贈られるギフトとして採用されているほか、

次のように、一般にも発売が予定されています。


一般発売日:令和2年1月15日(水)(令和元年11月1日(金)より販売予約受付開始)

価 格:6,000円(税抜)

サイズ:54cm×54cm 

素 材:県産絹100%

予約受付:
(株)前田源商店
 電話/FAX:0555-23-2231/23-8988  メール:info@maedagen.co.jp



山梨の魅力やうんちくとともに、大切な人へのギフトとして、

あるいはあふれる郷土愛を身にまとうツールとして、

ご利用いただければ幸いです!


(五十嵐)

2019年9月11日水曜日

『定規織り』第2作 ~織物と緯糸、耳のはなし~

以前の投稿でご紹介した『定規織り』、週末の時間をつかって第2作目を織ってみました。

新しいのは、左のシマシマ模様の方。右側は前回紹介した第1作です。

幅は2㎝弱、長さは50㎝弱あります。


今回のコンセプトは「シマシマ」。

織り方を定期的にさまざまに変えて、単調でない縞模様を作ってみました。

緯糸には、紺色と、薄ベージュ色の2色を使っています。


織物と緯糸、耳のはなし


織物の世界では、緯糸を1丁、2丁、と数えます。

今回は、途中までは紺色だけの1丁、途中から紺色薄ベージュの2丁で織っています。

写真をよく見ると、耳のところに糸がぴょーん、と飛び出して、

また生地の中に戻っているところがあります。

これは、1丁目を織っているときに2丁目の緯糸が、

そして、2丁目を織っているときに1丁目の緯糸が、次の出番を待っている状態です。

図解すると、次のような状態です。


次の出番まで、使われない方の糸は、舞台の袖で待っているようなかたちです。


こうした待機中の緯糸ですが、上の写真では、片側だけでなく、

布の両側に見える場所もあります。

そういう場所では、じつは紺色で2丁、薄ベージュで2丁、

併せて4丁の糸を使っているので、待機中の糸2丁分が左右にあるのです。


同じ色なのに、わざわざ2丁で織るのは、合理的でないような気もしますが、

じつは織物工場ではごく普通のことです。

その目的は、糸の染めや太さのムラが出るのを緩和することです。

同じ色でも2本交互に繰り返すと、バラツキが平均されて目立たなくなるわけです。


このように2丁で織る場合、どのような順序で1丁目と2丁目を織るかで、

出来上がる耳の形が変わります。

面白いのは、上図の下段と中段のように、

同じように1122、1122と織っても、

左右違う耳ができるときと、左右どちらも同じ耳ができるときがあることです。


こうした違いが生まれるのは、緯糸が往復する「シャトル織機」のときで、

レピア織機では原理上、この現象はありません。

シャトル織機、レピア織機の違いは次の図解をご覧ください。

緯糸と経糸の話は、以前の投稿『タテの糸とヨコの糸』に詳しく書いてあるので、

よろしければご覧ください。

また、いろいろな耳の美しさを特集した投稿『耳の世界』もよろしければどうぞ。




『定規織り』の機動力


『定規織り』の特徴は、簡単な材料で作れることと、

なにより場所を取らないことです。

畳んでしまえば、封筒や内ポケットにもしまえるサイズ。

織っているときでも、大きめのスマホくらいの場所しかとりません。


上の写真は、電車の中で、シートに座りながら、

長時間の移動中に織っているところです。

公共交通機関の中で織物を織ったのは、生まれて初めてです。

(もしかしたら世界初?)

長い移動時間でしたが、音楽を聴きながら充実したひと時をすごせました。

充電の心配にも通信料にも無縁。

退屈せずに長時間を過ごすには、スマホ以上の実力があるように感じられました。

何年かすると、新幹線や飛行機のなかで

『定規織り』にいそしむ人々の姿が珍しくなくなる日が来るかもしれません。



そういえば、まだ繊維のセの字も知らなかった高校時代、

遠い未来、年を取った自分が、椅子に座って

糸で何かを作っているビジョンが頭に浮かんだことがありました。

もしかして、これのことだったかも!?




(五十嵐)