2016年5月10日火曜日

『ハタオリのうたがきこえる』 ~LOOM発行記念イベントレポート~

今年3月10日、『ハタオリのうたがきこえる」と題したイベントを

甲府市にあるコミュニティスペース、「文化のるつぼ へちま」で開催しました。



このイベントは、シケンジョ発行のフリーペーパー『 LOOM 』の発刊を記念して企画したものです。

イベントの内容は、LOOMで紹介したハタヤさんや織物の道具を紹介する展示と、

織物をテーマにした
音楽会です。


織物と音楽というと、意外に思われるかもしれませんが、

織機の動く音の心地よいリズムは、音楽的といって差し支えないでしょう。

またその昔、ハタオリをする娘さんたちは「ハタオリ唄」を歌いながら機を織ったといわれていて
織物と音楽のあいだには、じつは深い縁があるのです。


とはいうものの、きっと織物と音楽というテーマで音楽会が開かれたのは、

甲府では初めてのことではないでしょうか?


演奏の始まる少し前、会場「へちま」には大勢の観客の方々が集まりました。

中には、LOOMに登場するハタヤさんの姿もちらほら。



3階の「へちまSTUDIO」で演奏が始まる前には、

LOOMの企画・編集・デザインを手掛けたBEEK DESIGNの土屋 誠さんと

シケンジョの五十嵐とでLOOMの生まれた背景などを語るトークショーを開催しました。



土屋さんのブログにも、このイベントのことがレポートされています。

ぜひご覧ください。 (この投稿での写真のうちいくつかは、そこからお借りしています)


LOOMで取材したハタヤさんの代表として、(有)渡小織物の渡辺太郎さんのトークも。













そして、いよいよ音楽会。

演奏してくれたのは、

田辺 玄さん(ギター&ボーカル)森ゆにさん(オルガン&ボーカル)のお二人です。


Photo by BEEK DESIGN
お二人は甲府在住ですが、全国規模で活躍される実力派ミュージシャン。

演奏がはじまると、会場の空気が入れ替わったように雰囲気が一変。

客席のだれもが二人の演奏に吸い込まれていきます。



アコースティックギターの音、足踏みオルガンの音。

そして森ゆにさんの透きとおるような歌声が、会場をしずかに満たしていきました。

Photo by BEEK DESIGN

田辺 玄 / Gen Tanabe(WATER WATER CAMEL)   (ギター)

Guitar . Sound design . Rec&Mix 
好きな音は遠くで聴こえる生活音。WATER WATER CAMELのひとり。
国立音楽大学音楽デザイン学科で音との色々な向き合い方を知る。2006年、自主レーベル"Gondwana label"を立ち上げる。全国各地を飛び回りながら、カフェやギャラリー、お寺や廃校、植物園やプラネタリウムなど、多様なスペースで音を響かせている。またギタリストやレコーディングエンジニアとしての活動や、CM、WEB、展示空間のサウンドデザイン等、音を媒体にさまざまな人や場とのコラボレーションを展開している。 (公式ブログ http://genwwc.blogspot.jp/ より)

Photo by BEEK DESIGN
森 ゆに / Mori, Yuni   (ボーカル、ピアノ)

山梨県在住。神奈川県出身。シンガーソングライター、ピアニスト。

クラシックや賛美歌をルーツにした弾き語りによるアルバム「夏は来る」「夜をくぐる」に続き、新作「祝いのうた」を2015年6月に発表。
(公式サイト http://moriyuni.blog94.fc2.com/ より)

Photo by BEEK DESIGN
「ハタオリのうたがきこえる」というタイトルどおり

ハタオリと音楽が出会った音楽会。

この会場で初めて演奏された、ハタオリをテーマに選ばれた曲もいくつかありました。



そのひとつは、かつてヤマナシ産地で女工さんたちが唄いながら機を織ったという

「都留のはたおり唄」をアレンジした曲。

民謡としてしられた原曲が、童謡のようにやさしい印象に生まれ変わっていました。



そして織物工場で録音されたという

シャットル織機のリズムをバックに響かせながら始まったのは、

「LOOM」と名付けられたオリジナル曲。

織機の音が、作り手の様々な想いを乗せ、長い時をこえて

人々の暮らしとともにハタオリの街に変わらず響き続けている......



胸に迫る美しい曲でした。


この曲のための録音につかわれたシャットル織機でふだん生地を織っている機屋さんも会場に。

どんな気持ちでこの曲を聴いていたのでしょうか。

Photo by BEEK DESIGN



さらに土屋 誠さん、写真家の砺波周平さんの写した

織物工場や富士吉田、西桂の街並みの映像をバックに

二人の音が即興で重ねられていきます。

即興の音楽は次第にオリジナル曲「LOOM」に戻ります。


二人の歌と演奏がふたたびメロディーを奏でてから、ハタオリのリズムでエンディングへ

シャットル織機のカッシャン、カッシャン、という音とともに
音楽会は幕をとじるのでした。




Photo by BEEK DESIGN
生演奏を聴く機会は、少なくないのですが、

胸が一杯になり、言葉が出てこない経験を、久しぶりに味わいました。



来場者の方からも、
「素晴らしいイベントだった」、「特別な夜だった」とたくさんの感動の声が寄せられました


でも、この日の歌がいちばん胸に響いていたのは、

会場のハタヤさんたちだったのではないでしょうか。





Photo by BEEK DESIGN

イベント「ハタオリのうたがきこえる」では、3月10日の音楽会の前後、

「文化のるつぼ へちま」の1FでLOOMをテーマにした織物展示も開催しました。


Photo by BEEK DESIGN



Photo by BEEK DESIGN
カセットテープには、織機の音が録音されています。

音楽会でリズムを響かせていたのと同じ織機の音を聴いてもらえるコーナーです。



Photo by BEEK DESIGN
 写真パネルは、LOOMで取材した若いハタヤさんたち。


Photo by BEEK DESIGN

Photo by BEEK DESIGN



Photo by BEEK DESIGN
Photo by BEEK DESIGN

 会場の天井には、シルクのオーガンジーと、ジャカード織機に使われる紋紙のアーチ。



 「ハタオリのうたがきこえる」。

 甲府の街に、織機の音が響いた一週間でした。




(五十嵐)