2021年8月9日月曜日

10歳になりました。シケンジョテキ誕生10周年!

2011年8月9日にスタートしたシケンジョテキは、今日で10周年を迎えます。

記念すべき最初の写真は、この一枚でした。


シケンジョテキは、当時の山梨県富士工業技術センター(現 山梨県産業技術センター富士技術支援センター)の臨時職員だった高須賀活良さんの発案によって誕生しました。

そのとき、彼がブログを立ち上げようと思った動機は、東京から山梨に移り住んだ彼の目にはみんなにと共有したい発見がたくさんあったのに、産地の魅力を伝える情報はインターネット上にほぼ存在していなかった、ということが挙げられます。

2011年はツイッターが少し普及しはじめたくらいで、フェイスブックもインスタグラムもLINEもまだまだでした。

ネットで検索しても山梨の織物の情報はほとんど見つからず、八王子の東京造形大学テキスタイルデザイン専攻の学生たちのあいだでも、ほとんどの人が産地の存在を知らない時代でした。

シケンジョテキ最初の写真で、拡大鏡をとおさないと見えないくらいの「富士吉田」の小さな文字は、ネットで検索しても情報が何も出てこなかった山梨ハタオリ産地の当時の印象そのものです。

それから10年。

ヤマナシハタオリトラベル(2012)ハタオリマチフェスティバル(2016)ハタオリマチのハタ印(2016)などの活動やイベントが次々に誕生し、山梨ハタオリ産地から発信される情報は爆発的に増えていきました。

応援してくれる人、足を運んでくれる人、産地の中に飛び込んでくる人、さまざまな仲間も増えて、産地は以前よりにぎやかになってきました。

それでも、まだまだほとんどの人にとって織物産地は知られざる存在のままでしょう。


シケンジョテキの最初の投稿は、高須賀さんのこんなことばでスタートが宣言されました。

「すべての日本の産地、また消費者や生産者がより近くなることを目指して、シケンジョによるテキスタイル・ブログ、略してシケンジョテキ、ついにスタートします!!!!」


シケンジョテキが最初に目指していたことは、いまでも産地にとっての大きな目標。

まだまだ道の途中です。

ここで、現在は東京造形大学で教鞭をとる傍ら、ハタオリマチのハタ印のディレクターでもある高須賀活良さんから、10周年に向けて寄せてくれたコメントを紹介したいと思います。

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「シケンジョテキ10周年、おめでとうございます。

僕が担当していたのは最初の2年だけだったので、そのあとも続けてくれていることがとても嬉しいです。

シケンジョテキを始めたころを思い返すと、懐かしいですね。
それまで大学で学んでいたのは「新しいテキスタイルを作る」ことだったので、シケンジョに来るときには、「さあ、産地に来たから新しいものを作れるぞ」と意気込んでいました。

ところが、産地に来たら甲斐絹などの古いアーカイブや、昔ながらの生産の仕組みや暮らし方が残っていて、それがとても魅力的で驚かされました。「この魅力をつたえなくちゃ!」と。そして、新しいものを作るより、伝えることの方が大切だし、面白いんじゃないかと感じたことが、シケンジョテキ誕生のきっかけでした。

シケンジョは研究機関だから学術論文のような報告書を発行していますが、シケンジョという視点から得られる情報、伝えられる情報はもっと広いと感じました。シケンジョテキでは、シケンジョ的な目線でとらえた産地の魅力を、なるべく広く伝えられるように、親しみやすさにも配慮したので、そのことも長く続けられた要因じゃないかと感じます。

シケンジョでの2年間で学んだことの一つに、シケンジョは産地の企業さんにとって必要だけどできないことを先んじて担い、未来に進む道を見出すこと、という役割があります。

現在、ハタオリマチのハタ印プロジェクトのディレクターとして山梨産地に関わらせてもらいながら、そんな「シケンジョ的」な役割のイメージが記憶の中に強く残っているので、自分の中にもそういう意味でシケンジョテキがいまでも続いているような気がしています。」

(高須賀活良さん談/電話インタビューをもとに構成)


高須賀 活良 TAKASUKA Katsura |  東京造形大学助教/アーティスト  http://saibaiman.jp 

 略歴 / 1986 年東京に生まれる。東京造形大学でテキスタイルデザインを学ぶ。在学時は日本各地を旅し、その土地にある素材にインスピレーションを受け作品を制作。大学院では、モノづくりの始まりは「土」からであるというコンセプトのもと、原始布の研究をし、2011 年 修士号を取得。卒業後2年間は富士吉田に移住し山梨県富士工業技術センター(現 山梨県産業技術センターフジ技術支援センター)に勤務。現在はアーティストとして国内外で作品の発表の他、織物産地でのテキスタイルデザイン、ファクトリーブランドの立ち上げ、アートディレクターとして幅広い分野で活動中。2016 年からは 1,000 年以上続く織物産地、山梨県富士吉田・西桂の織物産地プロジェクト「ハタオリマチのハタ印」総合ディレクターに任命。


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誕生から10年、最初のころと比べてたくさんの情報発信が行われるようになり、シケンジョテキの役割も状況も変わってきたと思いますが、これからもできる限りシケンジョテキを続けていきたいと思います。

これからもどうぞよろしくお願いします!

(五十嵐)