2015年6月30日火曜日

ヤマナシハタオリ産地バスツアー19JUNE2015 開催しました!

平成27年6月19日(金)に開催した、
今年度最初の「ヤマナシハタオリ産地バスツアー」のフォトレポートです。


あいにくの雨模様となってしまいましたが、
アパレルブランドデザイナー、テキスタイルプランナー、エディターなど、総勢19名の方々が
ヤマナシ産地を訪問し、テキスタイルの生産現場でハタオリ職人たちと出会い、生地をはさんで語り合う充実のツアーとなりました!

新宿を朝9時に出発したバス内では、いつものようにオフィシャルガイドブックを使ったミニレクチャーを開催。産地の概要や織機の基礎知識を学びつつ、
山梨へと向かいました。

最初の訪問先は西桂町にある、傘地と婦人服地を織る(株)槙田商店



上の写真は、傘生地を織るジャカード織機を上から見下ろしたところです。





ジャカード柄が織り上げられている現場。

1万本以上の経糸が整然と並び、そこに緯糸が1本1本織り込まれて柄を生み出していきます。

業界用語でこのカメラポジションを「織り前」といいます。





ちょうど経糸を新しい色のものに繋ぎかえる「撚り付け」工程が行われていました。

上の写真の左側にあるベージュ色の経糸に、右下に見える黒い経糸をつないでいるところです。
何時間もかけて、1万本以上の糸をつなぐ作業が行われます。


工場のあとは、企画室へ。

6代目の槇田哲也さん(写真左)がガイド役。哲也さんは婦人服地部門を担当しています。






槙田商店の所蔵する19世紀の貴重な資料はいつも大人気です。





そして職人の幡野さんによる華麗な「包丁」さばき。

この「包丁」は、革の裁断の現場で「革切り」と呼ばれているものだそうです。

「A」の形をした木型が生地に当てられ、
鋭い刃を持つ「包丁」で生地は鮮やかに裁断されていきます。


電子ジャカードの近代的な工場で織られた生地も、
傘にするには職人の手仕事が必要になります。



そして次の訪問先は、歩いて行けるくらい近所にある武藤(株)さん。




すぐ近所の機屋さんですが、作っている生地はまったく違います。

高密度なポリエステル繊維による傘地を得意とする(株)槙田商店に対し、
武藤(株)では繊細な天然素材でふわりと軽いストールを作っています。





この「波動エンジン」のような巨大な機械は、経糸の準備をするための整経機。

必要な本数、長さの経糸を直径7メートルものドラムに巻いてから、ビームと呼ばれる、いわば巨大な糸巻きボビンに巻き返します。





武藤(株)さんのシャットル・ドビー織機。

ゆっくりした速度で緯糸を織り込むことで、ふんわりとした風合いが生まれます。





富士吉田市内の食事処、「源氏」でご当地グルメの「吉田のうどん」を食べ、午後の部へ。


紳士服の裏地を織っている渡邊織物さん。 

繊細な経糸が整然と並んだ織機を操るのは、渡邊竜康さん(写真左)。

キズのない生地を生み出すためには、あらゆるトラブルを未然に防ぐ万全の気配りが必要です。









上の写真は、「オサ」という織機のパーツが窓際に立て掛けられているところ。
糸を通すための無数の細いスリットが重なり合って生まれるモアレがきれいです。



そして次は渡邊織物のすぐ隣にある、ネクタイ生地100%の(有)渡小織物へ。

ここでも西桂町の(株)槙田商店と武藤(株)のときと同様、まったく違った生地を織る工場が隣接しています。


説明しているのは渡辺太郎さん。
シケンジョテキでも紹介しているネクタイ自社ブランド「TORAW」の生みの親です。






ネクタイ生地の経糸は、あまり色のバリエーションが多くないのが普通ですが、
この時はこんなトリコロールの経糸が並んでいました。





最後に訪問したハタヤさんは、宮下織物(株)

こちらはウェディングドレス、パーティドレスなどを得意とする生地メーカーです。





宮下社長のスピーチからスタート。

宮下社長は、日本でウェディングドレスが一般的になる前の時代に、それまでの緞子からドレス地に方向転換をされました。日本でウェディングドレスに特化したハタヤさんは、宮下織物さんだけと言って良い存在です。


こちらは生地の品質を保つ為に宮下織物さんが力を尽くす、「検反」作業。
織ったあとに表・裏、整理加工のあとに表・裏と、1枚の反物で4回の検反を行います。





日本の有名なロックスター、忌野清志郎が最後に着たジャケットの生地をデザインしたのは、
この宮下織物(株)のテキスタイルデザイナー、宮下珠樹さんです。
珠樹さんは、生地のデザインから、ジャカード織機の駆動データ設計までこなします。



宮下織物さんの厖大な生地サンプル。一日中ここにいても見きれない量です。


今回のバスツアーで訪問した、以上5か所の工場では、すべてが違った品目を織っています。

 (株)槙田商店 傘地、婦人服地
 武藤(株)    ストール
 (有)渡小織物 ネクタイ
 渡邊織物    紳士服裏地
 宮下織物(株) ドレス地、バッグ地

全国でもこんな産地は珍しいのではないでしょうか?


そしてバスはシケンジョへ。

今回は「ヤマナシ産地テキスタイルエキシビション」と題し、
1時間ちょっとの時間限定のミニ展示会を開催しました。







訪問先の5社を含め、全9社が集まって生地を紹介するイベント。


産地内でもなかなか複数の織物企業の生地が一堂にそろう機会はありません。

バスツアー参加者だけでなく、地元のファッションデザイナー、テキスタイルデザイナーたちも集まってくれました。

こちらに動画もありますのでよろしければご覧ください。






奥の写真のように見える作品は、(株)槙田商店の大型ジャカード織機による写真織り。


手作り感満載の展示会でしたが、高品質な生地を持ち寄ってくれたハタヤさんと、生地に熱い視線を送る来場者の方々のおかげで、熱気あふれるテキスタイル・エキシビションが開催できたと思います。






ヤマナシ産地の入門にぴったりのこのツアー、
2011年にスタートしてから5年目を迎え、今回でトータル13回目となりました。

次回は秋に2回の開催が予定されています。

ご興味のある方には開催のご案内をお送りしますので
こちらのフォームからご連絡ください。
http://www.pref.yamanashi.jp/shinchaku/kougyo-fj/2706/entry_bustour.html


バスツアーにご参加いただいた皆様、
開催に協力してくれたハタヤさん、ありがとうございました!



(五十嵐)