2011年12月9日金曜日

濡れ巻きツアー 経枠職人編①

帝京大学山梨文化財研究所の客員研究員をつとめる中田節子先生がご自身も所属している、民具製作技術保存会(民技会)のメンバーと共に濡れ巻きの見学にいきました。

民技会とは、むかし各地にあった家を移築し川崎市立日本民家園」という野外博物館のなかにある組織です。民具の復元と技術の伝承を行う任意団体で、昭和48年に設立されました
今回は手織りの技術とは違うのですが、手織りと機械織りのちょうど中間に位置している郡内織物産地独自の「濡れ巻き整経」を見学していただきました。
濡れ巻きとは、郡内織物産地にしかないタテ糸整経技術であり、濡れ巻きに関係する技術者もどんどん少なくなってきている為、大変貴重な技術です。

まずは今の郡内織物産地のルーツになっている、幻の手織り技術「甲斐絹」の資料を見て頂きました。甲斐絹とは先染め、長繊維の絹織物で、着物の裏地などに使われていましたが、その技術は時代の流れにのまれ、途絶えてしまいました。


↓ 甲斐絹について詳しい歴史や生地のデータはこちらのページから見ることが出来ます。
THE KAIKI MUSEUM


さて、最初の見学先の経枠(へわく)屋さんに来ました。
ここでは機にタテ糸をたてるための糸を引きそろえていきます。


こちらは木枠にまかれた糸。ここからタテ糸を整経していきます。


 経枠(へわく)職人。グルグルと糸を巻き取っていきます。
長い時には200m以上のタテ糸を巻き取るらしいです。






巻き取りが終わると、織物の要でもある綾(あや)を取っていきます。綾を取ることはとは、糸の順番がバラバラにならないようにするということです。説明が難しいのですが、とにかく織物にとって綾はなくてはならないものなのです!
日本人の名前によく「綾」という字が使われるのも、日本人がいかに繊維産業と共に生きてきたかということがうかがい知れるかと思います。


この針金で綾を取っていきます。


今回は特別に綾の取り方を体験させていただきました。
職人さんが簡単そうにやっていることも、いざ自分でやってみると、その難しさが分かります。


シケンジョの五十嵐リーダーも真剣です。静止画で見るとちょっと職人っぽいかも?!






綾を取り終えると、今度は長すぎるタテ糸を鎖編みにしていきます。


リズミカルに鎖編みにしていきます。手首のスナップが重要です。


見る見る間に長いタテ糸が編まれていきます。


次は鎖編みにしたものを固く巻いていき経玉(へだま)を作っていきます。
完成した経玉。
こうすることにより糸を運搬しやすくします。

経玉は染め屋さんで染色され、次の工程「機巻き(はたまき)」職人の手に渡ります。




機巻き職人編へつづく!

(高須賀)