2012年5月7日月曜日

山梨のワイナリー訪問:生産現場で魅力を伝えること②

山梨のワイナリー訪問第2回は、「ルバイヤート」ブランドの丸藤葡萄酒工業㈱をご紹介します。
丸藤葡萄酒工業は創業1890年。従業員数12人の小さな酒蔵です。
日本家屋をベースにした社屋は、和洋折衷、古さと新しさの入り混じったおしゃれな外観。
地元の小さなワイナリーのいい雰囲気が伝わってきます。


「それじゃまず、畑、行きましょう」と社長の大村春夫さん。ワイナリーの工場見学は、やはり畑から始まります。

案内された先は、甲府盆地を見下ろす丘の斜面にある「旧屋敷(ふるやしき)」と呼ばれるぶどう畑。
かつて住居があった場所なので、畑にその名
「旧屋敷」 がついています。

ここではフランスの白ワイン用醸造ぶどう
品種、シャルドネが植えられています。
苗の植え方、寄生虫を防ぐための接ぎ木の仕方、枝の這わせ方など、大村社長はぶどう栽培の難しさ、面白さを熱心に語ってくれます。
ワイン作りはぶどう作り、とはよく聞きますが、本当に素材の大切さが伝わってきます。


この畑では、かつてぶどう畑のオーナー制度を採用していました。
畑一列分のぶどうの木のオーナーとなって、一年間、枝の剪定から収穫までぶどうの世話をし、その後5年間、その畑のワインが届くしくみです。テキスタイルで同じような「織機のオーナー制度」なんてあったら面白いですね。


下の写真は、普通のぶどう畑で見られる棚栽培を元にしつつ、ワイン用の育て方をしようというハイブリッドな栽培方法。棚栽培と、垣根栽培の中間形態です。

「これならぶどう農家の方も抵抗なく受け入れてくれるはず」と大村さん。
もしかしたら、こんなぶどう畑が新しい甲州の風景になるかも知れません。


ワイナリーに戻ると、醸造用の設備、タンクなどを見学。その後、見学者用の通路に案内してもらいました。

壁には、丸藤葡萄酒の歴史資料がきれいに陳列されています。
写真は、「ルバイヤート」というブランド名の由来となった詩人の日夏耿之介氏からの書状の展示です。

さらに奥へ行くと熟成用の樽貯蔵庫、そしてその先には、ビンの貯蔵庫があります。
この貯蔵庫はいまはビンが積まれていますが、かつてはこの小部屋全体にワインが蓄えられた熟成槽でした。

壁にキラキラと輝く点が見えますか?
これはワインの中の酒石酸がカリウムなどと反応してできた結晶です。壁一面が照明を受けてキラキラと輝く小部屋がいくつも並んだこの回廊は、丸藤葡萄酒の隠れた人気スポットです。

丸藤では、会社に訪れたお客様のためのこうした見学施設を、ほとんど社員たち自らの手で作ったということです。
商品であるワインを手作りしているのと同じように、お客様に喜んでもらえる施設を手作りしているんですね。
こうした感覚は、日ごろから自社の商品を買ってくれているお客様と直接に相対していることから育まれたものなのかも知れません。

そして、こうした社屋のすみずみに行き渡った社員の皆さんの気持ちをお客様が肌で感じることで、よけいにファンになっていく。そんなポジティブフィードバックが生まれていることを実感しました。


そして試飲室へ。グラスが載っているのは、むかし使われた大きなワイン樽を再利用したものです。


   
テーブルの天板も、かつてのワイン樽の蓋でできています。渋い!

そして下の写真は、今年3月に開催されたワインの試飲会イベントに(プライベートで)お邪魔したときの様子です。

ワイン貯蔵庫の隣にある半地下のスペースで、10名ほどのルバイヤートファンが集まり、ぶどう畑見学&ワイン工場見学のあと、大村さんのワイントークを聞きながら秘蔵ワインを楽しみました。


この日のテイスティングツアーのために作られた手作りのパンフレットには、この場でしか味わえないワインなど数々のワインがずらり。

地産地消という言葉がありますが、それは地元の人が地元のものを消費するというだけのことでないですね。よその人がその土地で作られたものを、その土地に行って体験し、消費するということ、それも地産地消のひとつではないでしょうか。
その素晴らしさを、ものづくり産業はこんなふうに担えるんだということが感じられました。

丸藤では、毎年ファンのために「蔵コン」、ワインの貯蔵用の蔵でのコンサートを開催しています。

ブドウ畑でワインを飲み、ワイン蔵で音楽を楽しむこの蔵コンは、今年で第24回目を数えます。4月14日に行なわれた蔵コンでは、小野リサさんのコンサートが盛大に開催されたということです。

山梨では、ご紹介したルミエール、丸藤のほかにも、沢山のワイナリーがワイン作りにしのぎをけずり、またワインファンのための試飲会やコンサートなどを開催しています。ぜひ情報をチェックしてみてください!



*リンク*


  〒409-1314 山梨県甲州市勝沼町藤井780
 TEL:0553-44-0043 FAX:0553-44-0065

 山梨県によるワインのポータルサイト。山梨ワインの情報がたっぷり掲載されています。

(文:五十嵐 写真:高須賀)