平成27年6月25日(木)、シケンジョで四月から実施していた、産地の若手研修の最終日。
研修生がお互いの仕事場を見学する相互訪問ツアーを実施しました。
ヤマナシ産地は、それぞれの工場でさまざまな品目が織られているので、
仕事上の競合やライバル関係があまり顕著ではない産地です。
それでもハタヤさん同士がお互い工場に出入りするのはタブー視された時代がありましたし、
今でも、他の工場に足を踏み入れることに抵抗を感じるハタヤさんは多いことでしょう。
今回は若手研修生の勉強ということで、それぞれのハタヤさんに工場を開放してもらい、
このツアーが実現しました。
若い後継者、職人を温かく見守っていこうという空気を、それぞれのハタヤさんで感じることができました。
最初の訪問先は、光織物(有)さん。
掛け軸の生地や、雛人形などの金襴生地を織るハタヤさんです。
笑顔がステキな、光織物(有)の加々美社長。
まるで昔話にでてくる宝物のような反物!
これらの生地は、京都の西陣産地にも「輸出」されています。
和の世界では、いったん京都に集められてから全国へ散らばっていく商品が多いとか。
これは実際に商品化されたもので、ヨーロッパで販売されているそうです。
光織物さんは、掛け軸や雛生地だけでなく、自社ブランド商品を展開しています。
東京造形大学とのコラボから生まれたブランド、「kichijitsu (きちじつ)」です。
この「おまもりぽっけ」はその看板商品。
おまもりぽっけの仕上げ工程は、この部屋で行われていました。
写真の「おまもりぽっけ」(右)は、ひもを通す穴があけられる前のもの。
縫製が終わったおまもりぽっけ達は、ここで穴あけ、ハトメ、紐通しをして完成します。
金糸にもいろいろあります。
左から、①フィルムに着色した金属を蒸着した金糸、②和紙に金色の箔を張り付けた金糸、③和紙に本金の箔を張り付けた金糸。
いずれもシート状のものを細くカットして糸にしています。
この賞状、実は織物です。
こちらは、地元の北口本宮冨士浅間神社で年に一度、火祭りのときだけに販売されるというお守り。
織機を見つめるハタ女たち。今回の技術者研修生の女性陣です。
この謎(?)の装置は、平たい箔(細いリボン状)の糸のねじれを少なくして、きれいに織り上げるための装置。
美しい織物が生まれるために、さまざまな工夫がされています。
ジャカード織機の並ぶ工場の2階。電子制御で経糸を操るジャカード機構が並んでいます。
美しく整然と並んだ経糸たち。
西桂の街を少し歩いて、工場から本社へ。
今年光織物(有)に入社した高橋さんのレンズが狙うのは生地と組織の見本。
(株)槙田商店の企画室には200年近く前からの数々の資料が並んでいます。
まるで楽譜のような、織物の設計図。
これは専門用語で「引込図(ひきこみず)」、「紋栓図(もんせんず)」という、ドビー織機での織物製造に使われる図面です。
上はおそらく、もじり織りの図面。
もじり織りは、紗、呂、などの和装生地にも使われる技法で、経糸がとなりの経糸の左右に位置を変えながら緯糸を織り込んでいきます。
この図面からは、ジャカード織りのような複雑な模様も、ドビー織機で織られていたことが分かります。
メカ好きな男子研修生が織機の仕組みのメカニズムを語り合うの図。
そして傘の組み立て工程の見学へ。
検反をしているのは、昨年の研修生だった高尾さん。
検反ではじかれたキズのある生地は、上のような傘のパーツに使われるそうです。
槙田商店のオリジナル商品を見学。
自社の商品説明をすることも研修の重要なポイントです。
このドラム式洗濯機のような機械は、タンブラー乾燥機。
上の機械は年代もののワッシャー。
上の大きなドラムは見本整経機。円周7メートルのドラムに糸を巻き付け、見本織りに使われるような比較的短い整経長の経糸を準備する機械です。
こちらは検反室。人の手で最後の仕上げをします。
説明しているのは、昨年の研修生、佐々木友美子さん。
丁寧に糸のスリップ(糸がずれて隙間が見えてしまう現象)を治して美しいストールが完成。
最後に登場したのは、武藤(株)さんの営業部長(?)のニワトリ、「オピヨ」君。
武藤さんのストールブランドのネーミング「opiyo」のもとになっているマスコットです。
4月から足掛け3か月、一緒に学んだ研修生と最後の記念写真。
これからそれぞれの会社で仕事をしていくなかでは、お互いに行き来することはほとんどないかもしれません。シケンジョの勉強会などでまた再会できる機会が生まれるといいですね!
みなさん、頑張ってください~!
(五十嵐)