2014年7月30日水曜日

オランダデザイントーク!

平成26年7月11日(金)、シケンジョでオランダデザイントーク、開催しました!

各地に多大な被害をもたらした台風8号の接近が心配されましたが、

当日明け方に関東を通過し、台風一過の青空の中での開催となりました。

オランダ王国大使館の報道文化担当、イネケ参事官をお招きしてのデザイントーク。
たくさんの方がデザイントークに参加しようと集まってくれました。




イネケさんのトークは全て英語。参加者のなかには英語を聞いて分かる方も多かったようですが、
オランダのデザイン大学、アイントホーヘンで学んでいて、
英語もオランダのデザイン事情もばっちりな家安客員研究員が、 
逐次通訳をしてくれました。



この日は遠方からの受講者がたくさん集まってくれました。
なんと東京から5名!甲府周辺から県庁以外でも3名!
8月のバスツアーでのゲストキュレーター、宮浦晋哉さん(右手前)も急きょかけつけてくれました。


さてここで、ちょっと長くなりますが、イネケさんのお話を抜粋して記載します。
スライドショーの画像はありませんが、リンクを貼っておくので、見てみてください。

 
■オランダデザインの背景

良いデザインというのは美しいだけでは十分ではなくて、
よく考えられていて、効率的でもあり、世界をよくするものでなければならない。

オランダデザインの背景の一つに、オランダ出身のモンドリアンがいる。
http://www.piet-mondrian.org/
写実的なイメージからスタートして、線を省略していって幾何学的な構成に至る。

ヘリット・リートフェルドのチェアもそうした一例。
http://www.gerrit-rietveld.nl/

 
■ドローグ・デザイン

オランダ語で「ドライ=乾いた」という意味を持つ。
挑発的で新しい、デザイナーを引っ張っていくムーブメントとして生まれた。

世の中で使われているもの、なじんでいるものについて、
これは何なのか、ということをもう一度ディスカッションをしようというもの。

ドローグデザインを代表するヘイス・バッカー
http://www.gijsbakker.com/home
https://www.youtube.com/watch?v=pe_BvCG044A


ヘラ・ヨンゲリウス引き出し
http://www.jongeriuslab.com/

普通イメージされるものとは全く違う、決まった形でないものを提示することで、もう一度よく知られたものを問い直す行為。
過剰な生産、過剰な浪費を批判する、布を積み重ねたソファ


moooiというデザインブランド

http://www.moooi.com/
通常はmooiで「美しい」を意味するが、oを3つ重ねることで「きれーい!」という表現になる。

マルセル・ワンダーのひもの結び目でできたKnotted chair(1996)。
http://www.marcelwanders.com/
http://www.marcelwanders.nl/products/seating/knotted-chair/

ローテクとハイテク、伝統と革新、硬さと柔らかさ、といった相反するものが一つになっている。
 
マーテン・バーススモークチェア
http://www.maartenbaas.com/
http://www.moooi.com/products/smoke-chair

スモークされた椅子。祖母が亡くなった時に残された沢山の家具からインスピレーションを受けたもの。

ヘラ・ヨンゲリウスの刺繍で縫い付けられた磁器の皿とテーブルクロス
http://www.jongeriuslab.com/work/embroidered-tablecloth
エドワード・ファン・フリート。
http://edwardvanvliet.com/
インドなどアジアにインスピレーションを得た作品。日本の鯉がパターンとして用いられている。ソファは大使館でも使われているもの。
http://www.homeportfolio.com/catalog/Product.jhtml?prodId=233846

 
■デザインと工芸のトレンド

伝統的なクラフトと、現代的なアプローチがどうミックスできるか、という方向に向かっている。
リバリュエーション、もう一度価値を与えなおすということ。速攻でお金になるものではなく、ユーザーと作品の長い関係。

アルド・バッカー。
http://www.aldobakker.com/
何度も来日して日本の影響を受けている。醤油さしのまったく新しいデザインhttp://www.dezeen.com/2009/03/23/tableware-by-aldo-bakker/
塩コショウを振る道具。普段見慣れたものとはまったく違う形の提案。


■リサイクリングとアップサイクリング
 
リサイクルはもう一度使えるようにすること、アップサイクリングは、廃材に新しい素材としての役割を与え、価値を生まれ変わらせる試み。

スタジオ・ボリス・ラプのHEATER SEAT
http://upcyclestudio.com.au/blog/dutch-design-the-upcycled-way-upcycledzine-interview/upcycle-studio-boris-lab-heater-seat/
室内のヒーティングシステムを変形したチェア「ヒーターシート」。
廃材で作ったチェスト。

ヘラ・ヨンゲリウスによる、オランダ航空のCAの使われなくなったユニフォームをアップサイクルして、ビジネスクラスのクッションカバーなどのファブリックにした例。リサイクルした後の方が高級品になっているところがオランダらしく面白い。
http://www.jongeriuslab.com/work/klm-world-business-class-cabin-interior1


■サステイナブル(持続可能な)デザイン


クリスティーン・マインデツマ
http://www.christienmeindertsma.com/
「PIG(豚)」という名の本を作った。
解体されたあとの豚の体のパーツたちが、どこに行ったのか?それを追いかけた本。
http://www.christienmeindertsma.com/index.php?/books/pig-05049/

 
■日本とオランダが出会うところ
日本とオランダは関係の深い国。歴史だけでなく、新しい出会いが起きている。
1616 / Arita Japanというプロジェクトがある。
http://1616arita.jp/
日本で最初に陶磁器が有田で作られたのが1616年。

ショルテン & バーイングスというデザイナーを招聘し、新しい「カラーポーセリン」というプロダクトを生み出した。薄い陶磁器を作る日本の技術、オランダのデザインが出会って生まれた。
http://www.scholtenbaijings.com/

 
■オランダのデザイン教育
アイントホーへン・デザイン・アカデミー
http://www.designacademy.nl/
家安香さんも学んだオランダのデザイン大学。

アーティストレジデンシー
http://www.transartists.org/airplatformnl/intro
オランダに滞在してアートを学ぶための制度も作られている。
マルセル・ワンダース
KLMビジネスクラス用のカトラリー
https://www.facebook.com/klmjapan/posts/221508864529185?stream_ref=5
サミラ・ボーによるテキスタイル。
http://www.samiraboon.com/home手を置くとそこが白くなるテキスタイル作品。(下の写真でイネケさんが手にしているもの)



さまざまなオランダデザインの側面が数々の事例と一緒に示されました。
あたりまえと思っているものを、もう一度問い直すオランダデザインの目線は、
とても刺激的に感じられました。



デザイントークの前後には、山梨のモノづくりの魅力をご紹介しようと、
織物と水晶彫刻の職人工房を訪問しました。


㈱槙田商店さん、宮下織物㈱さん、武藤㈱さんの生地を、槙田商店企画室をお借りして一緒にご紹介。






そしてこちらは武藤㈱さんの提携工場。

手足のように使いこなす愛機の前にたたずむ職人さん。




そして㈲テンジンさんへ。


…「ヒの虫」とは?

ヒ」とは、漢字で書くと「杼」のこと。産地ではふつう「シャットル」と呼ばれます。
杼=シャットル(shuttle)は、織機で緯糸を織り込むために左右に往復運動をするパーツです。
往復運動をすることから、シャトルバスや、バドミントンのシャトル、
地球と宇宙を往復する初めての宇宙船としてスペースシャトルの名前などのルーツでもあります。

「ヒの虫」とは、そのシャットルのなかにある小さなリング状の部品で、

糸の張りの強さを
調整するのに使われます。

下に写っているのが、シャットルです。






デザイントークのあと、午後は御坂峠を越えて甲府へ。

最初に訪れたのは詫間宝石彫刻



詫間康二さん。

「かっ込み技法」のようなワイルドな技と、
繊細で優美な仕上げのコントラストが格好良いです。




そして次は甲府の中心街にこの4月にオープンした「TO LABO」へ。
貴石彫刻オオヨリ大寄智彦さんのショップ兼工房です。

営業しているのは金・土・日の13:00~18:00。
職人に出会える貴重なスポットです。








TO LABOの大寄智彦さん。

この一日で、イネケさんたちオランダ王国大使館のお二人には
 織物産地とジュエリー産地、山梨の二つの面を体験していただくことができたと思います。

そしてその後は県庁に訪問してミーティング。
もしかしたら今後、山梨とオランダのあいだに別の形でのつながりができるきっかけになりそうな

機会になったと思います。



この日の夕方、甲府の空は素晴らしい夕焼けでした。

ちょっと多めにご覧いただきましょう!












(五十嵐)