2016年10月31日月曜日

サテンのひみつ(2) サテンの描き方

「サテン」について紹介するシリーズ、「サテンのひみつ」第2回です。


今回は、サテンの組織図の描き方についてご紹介したいと思います。



前回お話ししたように、サテンは経糸緯糸どちらかの糸だけが目立ち、

もう一方はできるだけ目立たないしくみになっていました。



今回は、そういう構造を持つサテンの組織図を、

どういう風にしたら描くことができるのか学びたいと思います。

いろいろなサテンの組織図
















「サテン」を作るときに守るべきルールは、次の2つです。




 

このルールに従って、

5マス×5マスのサテンの描き方を図解してみましょう。

まず、下図Aのように、1列目の1行目(=左下の角)に最初の組織点「■」を描きます。

すると、2列目の組織点は、どこにすれば良いでしょうか?
  

 
上図B には、ルール①に従って、組織点を置いてはいけないマス目に×印を入れました。

白×ルール①ピンク×ルール②により組織点「■」を置くことができません。

すると、2列目では、赤い四角で示した3、4行目のマスだけが残ります。

ここで仮に、下図Cのように、2列目3行目のマスに組織点「■」を置きます。
すると、今度はルール①により黄色い×の場所に組織点「■」は置けなくなります。


3列目で残っているのは赤い四角で囲った5行目だけなので、下図Dのように3列目5行目に「■」を置きます。


 

こんどは、上図Dのように、緑の×が出てきます。

残る4列目、5列目で組織点「■」を置ける場所は、ひとつづつしかありません。



これで、5マス×5マスの繻子組織が完成です。


なお、5マス×5マスで表せる繻子組織を、5枚繻子と表します。




「枚」について


なぜ繻子織の名前に「枚」という言葉を使うのでしょうか?


それは、織機の部品である綜絖(そうこう:Heddle=へドル)の枚数と関係があります。


 

上の図は、基本的な組織(ドビー織機)の構造と、綜絖の役割を

あやつり人形をつかって表しています。

あやつり人形の手足は、びっしりと並べられた経糸です。

織機はあやつり人形を動かすように、綜絖をつかって経糸を持ち上げて、

経糸と緯糸との交差を操ることで、織物組織を作ります。

このとき、綜絖の枚数によって、あやつり人形(=経糸)の動きを

どのくらい複雑にできるかが決まります。

繻子織りのサイズに使われる「枚」というのは、

その組織を織るときに何枚の綜絖が必要か、を表しているのです。



飛び数について



さて、さきほどの「×」印を入れていった組織図の描き方を、もっと単純なルールにしたのが

次に紹介する「飛び数」をつかった描きかたです。


 
上の図のように、最初の組織点0から上に数えて

2つ目の右(→上図A)、あるいは3つ目の右(上図B)に次の組織点「■」を描くことで、

サテンのルール①、②を守った組織図を描くことができます。

0、1、2と数えていって、もし方眼を超えてしまったら、逆側に回り込むようにして数えます。


このとき、上図Aを「2飛び」の5枚繻子、上図Bを「3飛び」の5枚繻子と表します。

つまり、5枚繻子には2つの種類があるわけです。


同様に、8枚繻子には「3飛び」「5飛び」の2種類があります。




 
「飛び数」として成り立つ数の条件は、次の図をご覧ください。




 
5枚繻子の2飛び、3飛び、

8枚繻子の3飛び、5飛びは、上図のように

二つ足したら「枚数」(=組織サイズ)になるけれど、1以外の公約数を持たない数の

組み合わせで成り立っていることがわかります。


このような数を選べば、何枚の繻子でも描くことができます。

例えば、次のような組み合わせが飛び数として成り立ちます。






興味のある方は、色々な枚数の繻子組織を描いてみてください。


次回は、色々なサテンを比べてみようと思います。


お楽しみに!




(五十嵐)




2016年10月28日金曜日

サテンのひみつ(1) 光沢のひみつ

「サテン」 という言葉を知っていますか?



ジャズのスタンダードナンバー『サテン・ドール』では、

着飾った魅力的な女性のことを ”サテン・ドール” とうたっています。

この歌のように、贅沢で華やかで美しい、というイメージがサテンにはあります。



今回のシケンジョテキでは、サテンの美しさ、特に光沢のひみつに迫りたいと思います。













サテンを知っている方は、きっとこんな光沢のある生地を

思い浮かべるのではないでしょうか。


サテンというのは、織物の織り方のひとつで、

高級なウェディングドレスではシルクのサテンがよく使われます。

上の写真も、ヤマナシ産地(宮下織物(株)さん)で作られた、シルクのサテンです。



ではまずサテンとは何か、まとめてみましょう。


サテンの基本


サテンは、日本語では「繻子織(しゅすおり)朱子織)」という織物組織のことをさします。

基本的な3つの組織、平織綾織繻子織のうちの一つです。



上図の右側にある、描かれた方眼紙に「■」を並べて描いた図は、織物組織を表すもので、組織図と呼ばれます。

組織図では、経糸と緯糸の交点で、経糸が上なら「■」、緯糸が上なら「□」で表されます。


上の図で5×5マスので示したような、繰り返しパターンの一番小さな単位のことを

完全組織と呼び、ふつう織物組織は、完全組織で描かれます。



光沢のひみつ


いよいよ本題、サテンの光沢のひみつに迫ります。

なぜサテンの生地は、光沢があるのでしょうか?



まず、綾織と繻子織の組織図を比べてみましょう。

どちらも、経糸「■」と緯糸「□」の比率が、 の同じ比率になっている組織です。

経糸「■」の面積比率は、綾織と繻子織、どちらも全く同じです。






次に、それを実際に織ってみた写真をご覧ください。



織った結果、黒い経糸と、青い緯糸の見え方の比率は、どうなっているでしょうか?



上の綾織では、黒い経糸のナナメの線////がハッキリ見えていますが、

繻子織では、黒い経糸は、青い緯糸陰にかくれて少ししか見えていない!のが分かりますか?



黒い経糸が、青い緯糸かくされて見えなくなる傾向は、

緯糸の密度が高ければ高いほど、はっきりと現れ、

織物組織のなかでも、経糸の比率が低い(=完全組織のサイズが大きい)ほど、

経糸は隠される傾向が強くなります。


下の写真は、経糸緯糸1:15の、綾織と繻子織を比べたものです。


繻子織では、経糸ほとんど見えなくなってしまいました!

ほぼ青い緯糸だけが見えている状態になっています。



組織図と、製織後のイメージを比べて見ると、こんな感じです。






製織後の写真にあるように、繻子織の場合、

組織図中の■が、ふくらんだ緯糸に隠されて、見えづらくなっています。



これは、綾織の場合とちがって経糸の見えている組織図中の「■」が、

互いに隣接していない構造になっているところと、

緯糸途中で膨らんでいることにポイントがあります



さて、このようにほとんど緯糸だけが見えているということは、

どういう見た目の効果に結び付くのでしょうか?


それはズバリ、緯糸だけということは、

横方向の繊維だけがきれいに揃って見えているということです。

言いかえると、織られる前の緯糸の姿に近いということです。

(もちろん、裏側から見ると経糸だけの繊維が目立つことになります)



織物工場で織機にかけられた経糸を見た経験のある人は、

こう思ったことがあるかも知れません。

「織る前の糸の光沢は、織ったあとよりもむしろキレイなんじゃないか?」
、と。

※イメージ映像   上の写真は、今回織った織機とは別の写真です。


※イメージ映像   上の写真は、濡れ巻き整経で使われる経糸のかたまり、「経玉」です。



できれば織らずに身にまといたいくらい、美しい糸の光沢。

その美しい光沢を、織ったあとでも最もキレイに再現するための織り方が、繻子織です。

これこそが、サテンの光沢のひみつであり、サテンの秘められた役割なのです。

(…というのが、シケンジョテキライターの持論です)



濡れ巻きのこと


一番上の写真で紹介した、サテン生地に使われた「濡れ巻き」について少し紹介します。

濡れ巻きは、染色後に経糸を湿らせたまま、手作業で乾かしながら整経する技法で、

サテンの輝きが増すと言われており、その効果はシケンジョの研究からも実証されています。

濡れ巻について知りたい方は、下のリンク先をご覧ください。


 ・濡れ巻サテンの輝き











また、サテンは織り方だけでなく、

繻子織で織られた生地、とくに絹の生地をさして、

布の種類を表す言葉として使われることもあります。



satin  と sateen


英語では、サテンを表すのに、satin  と sateen という似た用語があります。


   satin   [sˈætn]  サテン、サトゥン

   sateen [sætíːn] サティーン


satin と sateenは、どちらも繻子織で作られた生地をさしますが、

特に satin は、シルクやポリエステルなど、光沢のある糸で作ったものをさし、

sateen は、綿など、光沢のないスパン糸で作ったものをさすそうです。





サテンの光沢のひみつ、いかがでしたでしょうか。

サテンのひみつシリーズ、次回は、様々なサテンの種類についてお話しします。

それでは、また。



(五十嵐)

2016年10月7日金曜日

ヤマナシハタオリ産地バスツアー ”ハタオリマチ”に行こう

11月12日(土)に、今年3回目のバスツアー、
「ヤマナシハタオリ産地バスツアー  ”ハタオリマチ”に行こう」を開催します!

※満席のお知らせ

おかげさまで本バスツアーは、満席となりました。
お申し込みいただいた皆様、ありがとうございました。

なお、今後はキャンセル待ちでの受け付けをいたします。
キャンセル待ち枠でのお申し込みを希望される方は、
下記リンクからの応募フォームに必要事項を記入のうえ送信してください。よろしくお願いいたします。
  応募フォーム



今回のバスツアーでは、いつものハタオリ工場訪問だけでなく

はじめて富士吉田市が開催する「ハタオリ」テーマのイベント、

「ハタオリマチフェスティバル」(通称「ハタフェス」。11月12日(土)、13日(日))の初日に日程を合わせ、

ヤマナシ産地、および日本各地のファクトリーブランドやクリエイターが集う「ハタフェス」にも

訪問できるという特別企画です。


日程・概要をご覧のうえ、ぜひお申し込みください!


●日程

  平成28年 11月12日(土)

   9:00 新宿駅西口集合、出発
 10:30 工場・企業訪問
 12:30 昼食(市内うどん店)
 13:30 工場・企業訪問
 15:00 ハタオリマチフェスティバル
 16:00 ヤマナシ産地テキスタイルエキシビション(於:リトルロボット)
 17:00 訪問 : 市内ハタオリ関連スポット
 18:00 新宿へ  20:00新宿着 ※道路状況により着時間は前後します。

・訪問先企業 宮下織物(株) 、(株)槙田商店ほか

・訪問先・訪問時間は都合により予告なく変更される可能性があります。

●その他

  *費用 バスツアーは無料です。
  ただし昼食・軽食の実費として約3,000円程度を現地にてご負担いただきます。

  *スケジュールの都合上、食事は昼食と、16~17時のエキシビション会場内での軽食となります。

  *当バスツアーは日帰り企画ですが、当地への宿泊もおすすめです。
    宿泊された場合、夕方~夜に開催されるハタフェスの
    音楽イベント、レセプションパーティにも参加可能です。

    帰路宿泊費・帰路交通費・上記イベント・パーティ参加費は自己負担となりますのでご了承ください。

    予約状況によって満席となる恐れがありますので、あらかじめご了承ください。


  *ハタフェス関連のイベント情報は、こちらをご覧ください
  →  ハタフェス公式サイト HP ・ Facebook

  *宿泊希望の方には、ハタフェス会場に最寄りのゲストハウスsaruya等、宿泊情報をご案内いたします。


●お申し込みは、こちらから。 → 応募フォーム

※満席のお知らせ

おかげさまで本バスツアーは、満席となりました。
お申し込みいただいた皆様、ありがとうございました。

なお、今後はキャンセル待ちでの受け付けをいたします。
キャンセル待ち枠でのお申し込みを希望される方は、
上記リンクからの応募フォームに必要事項を記入のうえ送信してください。
よろしくお願いいたします。



定員  15名 (先着受付)

  ※基本的に産地企業の取引対象となり得る業界関係者及び出版・報道関係者等とさせていただきます。



●受付開始  平成28年10月7日(金)12:00(正午)より


実施主体
  主催:富士工業技術センター  協力:山梨県絹人繊織物工業組合


ヤマナシ産地テキスタイルエキシビション、ハタフェスの会場は、
好景気に沸いた昭和中期のレトロな街並みの残るエリアにあり、
古い空き家をリノベーションしたスペースを活用しています。


初めてのお祭りに賑わうヤマナシ産地で、
ハタオリ工場、職人に出会う旅。

ハタオリのマチの歴史と現在を感じられるバスツアーに、ぜひお越しください!



(五十嵐)