まず下の写真をご覧ください。
このように撚りをほどくことを、解撚(かいねん)といいます。
この時は25㎝で131回くらいなので、524T/mという撚り数になります。
以上、フィラメント糸の美しい検撚の風景でした。
検撚機は、シケンジョ職員に声をかけてもらえれば織物関係者なら無料で使うことができます。
2011年8月9日にスタートしたシケンジョテキは、今日で10周年を迎えます。
記念すべき最初の写真は、この一枚でした。
2011年はツイッターが少し普及しはじめたくらいで、フェイスブックもインスタグラムもLINEもまだまだでした。
ネットで検索しても山梨の織物の情報はほとんど見つからず、八王子の東京造形大学テキスタイルデザイン専攻の学生たちのあいだでも、ほとんどの人が産地の存在を知らない時代でした。
シケンジョテキ最初の写真で、拡大鏡をとおさないと見えないくらいの「富士吉田」の小さな文字は、ネットで検索しても情報が何も出てこなかった山梨ハタオリ産地の当時の印象そのものです。
それから10年。
ヤマナシハタオリトラベル(2012)、ハタオリマチフェスティバル(2016)、ハタオリマチのハタ印(2016)などの活動やイベントが次々に誕生し、山梨ハタオリ産地から発信される情報は爆発的に増えていきました。
応援してくれる人、足を運んでくれる人、産地の中に飛び込んでくる人、さまざまな仲間も増えて、産地は以前よりにぎやかになってきました。
それでも、まだまだほとんどの人にとって織物産地は知られざる存在のままでしょう。
シケンジョテキの最初の投稿は、高須賀さんのこんなことばでスタートが宣言されました。
「すべての日本の産地、また消費者や生産者がより近くなることを目指して、シケンジョによるテキスタイル・ブログ、略してシケンジョテキ、ついにスタートします!!!!」
国内初の工業化レベルで実用化(開発期間2018~継続中)された「VANAWARM®(バナウォーム)[1]」。この山梨県有特許権の実施許諾商品(特許第6792108号)である機能性ウール糸は、国内の民間検査機関による11項目にも及ぶ色安定性に関する厳しい検査及び高い光吸収発熱保温機能性検査をクリアしています。
VANAWARM®は、陽光が差したときの高い近赤外線光吸収発熱機能(温熱機能と速乾性)を備えています。さらにVANAWARM®は、機能性粒子を練り込んだアクリルやポリエステル等(=従来の高機能性合成繊維)では、曇ったとき(=光消灯時)に冷めやすい(=熱伝導率が高い)という課題がありますが、VANAWARM®は風合いを損ねないウール100%で高い保温性を実現し、2021年2月のジャパン・ヤーン・フェア(JYF、愛知県一宮市)等で話題となっています[2]-[7]。
引用元[2]
製品をPRするためには、その価値を分かり易く伝えるイメージ画が必要となってきます。産業技術センターの研究員の中にはデザインを専門とする職員がいます。その1人に自分が描いた原画(写真1)を見せてコンセプトや技術内容を伝え、POP等宣伝媒体用のイメージ画を作成してもらったところ、(図1)のように変身しました。
図1
[1] フジチギラ(株)
[2] 山梨県産業技術センターニュース, Vol.12,p5 (2021) https://www.pref.yamanashi.jp/yitc/documents/news-012.pdf
[3] 富士吉田・繊維メーカー 県特許活用 温か新ウール 防寒具に使用見込む, 読売新聞 (2021/1/21)
[4] スゴろく「新開発 光で発熱するウール 県の特許技術×郡内織物商社」, UTY テレビ山梨 (2021/2/10)
[5] ウール糸に発熱機能 商社開発 バナジウム染料使用, 山梨日日新聞 (2021/2/19)
[6] フジチギラ/光で発熱のウール糸開発/バナジウムの染料を活用, 繊維ニュース (2021/2/19)
[7] フジチギラ/発熱・蓄熱ウール開発/汎用・高機能の2種で色糸販売, 繊研新聞(2021/3/5)
(繊維技術部製品開発科 上垣、宮澤、望月)
(デザイン技術部 鈴木)
昨今、生活スタイルの変化から、キャンプ等におけるアウトドア製品が人気です。クラウドファンディングでも、ウールそのものが持つ温度・湿度の調節機能に加えて、難燃性を付与した新製品が話題となっています[1]。
防火・防炎性能が求められる消防服に限らず、繊維自体が難燃性であることは、通常衣服だけでなく、家具やインテリアなどの内装をはじめ、火の燃え広がりを防ぐ重要な性能です。近年の大規模な火災等も、難燃性素材を使用することで被害を最小に食い止めることができる可能性があると言われています[2]。
繊維素材は、燃えやすいものが多い印象があります。繊維の燃えやすさを考えるにあたっては参考となる指標があります。LOI値(Limiting oxygen index)は、燃え続けるのに必要な最少酸素量を示した限界酸素指数値です。この値が大きいほど、より多くの酸素を必要とします。すなわち空気中では燃えにくい素材である、と判断されています。試験条件によって数値は変わってきますが、参考表によると、綿の18.4に対して、羊毛(ウール)は25.2です[2]。一般的に、22以下であれば可燃性と言われ、23から27であれば自己消火性をもち、27以上であれば難燃性と判断されている[2]ので、ウールは消防服等にも採用される自己消火性素材と言えます。
ウールに微量の金属チタンやジルコニウムを付着させて、火に対する炭化促進効果を高める<ザプロ加工>という加工方法があります[3] [4]。ザプロ加工はカーペットや絨毯等に適用されていて、ウールの難燃性を向上させることができる加工方法です。
産業技術センターでは、ウール等の天然素材に、近年の冬季寒さ対策として、近赤外線光を熱に変換する保温性の高い技術を開発し、特許を取得しました(特許:第6792108号)。現在、洗える防縮ウール糸「VANAWARM®plus、9色、フジチギラ(株)」を中心に製品化されています。このウール糸のニットサンプルは、洗濯脱水後のサンプルに光を照射したときの乾燥時間が、加工しない素材よりも約2倍速く、製品を衛生的に保つ効果も期待されています[5]。
バナジウムを付与したウール(V-WOOL)に難燃機能があるのではないか?と考え(山梨のマフラー等製造企業[6]の方の指摘により)、まずは、45°メセナミン法により、着火剤(メセナミン)の燃え広がり具合を検討しました。その結果をグラフ(図1)と写真(1,2,3)で示します。
メセナミン法での実験結果では、通常のWOOL(JIS L 0803準拠 染色堅ろう度試験用添付白布 毛1-1号)の炭化長平均52.4 mmに対して、V-WOOL(通常のWOOLをバナジウム溶液処理したもの)の炭化長は30.2 mmでした。毛布の防炎製品性能試験基準値は平均で100 mmであることを考えると、この結果はV-WOOLが難燃機能を持つことを示唆しています。これは、WOOLの自己消化性の高さに加え、バナジウム溶液処理により、さらに難燃性がプラスされたからだと考えられます。
LOI値の高さとして、よく知られているのはモダクリル繊維(アクリル系)のカネカロン(カネカ製)があります[7]。山梨産地のカーテン製品においても、高い素材防炎として取り扱っているようです。カネカ社調べにおいて、LOI値28の高い性能を示しています[7]。
先に示したメセナミン法で試した
No.1:WOOL、
No.2:WOOL(No.1を湯洗い処理したもの)、
No.3:V-WOOL
の3サンプルを JIS L 1091 E法(E-2号)による繊維の燃焼性試験方法[8] でLOI値を調べました。
その結果は、
No.1:21.9
No.2:22.2
No.3:28.1
でした。今回のV-WOOLは、効果の差を確認するためにかなり高いバナジウム濃度で処理しています。この結果から、バナジウムにウール繊維の難燃性を強化する機能がありそうだということがわかりました。
今後も、このような新機能を追求して山梨産地企業の新製品開発へ役立てられるようにと考えています。
[1] https://www.makuake.com/project/fibrefiber/?utm_source=default&utm_medium=widget&utm_campaign=widget
[2] https://www.toishi.info/sozai/textile/loi.html
[3] 木下博史:主として毛製品の防炎加工についてザプロ加工を中心にしてー, 繊維製品消費科学会誌,Vol.22,4,pp.13-17(1981)
[4] 桜井雅志:最近の天然素材II ウールの新素材とその技術, 日本家政学会誌,Vol.40,3,pp.233-237(1989)
[5] https://www.pref.yamanashi.jp/yitc/documents/news-012.pdf
[6](有)デルタプロジェクト
[7] https://www.modacrylic.com/about/advantage01
[8] https://kikakurui.com/l/L1091-1999-01.html