2014年10月17日金曜日

オランダ、シーボルトハウスの「グンナイ」織物

オランダの西部、ライデンという町に「シーボルトハウス」という、
日本をテーマにした博物館があります。



その展示コーナーの一角に、 江戸時代後期に収集されたヤマナシ産地の織物があることを、
昨年から一年間にわたって研究留学のためにオランダに滞在していた
山梨県立大学の箕浦一哉准教授がぐうぜん発見し、教えてくれました。



上の写真の右下が、生地サンプルの展示。それを拡大したのが、下の写真です。


下の写真の左上、横書きで「グンナイジマ」と書いてあります。


下の写真では、「グンナイ」と書いてあります。




はるか日本を離れたオランダの小さな町で、 「グンナイ」、「グンナイジマ」という
片仮名の添えられた絹織物を見て
箕浦先生は目を疑うほどおどろいたといいます。


「グンナイ」以外にも、下の写真にあるような
「ヲクタンゴ」 (奥丹後)「ウヱダ」(上田)という織物産地名や…、


下の写真では「ツムギ」という言葉も。
 


シーボルトハウスは、その名のとおり
フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796-1866)が
日本に滞在した1823年から1830年の8年間に収集し、オランダに持ち帰った様々な事物を
展示しているミュージアムです。

長崎の出島に滞在したシーボルトは、
オランダ政府から医官としての派遣されたそうですが、
そのほかに「可能な限り日本についての情報を集めよ 」との特命があったとのこと。

その収集の一環として集められた絹織物のなかに、
ヤマナシ産地で織られたものがあり、今から200年近く前から
オランダに保存されていたわけです。 


上の看板には、こう書いてあります。

「染織標本

日本の絹は優れた交易品であるとシーボルトは考えた。
ヨーロッパでその関心を呼び起こそうとした彼は、
素晴らしく質の高い布見本を幾つか京都で買い求めた。
これはその中の一枚である。 」


京都で購入した「素晴らしく質の高い布見本」のなかに
「グンナイジマ」が選ばれて入っているというのは、
ヤマナシ産地として誇って良いことでしょう!


シケンジョで収集し、所蔵している甲斐絹は明治末ですので、
ここで紹介したのは、それよりもさらに70年以上も前の生地見本です。


箕浦教授によると、 江戸時代の資料を収めた博物館はたくさんあるけれど、
シーボルトハウスのように、シーボルトが日本に滞在した1823-1830年という短い期間を、
そこだけ切り取るようにして対象にした博物館は珍しいのでは、
とのことでした。


箕浦先生のことは、 シケンジョテキでも以前、
「rooms27出展!/「地場産」 山梨エリアレポート② 」
でもご紹介させていただきました。

シケンジョテキ「rooms27出展!/「地場産」 山梨エリアレポート② 」より


箕浦先生は、織物工場から出るハタの音など、生活に溶け込んだ町の音を
地域固有の『音の風景』=『サウンドスケープ』として捉えて
調査、分析する研究をされています。

そのご縁で富士吉田エリアを調査をされたこともあるので
オランダに行っても郡内織物のことがすぐ頭に浮かび、
「グンナイ」の文字を見つけて、「これは!」と気付かれたそうです。


オランダにいてもヤマナシ産地のことを気にかけていただいていたなんで
本当にありがたいことです。


しかも!
オランダからのお土産に、オランダのティルブルグにある「テキスタイルミュージアム
毎年発行しているイヤーブックをもってきてくださいました。










 
この本はシケンジョに置いて、シケンジョに集まるハタヤさんたちに見てもらいたい、
とのことでした。
シケンジョに来られたら、この本をぜひリクエストしてください。

箕浦先生、ありがとうございました!





(五十嵐)