2012年7月3日火曜日

ファイルNo.16 「昭和51年度収集 甲州織収集見本 ネクタイ No.10」

シケンジョに眠るビンテージテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョ書庫より」です。

昭和51年に集められた、郡内織物産地で生産されていたネクタイ生地を集めた織物見本帳です。
この見本帳を見ていると、まず、このような派手な柄のネクタイがあったことに驚きます。
しかしネクタイ生地を見るとき注目すべきところは柄だけではなく、使われている組織に注目して見てみるのも面白いのです。ネクタイ生地は経糸を寸間360~400(=3.78cmの間に360~400本もの経糸が張られているという意味)もの密度で織られる織物です。そのため、ただの縞の中にも複雑な組織を入れることができるので、柄に立体感が生まれ、普通の生地にはない高級感が生まれるのです。この見本帳で集められている織物生地も柄に合わせた巧みな組織が使われており、細かく見ていくと面白い生地がたくさん集められています。

それにしても、派手な柄に目が行ってしまうのは確かなこと。当時の人々はこのようなネクタイを着こなしていたのでしょうか?とても気になるところです。。














(高須賀)

2012年7月2日月曜日

丸藤葡萄酒セミナー

最近いたるところで、ブランディングという言葉をよく耳にします。
ここ郡内織物産地でも今まで受注生産しかやってこなかった機屋さんが自社ブランドを立ち上げたり、工場自体を一般に開放して工場そのものをブランディングしていく動きなど、ブランディングという言葉が活発に飛び交っています。
では、いったいブランディングとは何なのか?
シケンジョではこのブランディングという、漠然とした課題に対して産地企業さんと様々な試みをしてきました。
その一環のなかで、先日6月14日に行われたのが丸藤葡萄酒工業株式会社のワイナリーでのセミナーです。
ワインも織物と同じように、山梨の代表的な地場産業です。
ワイナリーは、織物同様に小さな規模の工場も多いですが、自社工場のブランディングという観点で動き出したのはワイン産業の方が早かったといえるでしょう。

たとえば今回訪問した
丸藤葡萄酒工業では、かつてワイン生産の下請けを主にやっていた業態から自社ブランド「ルバイヤート」を立ち上げ、下請けから自社商品の卸しメインの業種転換を果たしてから、もう数十年がたっています。
そんな山梨県産ワインのブランディングにおいてパイオニア的存在の大村さんにお話を伺おう、ということで今回のワイナリーでのセミナーが開催されたました。


まず、ワインの原料である畑へと、機屋さんたちを引き連れぶどう畑へ向かいます。
畑では、よりよいワインをお客 さんに届けるためにぶどう栽培の研究を重ねている大村さんのお話しに、皆大きく頷きながら聞いていました。土のことや、根の生え方、枝の打ち方、そしてワインづくりに かける生産者の情熱など美味しいワインの裏にあるストーリーを知ることで、ワインの世界に引き込まれていくのを感じました。










周囲には、一面のブドウ畑が続く甲州ならではの風景が広がっています。


「人の手が入っていない大自然の緑も美しいけれど、 生産する緑はもっと美しい。人の営みが見える緑の方が好きですね」


大村さんは、ブドウの若葉で緑に染まった盆地の風景を愛おしそうに眺めながら、こう続けます。


「ワインは風土の産物。風土を映しこまないといけないんですよ」


参加者は、大村さんのそんな言葉を聞きながら、それぞれの織物づくりに思いを馳せます。
ワインと同じように畑から糸を作るのはちょっと難しいです。
では織物は、何を織りこんでいけばいいのだろうか?
 
次に向かうは、ワインの生産現場!!
一年のうちに一回しか収穫することができないぶどうの実をワインにしていく作業の話を伺います。


赤ワインと白ワインの作り方の違いや、品種の違いによるワインづくりの製法の違い、あえてぶどうのカス(澱)と一緒に発酵させることで、ワインに複雑な味わいを移すシュール・リー製法の工程など、様々な経験をふまえてのお話は臨場感たっぷり。


またこの半地下の貯蔵庫では、25年前から年に1回、桃の花で勝沼や甲府盆地が覆われる季節に蔵の中のコンサート、通称「蔵コン」を開催しています。
1日で終わってしまう蔵コンの会場を作るために、蔵の中の貯蔵ボトルは1週間かけて外に移動しているそうです。
大変な作業量!
それでも来た人が喜んで帰る顔を見ることがはげみで、続けているとのことです。


大村さんは、生産現場であるワイナリーに人が来てくれることを、とても大切に考えています。
本来、良いワインを作ることだけでも精一杯の小さな工場です。
見学コース作りやコンサート開催まで準備するのは社員さんたちにも大きな負担。


「そこまでしなくても」と思わずこぼす社員の声に、大村さんは
「何を言ってるんだ、ワイナリーに来た人はすごいんだぞ!」と切り返すとのこと。
わざわざ足を運んでくれること、作り手の現場を見たいと思ってくれる気持ちが、
ブランドを支えてくれていることを、大村さんは肌で感じているからだと思います。
客員研究員の鈴木先生が、「ブランドづくりは、モノを作ることより、ファンを作ること」とつねづね口にされていることを思い起こします。

















ひととおりワインづくりの知識が頭に入ったところで、丸藤葡萄酒の歴史資料がきれいに陳列されている見学路に向かいます。


ここは大村さんがお客さんに自社ブランド「ルバイヤート」の歴史やワイン作りのことを知ってもらうために手作りで作った見学コースです。


最初は毎日の蔵の掃除から始まった話や、キレイにしようと塗ったペンキが空間と合わずに塗り直した話など、ここまでたどり着くまでの悪戦苦闘を話していただきました。




また、この見学路は何十年も使われてきた貯蔵槽を改造したものなので、壁にはワインの成分が結晶化してできる「酒石」で壁一面がキラキラと光り輝いています(上の写真) 。
またさりげなく置いてあるライトなどステンドグラスが気持ちいい空間を作り出していました。

こちらもお手製!試飲室!!
机や棚は古いワインの樽から出来ており、随所に大村さんのこだわりを感じることができます。お金をかければ素敵な空間作りはできるのですが、お金をかけずにコツコツと作っていくことで、こんなにも素晴らしいおもてなしの空間ができることに感服です。





濃密な見学を終え、いよいよセミナーが始まります。テーブルの前には先ほど見学した一連の歴史と工程を踏んで生まれてきたワインたちが並び、大村さんが順序よく出してくれます。
ワインづくりのストーリーを知った一同はワインの味に舌つづみを打ちながら、芳醇なワインの味の裏にある価値までもを感じているようでした。
セミナーでは大村さんが今の自社ブランドを立ち上げるまでに経験したことを中心に話していただきました。当時受注生産が主であったワイン業界は、今の繊維産業と同様に海外の製品が入ってくることで、大打撃を受けたこともあり、大村さん自身ももうだめかも知れないと思ったこともあったそうです。
しかし他社(海外ワイン)に負けないためにはどうすればいいか、と考えた結果、「他のワイナリーと同じことをやっても仕方がない。どうせなら誰もやったことがない『垣根栽培』にも挑戦してみよう」と思い直し、大村さんのチャレンジが始まったそうです。そして自分自身の独自路線を作ること、この土地でしかできない唯一無二のもの作りをすること、ワイナリーに来たお客さんを精一杯もてなすこと、というルバイヤートのスタイルが生まれました。
それから二十数年、ルバイヤートのワインは国産ワインコンクールでも金賞を受賞するなど、高い評価を受けるワインに成長してきました。


また、ワインづくりはその土地から離れられないので、ブランディングにはその地域の魅力をアップすることも重要です。
「土地に住んでいる人が、自分でその価値を高めるしかない。よく、『わが町の駅にも急行を停めてくれ』と陳情するような話を聞くけれど、そうじゃない。黙っていても急行が停まるようにしていくことが大事なんです」と大村さんは話してくれました。


ただ100年後に「山梨と言えば美味しいワイン!」と人々から思われるよう、コツコツと自分のワイン作りを進めることが、自社のブランドを伸ばすだけでなく、地域全体のブランディングになっていく、そんな大村さんの哲学が参加者の胸を打ちました。


今では山梨県産のワインがいろいろなレストランや食卓に並ぶようになっていますが、 このことも山梨に大村さんの様な思いを持ってワインづくりに向かった人達がいたからこそ、だったのだな、と知りました。

セミナーが終わると、われ先にとほとんどの人がワインのお土産を買って行きました。
セミナー参加者は、最初に素材の生産現場である畑を見て、次にワインの醸造現場で学び、生産者の熱い思い、そして歴史を聞くことで、そこには値段を超えた価値を感じていたことと思います。
これこそがブランディングということではないでしょうか?
ブランディングとは、いいものを作ることだけでなくく、それを伝えるためのツールをどれだけ持ち、モノを介して、人をどれだけ満足、感動させられたかなんだなと深く思いました。
ワインと織物、まったく違う商品ですが、ブランディングという面からは驚くほど共通した部分があり、たくさんのことを学べた一日でした。


(高須賀・五十嵐)

2012年6月29日金曜日

Fujiyama Textile Project 2012 スタート!!

富士吉田織物企業と東京造形大学テキスタイル学科の学生とのコラボレーション企画、「Fujiyama Textile Project」も今年で4年目を迎えます。

そして毎年この時期になると行われるのが、学生と企業のマッチングを兼ねた初顔合わせ!
期待を胸に富士吉田織物企業チームが東京造形大学にやってきました。


毎年大変お世話になっているテキスタイルデザイナーの鈴木マサル先生。 鈴木先生は以前から郡内織物産地のコーディネートやデザインの指導をしてくださっていて、そのご縁から鈴木先生が准教授として教鞭をふるう東京造形大学とのコラボレーション企画にもずっと関わっていただいています。
なお、背景にあるムーミンのイラストは鈴木先生とは全く関係ありません
鈴木先生はムーミンの公式な商品デザインで最高賞を受賞されていることをご存じの方も多いことと思いますが、このホワイトボードの絵は「断じて違う!」とのことです。くれぐれもご注意ください。


さてこちらは、織物企業のプレゼンテーションの様子。各社の業務内容や、今までのプロジェクトでどのような織物を織っているかなどを話していきます。

続いて学生から織物企業に向けてのプレゼンテーション。さまざまなアイデアが飛び交います。

投げかけられたアイデアをさっそく、織りで表現するにはどうするかと悩む、宮下織物の宮下珠樹さん。コラボレーションはさっそく始まっているようです。

こちらはプロジェクトメンバーの団長、舟久保織物と今年唯一の男性学生、岩室君とのペアー。

ヤマナシ産地ならではの洋傘での「ほぐし織」技法を使って、
男が持つ、おしゃれな傘をテーマにデザインしています。
男性用と言うことで、全てオスの生物がモチーフになっています。
どんな仕上がりになるか楽しみです。

こちらは4年目にして初の3人トリオ。
両手に花の渡小織物の渡辺太郎さん。真野さん、山根さんとネクタイを製作していきます。

ぜんぶのペアはご紹介できませんでしたが、学生と織物企業の6組のペアが誕生しました。
今年も若さあふれる東京造形大学のパワーが郡内織物産地を動かしそうな予感のする、初顔合わせでした。
8月初旬には学生たちが山梨産地を訪問し見学会も予定されています。
また動きがあり次第報告します。お楽しみに!
(高須賀)


2012年6月18日月曜日

ファイルNo.15 「明治43年 織物標本帖 No.7」

シケンジョに眠るビンテージテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョ書庫より」です。

明治43年に集められた着尺地(着物の生地)の織物見本帳です。
日本全国の着尺地が集められているので、バリエーションに富んでおり見ごたえがあります。
強撚糸(撚りの強くかかった糸)や組織
織りを使った立体的な織物が多く集められています。

とにかく、この時代の織物は手の込んだものが多く、このような織物が生活の中にあふれていたと思うと、なんだかうらやましく思いました。








(高須賀)

2012年6月14日木曜日

染色加工会社がなぜ、どのように自社ブランドを育ててきたか

シケンジョからセミナーのお知らせです!


自社ブランドmonomatopée 」等が好評な、葛飾区の染色加工会社「丸枡染色㈱」の四代目にして自社ブランド開発の中心人物、松川和広さんを招いてのセミナーを開催します。
生産工場のブランド化、情報発信の強化の必要性といった観点から丸ごとお話を伺ってしまおうという内容のセミナーですので、これから生産工場のブランド化を考えている企業さんには大注目のセミナーとなっています。

ただいま絶賛申し込み受付中なので、下記のURLからドシドシご応募の上、ご参加ください!

http://www.pref.yamanashi.jp/shinchaku/kougyo-fj/2406/entry_2.html


*日時 平成24年6月21日(木) 19:00~20:45
*場所 富士吉田商工会議所 2階大会議室
*テーマ
 『染色加工会社がなぜ、どのように自社ブランドを育ててきたか
  ~monomatopée & marumasuのブランド戦略~ 』

*講師 松川和広 氏(丸枡染色株式会社 企画開発・営業/部長)
*コーディネータ 鈴木 淳氏
 客員研究員/台東デザイナーズビレッジ村長
*共催 山梨県富士工業技術センター/富士吉田商工会議所繊維部会

*ただいま参加者募集中!お申込みはこちら↓のフォームからどうぞ。

http://www.pref.yamanashi.jp/shinchaku/kougyo-fj/2406/entry_2.html
※富士吉田商工会議所繊維部会の方は会議所までお申し込み下さい。

*参考リンク
『monomatopée(モノマトペ)』 

http://tokyo-marumasu.com/monomatopee/

『marumasu』
http://tokyo-marumasu.com/marumasu_stole.html




2012年6月12日火曜日

高級インテリア生地の株式会社アルル

高級インテリア生地を織っている「株式会社アルル」の提携工場にお邪魔してきました!!


まず工場に入って、びっくりしたのが、この経糸(タテイト)!!
なんと経糸に10色も使っている、驚きの経糸です!!


経糸が10色もあるといっても、どこがすごいのかわからない方もいると思いますので、今日は少し、経糸の作り方のお話をしようと思います。




まず、布を織るときの方法として、大きく分けて「後染め」と「先染め」の二種類があります。この二種類の方法は簡単にいうと糸の準備工程の違いで説明することができます。

一つ目の「後染め」という方法は、布を織った後に染料で色をつける方法です。この方法では通常、白い生地を大量に織ってから染色をするため、一種類の生地から沢山の生地を染め分けることができます。後染めの地となる生地を織る工程は、白い生地を効率よく生産することができるので、安価であり、なおかつ大量の生地を生産することができます。
生産性の高さから、私たちの生活の中にある布はほとんど「後染め」でできているものが多いです。


もうひとつは「先染め」という方法です。この方法では生地を織る前段階の糸に染色を施し、その糸を織機にたてます。経糸に色が付いているため、経糸を張ってしまったあとは経糸の色の生地しか織ることができないため、小ロットでの対応が難しく、自ずと生産性も悪くなってしまいます。しかし、経糸と緯糸の色を変えて織ることができたり、立体感のある柄を織り出すことができるので、高級感のある生地を作ることができます。シャンブレー生地やゴブラン織りなどはこの方法で織られたものです。



上の写真は株式会社アルルの工場の織機の経糸です。見ての通り、経糸に色がついいているので「先染め」ということになります。


このようなカラフルな経糸を巧みに操り、柄を織り出していくことで、プリント生地に負けないような色鮮やかな柄の生地を織っていきます。
織られた生地をこのブログでお見せすることはできないのですが、織りあがった生地は美しい柄と重厚感があり、宝石のような生地になっていました。

上の生地の画像は株式会社アルルで織られたものではないのですが、緻密な経糸や緯糸使いの計算をすることで、このようなカラフルかつ織物特有の立体感を持った生地を織ることができるのです。(写真:シケンジョ書庫より)



~~~~~おまけ~~~~~
こちらは経糸が切れてしまったとき感知してくれる、ピンドロッパー。
経糸が10000本あれば10000個のピンドロッパーが付いてます。


毎度おなじみ、織物の要である綾。
いつ見ても美しいです。
経糸がいつでもメチャクチャにならないのはこの綾があるおかげです。




(高須賀)

2012年6月11日月曜日

ファイルNo.14 「昭和51年度収集 甲州織収集見本 インテリア、ブロケード No.12」

シケンジョに眠るビンテージテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョ書庫より」です。

今回ご紹介するのは昭和51年に山梨県で織られたインテリア生地やブロケード生地を集めた織物見本帳。

郡内織物産地は様々な種類の生地を生産できることで有名です。マフラーやストールなどのようなものから、ネクタイ、裏地まであるのですが、ひとつこの産地の特徴をあげるとすれば、細い糸を扱うことがとてもうまい産地なのではないかと思います。ここでご紹介する見本帳でも、この産地の強みである、先染めで細い糸使いのインテリア生地やブロケード生地がたくさん集められています。







(高須賀)