2012年7月31日火曜日

グンナイプロダクツ、デビュー!

「グンナイプロダクツ」のワークショップが7月28日(土)、富士吉田市の市制祭「市民夏祭り」にて開催されました。
グンナイプロダクツとは、この夏あらたにスタートする、郡内織物を県内外にPRするプロジェクトです。

東京造形大と産地企業とのコラボ事業に参加した経験をもつテキスタイルデザイナーの井上綾さんを中心に、市内の織物企業が集まって結成されました。
(グンナイプロダクツについて詳しくは讀賣新聞の記事(コチラ)をご覧下さい。)

その活動の第一弾が、今回の地元富士吉田でのワークショップ。
工場の周りに住んでいる方々、とくに小さいお子さんや若い人たちに、地元の生地の魅力を知ってもらうため企画されました。

標高700mの高地とはいえ、きびしい真夏の太陽が照り付けます。
しかし市民の盛り上がりはかなりもの。すごい人出です。









ワークショップでは、子どもたち(とお母さん)にネクタイ生地を使ったアクセサリー作を体験してもらいました。

材料のネクタイ生地は、市内の織物工場でつくられたものです。


ネクタイ生地を斜めに裁断する際、どうしても残ってしまうのがカドの三角形のはぎれ。
ふつうだったら捨てられてしまうこのハギレを使って、チビネクタイを作っちゃおう!
というのが今回の企画です。

運悪くネクタイになることのできなかったハギレたちが、
子供たちの手でちっちゃなネクタイ型アクセサリに生まれ変わっていきます。

こどもたちに生地の扱い方を指導する井上さん。
ブースには、井上さんのほか、東京造形大学の同窓生たちが集まってくれました。



産地のこどもたちも、ネクタイ生地がこの街でたくさん作られていることはほとんど知りません。
もしかすると、シルクの生地を触るのも初めてかも?
きれいなシルクのネクタイ生地に触ってかわいいアクセサリを作るワークショップで、織物を身近に感じてもらえれば最高ですね。






このグンナイプロダクツは今回のイベントを皮切りに、産地の織物グッズを購入できるサイトづくりなど、県内外に向けた様々な活動を展開していく予定です。

今後もグンナイプロダクツの動向は要チェックです!


LINK

グンナイプロダクツ公式サイト

グンナイプロダクツFacebook

グンナイプロダクツtwitter


(五十嵐)

2012年7月25日水曜日

ミラノデザイン講座2012 (その1)

山梨県がプロデュースするイタリア短期留学、ミラノデザイン講座に研修生として参加してきました!(…といっても2月のことですが…)

この講座は、山梨県がミラノに本校を置くヨーロッパ有数のデザイン学校、IED(Istituto Europeo di Design)に、オーダーメイドで作ってもらった独自のカリキュラム。なんと学費はタダ、渡航滞在費のみ負担で参加することができます。

この講座、秋には第2回、来年2013年春の募集が始まります。
シケンジョテキでは、それに先立って今年の研修の様子を(遅ればせながら)ご紹介します!


2012年2月に参加したメンバーは、ジュエリーの企画・デザイン、水晶研磨彫刻の職人、紙製品メーカーの企画、織物業の若手後継者など、さまざまな分野で活躍する10人。

上の写真は約2週間の滞在の最初の朝。マイナス10度になろうかという極寒のミラノ郊外、駅までの通学風景です。

バスは通勤客で混んでましたが、現地で生活している感覚が味わえるのが個人的には楽しい経験でした。



研修先のIEDに到着です。ここはミラノの南にあるモーダ校。ファッション、テキスタイル、ジュエリーなどを学ぶデザイナーの卵が世界中から集まっています。

では、研修1日目の流れを見ていきましょう。
2012年2月6日月曜の朝9時半。登校中の学生たちであふれています。




中央はIED研修担当のフランチェスカさん、左はフォトグラファーのダリアさん。 8日間の研修中、毎日顔を合わせたスタッフの方々です。

この方は、最初の授業を担当したカテリーナ先生。ペーパーアーティストであり、アクセサリーのデザインや空間デザインなどのスペシャリスト。初日の最初の授業を受け持ってくれました。

通訳のハラ・ノリコさんに逐次通訳してもらいながら、真剣に授業に集中する研修生たち。
会社を2週間も空けてはるばるイタリアまでやってきているので、本気度が高いです。



初日の午前はオリエンテーションと、カテリーナ先生のレクチャー。後半には研修生が日本から持ってきた作品を見ながら意見を交わしました。日本人が思う日本らしさ、イタリア人が求める日本らしさとは何か?クリエーションに対する文化の違いなど様々な話題が飛び交いました。






そして午後には、学校を出て地下鉄とトラムを乗り継ぎ、カテリーナ先生のアトリエ訪問に向かいました。

 





カテリーナ先生のお父さんは、著名なイラストレータ/コミック作家のグイド・クレパックス氏。スタジオにはグイド氏の作品「Valentina」シリーズの主人公、ヴァレンティナのイラストも多数展示されています。





紙という素材にこだわり、その魅力を引き出しつくそうとイマジネーションの極限に挑むかのようなカテリーナ先生の作品に囲まれて、研修生たちの話題はつきません。 

そして周りが暗くなりだした17時ころ、カテリーナ先生のスタジオを後にして解散。緊張しながらの研修一日目が終了しました。イタリアの空気にどっぷりつかりながら、朝から晩までギッシリの濃密な研修、かなりの充実感がありました。
次回のこのシリーズでは、2日目以降をダイジェストでお伝えしようと思います。


(文:五十嵐 写真:Igarashi, Daria Galli)

2012年7月24日火曜日

シケンジョ甲斐絹ハンター

郡内織物産地に栄えた、幻の手織り物「甲斐絹」を織っていた時の道具が残っているという情報を聞きつけ、山梨県都留市にある中野さん宅にお邪魔しました。

甲斐絹とは羽織の裏地に用いられる高級絹織物として、江戸時代から昭和初期にかけて盛んに生産されてきました。しかし、甲斐絹が最後に織られたのは1940年代のこと。

甲斐絹は、羽織などの和服が日常的に使われていた時代の終焉とともに、姿を消してしまった織物なのです。当時使われていた羽織などの形で現存するものは少なく、幻の織物といわれています。
しかし甲斐絹を織る技術は、これまでにもご紹介した「濡れ巻き整経」のようなさまざまな形で遺されています。
いったい、中野さんのお宅では何が見つかるのでしょうか?

中野さんのお家はとても古く、昔ながらの民家の造りが残っています。
昔は屋根裏で蚕を育てていたそうです。今では屋根裏は倉庫として使われており、甲斐絹を織っていた時の道具はすべて屋根裏に保管されているとのことで、さっそく屋根裏に上がらせてもらいました。


屋根裏の奥に倉庫があり、その中には年代を感じさせるものたちが沢山置いてあります。暗いので、携帯電話を懐中電灯変わりに甲斐絹関連グッズの探索です。二層構造になっている屋根裏の一番上の階には織物関連の物であろうと思われる謎の道具類がチラホラと見受けられましたが、今回は床が抜けそうだとのことで探索を断念。。



見つけたのがこちらの手織りの織機と織り物の準備段階で利用する機材一式。


特に珍しいのが、上の写真にある経糸を整経するときに使用する道具。
木のレールと糸を引っ張るトロッコなのですが、これらの道具の形状から、今までこのブログでも何回かご紹介している濡れ巻き整
で使われるものではないかと思われます。

濡れ巻き研究家でもあり、甲斐絹にも精通している五十嵐リーダーも興味津々です。
この道具の使用方法などは、まだわからないところも多いので、ひきつづき研究の余地ありです。


参考:濡れ巻き整径関連の記事
ひととおり屋根裏に置いてあった物に目を通した後、最後に中野さんがおもむろに古い箪笥の中から取り出したのが、中野さんのおばあさんが織ったという着物や羽織!!
もしや、この中に当時に作られた甲斐絹があるのではないかと、調べてみると‥‥


ありました!!甲斐絹の裏地を使った羽織が!しかも、絵甲斐絹!!そのうえ、当センターで保存している450点以上もの甲斐絹資料にもないクモの巣の柄!!

少し前まで、甲斐絹に関する資料は古い家や蔵が沢山あったらしいのですが、だんだんと古い家の建て替えが進み、それに伴い貴重な甲斐絹の資料も処分されてしまったらしいです。
そのため、今では当時使われていた甲斐絹が見つかることもあまり多くありません。
これは大収穫!!



この地区に、眠っている甲斐絹の資料もまだ探せばありそうなので、シケンジョとしても、貴重な甲斐絹資料が処分されないうちに出来るだけ多くの資料を探し出せたらと思っています。

また、都留市の歴史や文化を展示している都留市博物館「ミュージアム都留」では、平成25年に開催される「富士の国やまなし国文祭2013」に向けて、甲斐絹の展示会、「プレ甲斐絹展」が平成24年7月21日(土)から開催されています。(この様子はのちほどレポート予定ですのでお楽しみに!)

ミュージアム都留では、来年の国民文化祭に向けて甲斐絹などの資料を収集しています。みなさんの蔵の中やタンスの中の古い着物の裏地に、もしかしたら甲斐絹が使われているかも。それらをお持ちの方はミュージアム都留までご連絡ください!




以下ミュージアム都留のホームページより 
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甲斐絹、さがしています!
平成25年に開催される「富士の国 やまなし国文祭 2013」に向けて、ミュージアム都留では「甲斐絹」の展示会を開催します。甲斐絹や郡内織・甲州織などをお持ちの方はミュージアム都留までご連絡下さい!
※甲斐絹募集に関する連絡先:0554-45-8008 (ミュージアム都留)
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甲斐絹のことをもっと詳しく知りたい方はこちらから↓
The Kaiki Museum



(高須賀)

2012年7月20日金曜日

山梨宝飾産業見学

今回は毎年恒例行事になりつつある、首都圏のクリエーターと行く山梨県宝飾産業見学ツアーが実施されたので、その模様を写真でご紹介しようと思います。
県庁産業支援課と、台東デザイナーズビレッジ(鈴木村長はシケンジョの客員研究員としてもおなじみですね)の主催による、大好評の人気ツアーです。
織物産地の若手ももちろん参加。昨年のツアーではステキなコラボ商品も誕生しています。

ツアー告知より
宝石産地として有名な山梨県甲府で、ジェムストーンフェアの見学、宝石研磨・水晶彫刻の工房見学、若手職人との交流、宝石研磨体験を実施。
甲府産地の魅力を知り、ジュエリービジネスに活かすためのツアーです。
山梨県庁のバックアップにより、普段は見ることができない職人の工房や作業風景を見学、工業技術センターでの研磨体験なども実施できることになりました。年1回の特別な機会です。




 株式会社シミズ貴石 
一足先に「かいてらす」で開催中のジェムストーンフェアを見学していた
台東デザイナーズビレッジ鈴木村長ほか、首都圏在住のクリエイターの皆さんと合流し、
まずやってきたのは株式会社シミズ貴石

原石を世界中から買って卸しているので、珍しい石が沢山あります。

驚いたことに庭には宝石の埋め込まれた盆栽が何鉢も‥
清水社長も「これは宝飾業をやってる人しかできないことだね」っと笑っていました。
シミズ貴石では宝石のカットを得意としており、職人さんは寸分の狂いもなく1㎜以下のカットを手の感覚だけで行っていきます。
特殊な台で宝石のカットする角度を決めていきます。細かい作業は目で確認することができないので、削れる音と手の感覚だけで行う、これぞまさしく職人技といったところでした。
これは宝石のカットをするときに、角度を固定する道具。




美しい仕上がりですね☆
ここで清水社長のデモンストレーションが始まりました。
宝石のカットで一番難しいのは、一つの面を作るあいだ、仕上げの作業にかかるまで同じ場所を磨きつづけないといけないところ。
道具を使っても難しい作業ですが、清水社長は角度を出すための道具を使わず、フリーハンドで面をとっていきます。
完成!!
話しながら、手元も見ずにやったとは思えない輝きに皆さん驚愕の様子です。
 「簡単に難しいことをやるのがプロだ」という社長の言葉が印象的でした。


こちら、職人技の極み「キキョウカット」
世界でも清水社長しかできないといわれる、宝石を180面体にしたものです。
この技は道具を使って面を出すことができないので、清水社長のようにフリーハンドで正確に面を取ることのできる職人しかできないカットの技です。人間の手技もここまでくると芸術ですね。



ここは宝石彫刻を得意とする 詫間宝石彫刻 
大きな水晶などで仏像など、複雑なかたちの作品を彫刻しています。
水晶彫刻はまず垂直に回転する円盤に砥粒をつけて加工していきます。 
水晶の塊から仏像を彫りだしていきます。最初の荒削りの段階でほとんどの形を仕上げてしまうそうです。
こちらは石に穴をあける機械。
振動と砥粒で少しずつ穴をあけていくのですが、間違って手に穴があいてしまうこともあるそうです。。。
イテテ‥
貝殻を削って作った花の彫刻
ガラスではありません!
宝石の彫刻です!!
花柄に石をはめ込み、磨いて作ったもの。凄いです。




詫間貴石彫刻のすぐ隣にあるのが貴石彫刻オオヨリ
宝石の彫刻を得意としています。
今まで貴石彫刻オオヨリ作ってきたジュエリーの数々。
みな手にとっては感嘆の声を漏らしていました。
特にすごかったのがこちらの指輪。
宝石のドームの中にカットされた宝石!?
いったいどうやって作っているのか分からないスーパーテクニックです。




<交流会>

一通り工場見学を終え、懇親会の会場にやってきました!!
場所はレストラン・パヴィヨン・サドヤ」ワイナリーの経営するレストランです。

レストランを貸し切っての懇親会です。
クリエーター、産地の宝飾業者、そしてシケンジョスタッフと一緒にツアーに参加した機屋さんが集まり様々な話が飛び交っています。
山梨県の職人さんも東京からいらしたクリエーターさんも打解けた様子です。
交流会では誰もがものづくりに携わる人として、有意義な会話ができたようで、これからのビジネスマッチングもこの場所から生まれそうです。このような産地とクリエーターがフランクに会話できる機会もそんなにないのではないでしょうか?
ほんとは産地とクリエーターがお互いの力を必要としているのに、出会う場所がとても少ない。。

シケンジョとしても、もっともっと、このような出会いの場が作れたらいいなっと思いました。


(高須賀)