これまで、
新しいテキスタイル開発や
織物組織パターンに関する研究や、
各種研修等で活躍してきました。
前回の200mたて糸が無くなりそうなので、
次のビーム(別名:男巻き、おまき)の準備をしています。
ビーム作製は産地の整経(セイケイ)屋さんに頼みます。
今回のビームは
総本数11880本(たて密度157本/inch)×500mの巨大な巻物です。
巻くのは糸1本が、わずか約5.6gで500m分の長さになるポリエステルの糸たち。
富士山の麓で染色してもらった、
蛍光ホワイト、ブラック、シアン、蛍光マゼンタ、蛍光イエローに染めた糸たち*。
*高精細写真織り用画像処理テクのフルカラー織物研究用等を意識してCMYKが含まれています。
これらを以下の図のように、
図↓
ほっそーい糸達のテンションが全て均一になるように、巻物にします。
テキスタイルを作る工程はどれも気を抜けない難しい仕事です。
こちらの整経(セイケイ)もトンデモナイ神業の作業工程です。
ざっと600錘。
シケンジョの作製するビームは白黒やシアン、マゼンタ、イエローの繰り返しの縞があるのでこちらのボビンの並んだ姿もカラフルな感じになるかと思います。
600錘はひとつずつセットします。
カラフルな縞模様(例えば1本ずつシアン、マゼンタ、イエロー、シアン・・・・)であれば
それらを緑色のボビンに巻きなおして、位置の決まった場所にセットし
その通りに順番に束ねたバンド(ある幅をもったエリア)を作ります。
バンドの繰り返しで規定幅迄巻いていきます。
バンド数が増えるほど手間が増大します。
穴のある板はセラミック製。
接触する部分の抵抗を極力減らす工夫がなされています。
さらに櫛を通して。
奥の錘行列から手前側へセットして行きます。
中央の束が、いわゆる1バンドです。数センチ。
もしもこの黒の隣が違う色だと・・・・。
今までの工程を違う色で、振り出しから???再びセット?
考えただけでクラっとします。
3色の繰り返しならば先ほどのボビンを順番にセットします。
次のバンドの色が変わればセットをし直し、これらを繰り返します。
途中で糸が切れたら目立たないように、かつ丈夫に結ぶ技が必要です。
柄のチェンジのため繋ぐ作業や、途中で切れる糸を手で結ぶ作業は、
1日に大きいビームを2本巻くとして、
1000回以上行うこともあるそうです。
超重要!アヤ取り、後で織る時の命綱となるものです。
以上は、主に本生産用(500m等巨大ビーム用)。
以下は、7m~196m等の短めのビーム用の整経(セイケイ)機。
円周が7mです。
大縄跳びのように糸を回転し
例えば整経長が200mだったら
200m÷7m=28.5→29
29回転×7m=203m
で、たて方向1本×203mが完成します。
29回転を、隣にくる糸の種類や色毎に繰り返していきます。
手前にジグザグした櫛。
通常は巻物にする時に手作業で櫛を使って、テンションを整えて完成。
こちらの整経屋さんは、さらに1工程、手間が増えるにもかかわらず増やしています。
ジグザグした櫛を通して、一度巻いたビームを再び巻きなおします。
独自に取り入れているとのこと。
ナゼ?
それは、さらにテンションを均一にして、後の織り工程で織りやすくするため。
「俺たちは、ビームは最終製品だと思ってる。」
「後の機屋さんが織りやすくなることに集中して、最高のビームを仕上げる。」
兄弟で整経職人の桑原さんの言葉でした。
(整経を専門で行っている企業はかなり珍しいです。)
ビームはかなりの重量。
腕っぷしも必要です。
さらに繊細な細い糸達を長時間扱うタフなメンタルも必要です。
最近は特に。
素材もさまざまで、難しい糸(あるいはそれらの組み合わせ)が持ち込まれてきます。
これらのコンビネーションは相当複雑なものになります。
同じ素材でも、湿気の具合によって糸ばダランダランになったりします。
その調整のため、夏場でもヒーターを炊いて汗だくでの作業もあるそうです。
ビームにするためには、繰り返しというボビンに巻きとる工程で、糸の状態が良くないとだめです。
そのため、持ち込まれた糸が使えるかどうか(伸び、強度、キズ等)、その時に目利きできる必要があります。
織りやすい巻物にするには、
巻くための熟練した知識はもちろん、
素材の特性にも相当、詳しくなくてはできないと思います。
さらに、後の織り工程を想像できることも必要です。
シケンジョの作製するビーム(及び整経工程の様子)は、後日公開予定です。
(文:上垣、写真:五十嵐)