2018年5月24日木曜日

第10回の「フジヤマテキスタイルプロジェクト」がスタートしました

「フジヤマテキスタイルプロジェクト」は、東京造形大学テキスタイルデザイン専攻の学生さんと
ヤマナシ産地のハタヤさんとのコラボレーションプロジェクトです。

学生さんの新しい発想をハタヤさんの力でカタチにするというこの取り組みは、
今年で10年目になります!

今年のキックオフミーティングが2018年5月17日に、東京造形大学で行われました。




この日は、プロジェクト監修の鈴木マサルさん(東京造形大学 教授/テキスタイルデザイナー)から
参加する学生さんとハタヤさんの組み合わせが発表されます。



監修の鈴木マサルさん(左)と、アドバイザーの高須賀さん(右)



まずは、参加する学生さんから
自身が制作したテキスタイルなどの作品を見せながらの自己紹介。

その後、鈴木さんからパートナーとなるハタヤさんが発表されました。

 

 
 
 
 
 
 
 
 


続いて、ハタヤさんからは
自社で製造している製品の特徴などとあわせて自己紹介です。

 

 

 




今回は9社との組み合わせでプロジェクトが行われます。


・ 鈴木龍之介さん × (有)田辺織物さん

・ 八代真帆さん × 武藤(株)さん

・ 工藤麻衣さん × WATANABE TEXTILEさん

・ 片岡美央さん × 光織物(有)さん

・ 西沙那子さん × 宮下織物(株)さん

・ 松本夏海さん × 渡辺明彦織物さん

・ 一松岳さん × (株)オヤマダさん

・ 平沢健太さん × 舟久保織物さん

・ 藤川稔也さん × (株)槙田商店さん


ミーティング後半では、
学生さんとハタヤさんとで個別に打ち合わせが行われました。


 

 
 
 
 
 

これから10月のハタオリマチフェスティバルでの作品発表を目指して、
テキスタイルや製品の開発が進められます。

今回はプロジェクトが記念となる10年目ということで、
特別な企画も動く様子。

ここからどのような作品が生み出されるでしょうか。


(鈴木)

こもれび誕生!

シケンジョ(山梨県産業技術センター富士技術支援センター)と山梨大学茅・豊浦研究室
共同研究で生まれた特許技術を用いた、(株)槙田商店による新商品、
晴雨兼用傘「こもれび」が誕生し、発売が開始されました!


今回のシケンジョテキでは、
「こもれび」につかわれたデザイン&技術の秘密について
解説したいと思います!


上の写真では、「こもれび」にジャカード織で描かれた木漏れ日(傘:左側)と、
地面に落ちるホンモノの木漏れ日(地面:右側)を比べてみました。

ご覧のように、「こもれび」のデザインは、木の葉そのものではなく、
木の葉の影がモチーフになっています。


デザイン&技術上の第1のポイントは、これがプリントではなく、
2色の色糸を使って、ジャカード織で織られた柄だということです。

このことがよくわかる例をご紹介しましょう。
下の写真をご覧ください。


見ていただきたいのは、と の違いです。
では、暗い背景のなかに、明るいグリーンが浮かび、
では、背景のグレーよりも、グリーンのほうが暗く見えています

この「こもれび」傘のデザインは、たて糸(グレー)と よこ糸(グリーン)
色の違いと、織り方の違いで表現されています。
しかしそれぞれの色の見え方は一定ではなく、
と のように変化がもたらされます。

このように見る角度の違いによって、明るさや色調が変化する性質は、
光学異方性と呼ばれます。

ジャカード織の傘では、プリントとちがって、この効果によって、織り柄に光沢や色彩が変化する美しさが加わります。

ちなみにこの効果は、異なる色に染めた糸で織られる
「先染織物」のうち、特にシルクやポリエステルなど
「長繊維」を使用した織物で顕著になります。

※長繊維…フィラメントともいう。短い繊維(数~数十センチ)を撚り合わせた綿や、麻、ウールなどの短繊維(スパン)に対して、数百~数千メートルなど長い繊維を引きそろえて作られた糸のこと。

傘をクルクルと回したとき、色がきらめくように変化する効果。

プリントでは表現できない、先染めジャカード織物ならではの美しさが
「こもれび」のデザインには活かされているのです!


デザイン&技術上の第2のポイントは、「ぼやけた柄」です。

光源である太陽は、「点」ではなく、面積をもっているため、
木の葉の影というのは、地面から離れるほど、ぼやける度合が増えていきます。
そして木の葉はいろいろな高さに生えているので、木の葉の影には、
いろいろなぼやけ方が混ざって見えることになります。

そのため、木漏れ日の影をモチーフにデザインしようとすると、
自然にぼやけさせた柄ではないと、影っぽく見えない、というわけです。

しかし!
ジャカード織でぼやけた柄というのは、
これまで再現することが困難とされてきました。

そのため、ジャカード織では輪郭のハッキリしたモチーフで
デザインされているのがふつうです。

下の写真は、輪郭のハッキリしたモチーフでデザインされた傘と、
「こもれび」傘との違いがわかるよう、並べてみたところです。


手前の美しいモノトーンの柄は、
スウェーデンの誇る伝説的なテキスタイルデザイナー、
スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg) のプリント柄を
槙田商店が得意とするジャカード織の技術で再現した傘です。
完全に白と黒、ツートーンのみで構成されたデザインです。

一方、奥にある「こもれび」は、ハッキリした輪郭線は全くなく、
グラデーションだけで構成されたデザインです。


上でも書いたように、このようなぼやけた柄は、これまでジャカード織では困難でした。


次に、なぜそれが困難だったのか、また、それをどのような技術で
実現したのか、簡単にご説明しましょう。


「こもれび」のデザイン・技術上の特徴1、2を振り返って一行でまとめると、

 ①2色の糸だけを使って、②自然なグラデーションをどう織るか?

ということが技術的な課題になります。

次の画像は、「こもれび」のデザイン画の一部です。
グレースケール画像(白~灰色~黒を256段階で表した画像)で作られています。


これを、織物の織り方をあらわす「組織図」に変換してみます。
組織図は、2色の糸が互いにどう交差するかを、
2色(たて糸が上=黒、よこ糸が上=白)で示したものです。


上の画像では、白~黒の変化を段階的に変化する織り組織の違いであらわす、
伝統的な手法「増点法」を使っています。
しかし、7段階しかないので、段差が目立ってしまい、
残念ながら自然なグラデーションになっていません。
これでは失敗です!

次の画像は、印刷などの画像処理で使われる「誤差拡散法」を使ったものです。
さっきの例に比べて、段階が自然なグラデーションになっているように見えますが、
これはどうでしょうか?


残念ながら、失敗なんです!
なぜかというと、この画像は、組織図と同じように白と黒で描かれていますが、
織り組織としての条件をまったく考慮していないので、
このまま織っても、きちんとした生地にならず、傘としては役に立ちません。

次の方法は、織り組織の段階を、7段階から49段階に、一気に増やしたものです。
これはどうでしょうか?


これも、残念ながら失敗です!
変化する織りパターンにクセがあるため、不自然な縞もようのようなものが
出てきてしまいました。
これは特に顕著な例ですが、このようなクセをなくすことは難しいのです。
これでは、きれいな木漏れ日は再現できません。

どうすれば、このクセをなくして自然なグラデーションが表現できるでしょうか?

次は最後の画像、「こもれび」で用いられた組織図です。


この方法では、先ほど紹介した「誤差拡散法」の手法を、
織り組織の変化するパターンにうまく取り入れることで、
段差もクセもない、自然なグラデーションを可能としました。
またこの処理では、ひとつ上の例で見たような、
クセを少なくする工夫もされています。
これが、シケンジョと山梨大学の研究の結果です。

この技術があって、はじめて木漏れ日の影をモチーフにした傘、
「こもれび」が誕生することができました!

「こもれび」は、2018年5月15日(火)に発売開始となり、
5月22日(火)までの1週間、八ヶ岳南麓の八ヶ岳倶楽部にて
展示販売イベントが行われました。





八ヶ岳倶楽部は、俳優の柳生博さんが標高1350mの雑木林を整備してつくった
自然散策路、ギャラリー、レストランからなる観光施設です。

「こもれび」のデザインは、このような山梨の雑木林を
散策するとき、日傘に落ちる木漏れ日のイメージから生まれました。
八ヶ岳倶楽部の木々は、まさにそのイメージにぴったりのたたずまいです。


「こもれび」のデビューの舞台となったのは、その中のギャラリーで開催される
『槇田商店 傘展』の会場でした。




「こもれび」のデザインは、ブナとカエデの2種類
配色はそれぞれ
4色あり、
ブナはライトブルー、グレー、グリーン、カーキ、
カエデはイエロー、ピンク、グリーン、オレンジ、
となっています。

「こもれび」を生み出した、シケンジョ、山梨大学、(株)槙田商店の
『産学官』ネットワークの力はもちろん、
デザインコンセプトにぴったりな八ヶ岳倶楽部という舞台を得たことも追い風になり、
展示販売会は盛況のうちに幕を閉じました。

「こもれび」は、この展示販売会以降も販売を予定していますが、
購入できる場所や時期については(株)槙田商店までお問い合わせください。

シケンジョでは、このような成果が生まれるよう、
引き続き技術研究や、商品開発のお手伝いを進めていきたいと思います。


(五十嵐)

2018年3月20日火曜日

青山スパイラルで、ヤマナシハタオリトラベルの新しい展示wedge開催!

2018年3月21日(水・祝)~3月27日(火)に、東京・青山スパイラル1階・ショウケースで、ヤマナシハタオリトラベルの新企画、exhibition「wedge」が開催されます!

「wedge(楔くさび)」と名付けられた今回の展示は、これまでのヤマナシハタオリトラベルから一歩前に進む、新しい挑戦として企画されました。


展示のディレクションを手がけるのは、昨年、一昨年のハタオリマチフェスティバルでも富士吉田のハタヤさんだけでなく全国のテキスタイルクリエイターを集めて新しい企画を次々提案していただいた、「装いの庭」の藤枝大裕さんです。

新しい挑戦を予感させるような、この素敵なイラストレーションは、富士河口湖町在住の画家、上條暁隆さんによるものです。

ヤマナシハタオリトラベルは、2012年に活動をスタートし、
自社ブランドを持つ富士吉田市・西桂町のファクトリーブランドが集まって
首都圏を中心にさまざまな場所で、産地の織物製品を紹介してきました。


当初は自社製品を作り始めたばかり、というブランドも多く、

イベント会場でお客様とハタヤさんが直接触れ合うことで
それぞれのブランドが少しずつ成長、進化してきました。


そして、ハタオリトラベルのメンバーも、東京へ出ていくイベントだけでなく、
毎月第3土曜日の「ファクトリーショップオープン」や、「ハタオリマチフェスティバル」「ハタ印」などの活動に参加し、お客様に来て楽しんでいただける開かれた産地になることをめざして取り組みをつづけています。

今回スパイラルの展示では、さらに一歩前進し、産地の織物工場だからこそできる、
未来に向けた新しいクリエイションに挑戦する新世代の作り手を中心にご紹介します!

ヤマナシハタオリトラベル exhibition「wedge」

◆会期:2018年3月21日(水・祝)~27日(火)11:00~20:00
◆会場:Showcase(Spiral 1F 港区青山5-6-23)

 sibo by 槙田商店
Watanabe Textile

TORAW

 1週間という短い期間ですが、各ハタヤさんが日替わりで売り場に立ちますので、ぜひお越しください。

そして、ちょうと同じころに、もうひとつ見逃せない展示会があります!
10月に、代官山で開催されて話題を集めた日本の各産地で活躍する若手テキスタイルデザイナーによる展示会、NINOW(ニナウ)の第2回が開催されます。
今回はヤマナシ産地から、(株)槙田商店の井上美里さんが初参加します!


NINOW -TEXTILE JAPAN IN PROGRESS- vol.2
これからの産地を担い、未来に繋げる

◆日時:3月27日(火)11:00~20:00 /プレゼンテーション14:00~15:00
    3月28日(水)11:00~17:00
◆場所:ヒルサイドテラスアネックスA
    (住所〒150-0033東京都渋谷区猿楽町29-21) 


◆参加デザイナー:5産地6企業・デザイナー(五十音順)
  穐原真奈(兵庫県 播州産地・大城戸織布)
  井上美里(山梨県 郡内産地・株式会社 槙田商店)
  小野圭耶(兵庫県 播州産地・東播染工株式会社)
  川上由綺(群馬県 桐生産地・桐生整染商事株式会社)
  小島日和(愛知県 尾州産地・terihaeru )
  斎藤慧理(滋賀県 湖東産地・株式会社 林与)
◆協賛:ミナ ペルホネン


日本全国の繊維産地が縮小していくなかで、
各産地に新しい風を吹き込み、変化をもたらす新しい担い手の存在はますます大きくなっています。
NINOW
は、産地を超えて、プロとして活躍する新しい生地の作り手たちが
テキスタイルにかける情熱と技術に触れられる
、貴重な出会いの場でもあります。
2日間という短い期間ですが、ファッションに関わる皆さんには、ぜひご覧いただきたい展示会です!!


東京でヤマナシ産地に出会える3月末、ぜひ青山&代官山へ、足を運んでみてください!


(秋本)

2018年3月8日木曜日

産学コラボ「フジヤマテキスタイルプロジェクト」第9回の成果報告展が開催されます!

2018年3月6日~8日に、六本木アクシスギャラリーにて、
ヤマナシ産地と東京造形大学テキスタイル専攻の学生によるコラボプロジェクト
「フジヤマテキスタイルプロジェクト」の成果報告展が開催されます!

東京造形大学×山梨織物メーカー

産学協同開発企画
第9回富士山テキスタイルプロジェクト成果報告展

【六本木アクシス展】
会場:アクシス ギャラリーシンポジア 東京都港区六本木5-17-1 AXISビル(B1F)


会期:2018年3月6日(火)-8日(木)
3/6(火)レセプション18:00-20:00
3/7(水) 11:00-20:00
3/8(木) 11:00-17:00

【山梨巡回展】
会場:明見入口商店ギャラリー及び hostel & salon SARUYA
   山梨県富士吉田市下吉田3-6-26

会期:2018年3月11日(日)-18日(日)
 13:00〜21:00

参加企業:舟久保織物 / (有)田辺織物 / 光織物(有) / (株)槙田商店 / 武藤(株) / 渡邊織物 / 渡辺明彦織物
参加学生:長嶋 美紀 / 鵜飼 甘菜 / 鈴木 龍之介 / 西 沙那子 / 八代 真穂 / 工藤 麻衣 / 片岡 美央 / 小野 栞
プロジェクト監修:鈴木マサル(東京造形大学 教授・テキスタイルデザイナー)

2009年にスタートし、今回で9回目となる産学コラボプロジェクトです。
今年は、産地企業7社×学生8名が参加して、
テキスタイルや製品の開発が進められています。

7月のはじめに、東京造形大学で、
学生さんと企業さんのペアが発表される顔合わせのミーティングが開催されました。
コラボレーションの組み合わせは、この日初めて発表されます。








そして、8月にはヤマナシ産地で織物づくりの工程を知る産地見学と、
プロジェクト発会式、
学生によるプレゼンテーションが開催されました。








学生さんのデザインと、ハタヤさんの技術や知恵のコラボレーションで、
毎回新しくわくわくするような作品が生まれているフジヤマテキスタイルプロジェクト。

今年もどんな作品が見られるか、とても楽しみです!


(秋本)