2012年11月13日火曜日

ファイルNo.18「昭和51年度収集 甲州織収集見本帳 服裏地 No.2」

シケンジョに眠るビンテージテキスタイルの紹介コーナー「シケンジョ書庫より」です。

郡内織物産地は裏地の産地としても有名です。
その歴史は古く、江戸時代より平地の少ない郡内では米があまりとれずに、年貢米の代わりに絹織物を売った金銭で年貢を払う制度となっていました。
そのため、郡内の織物の品質と技術が飛躍的に上がり、そのうちに郡内で織られた絹織物は「甲斐絹」と呼ばれ、主に着物や羽織の裏地として江戸文化を中心に愛されるようになっていきました。
高い技術力を要する「甲斐絹」は今でこそ無くなってしまい、幻の手織り技術となってしまいましたが、今でもその名残は残っており、それが細番手で織りあげるネクタイや裏地の生産につながっています。
今回ご紹介するのは、昭和51年に郡内で収集された服裏地の生地見本帳です。今ではあまり見ることのないジャカード柄の入ったものや絣の技法を用いたものまで、見ていて楽しい裏地が沢山集められています。











(高須賀)

2012年11月8日木曜日

「ヤマナシ ハタオリ トラベル 産地見学バスツアー2012秋冬」開催します!

富士山のふもと、ヤマナシ織物産地で生地が生まれる現場を巡り、
織物職人と出会うモノづくり系日帰りバスツアー、

「ヤマナシ ハタオリ トラベル 産地見学バスツアー2012秋冬」を開催します!

11月28日(水)、12月14日(金)の2本立てでの開催です。



クリエイター、デザイナー、ブランド企画担当などなど、デザイン・ファッション産業で働く
プロフェッショナル限定のB to B ビジネスマッチングを主眼としています。
生地を作りたいけれど機屋さんを知らない方、注文の仕方を知りたい方、
生地作りのパートナーを探している方にオススメです!


なお、ツアー名の「ヤマナシ ハタオリ トラベル」は、平成24年9月10日~10月14日に
エキュート立川で開催された販売イベントと同名プロジェクトで、

どちらもヤマナシ産地の魅力を対外的にPRすることを主眼として展開しています。

エキュート立川では、産地から直接消費者のみなさまにテキスタイル製品をお届けする場であり、

産地の空気を感じてもらうバーチャルトラベルをコンセプトとしていました。

一方、本バスツアーは、一般の方が対象ではなく、ファッション・テキスタイル業界に

従事する方々のためのビジネスマッチングイベントとしての開催となります。


下の写真は、8月に開催した「ヤマナシ ハタオリ トラベル 夏の産地見学ツアー」の様子です。



上の写真は、昨年のツアーがきっかけでコラボによる新商品「リボニッシュタイ」が誕生した、
デザビレ入居ブランド「ネバアランド」の3人。

台東区のクリエイターによるイベント、SPEAK! EASTのときに台東デザイナーズビレッジ内の

アトリエにお邪魔したら、新しいラインナップが誕生!お披露目されていました。(写真下)

SPEAK!EAST初日に台東デザイナーズビレッジ内のアトリエでみつけた新商品。

そして、8月のバスツアーでは新たにブランド「Ventriloquist(ヴェントリロクィスト)」と渡小織物のコラボ商品、ネクタイ生地をつかった付け襟が誕生しています!
Ventriloquistの付け襟 PLUG IN でのブースにて。会場:渋谷ヒカリエ)

今回のツアーでも、新しい出会いから新商品、新ビジネスが生まれたらうれしいです!


さて、募集についてですが、当センター&台東デザイナーズビレッジの
メルマガなどによる先行予約で、じつはもう定員がほとんど埋まりつつあります。

いまのところ、11月28日は定員に達したため締め切りとなり、
12月14日の日程のみ、若干の空きがある状況です。

シケンジョテキでのお知らせが遅くなってしまい、本当に申し訳ありません!

お申込みいただいても、もしかするとお断りさせていただくことになるかもしれませんので

あらかじめご了承ください。



ツアーの詳しい情報は当センターHPまで。

申し込みフォームはこちらからお願いいたします。 (現在12月14日のみ募集中です)


また、過去のバスツアーへのリンクはこちらです。ご参考にどうぞ!

2012年8月27日 ヤマナシ ハタオリ トラベル 夏の産地見学バスツアー 


2011年11月25日(前篇) 富士山麓の織物工場でつくり手に出会うバスツアー2011


2011年11月25日(後編) 富士山麓の織物工場でつくり手に出会うバスツアー2011


2011年8月26日 都内クリエイターによる織物産地工場見学ツアー


2011年7月22日(前篇) ドリフターズ・サマースクールバスツアーin山梨 「生地をもっと知ろう」


2011年7月22日(後編 )ドリフターズ・サマースクールバスツアーin山梨 「生地をもっと知ろう」


(五十嵐)

2012年11月7日水曜日

五倍子×バナジウム:天然染料で驚きのスーパーブラック!

前回、「ポリフェノールたっぷり五倍子ハンティング
採ってきた天然(?)五倍子を乾燥させた後、ミキサーにかけました。





この媒染剤に用いる四価のバナジウム化合物である硫酸バナジルは、研究では25g単位の試薬を用いましたが20Kg単位で購入すると約1/50のコストで入手可能であることがわかっています。
注:バナジウム化合物については入手先の説明を十分に読み、取り扱いに注意してください。


事前にウールには最高でどれだけバナジウムがくっつくか調べてあります。図のgの投入量以上に濃度を上げてもこれ以上はくっつかずに無駄な排水となってしまうことがわかります。また今回、五倍子濃度を高くすると染色後の黒のクオリティを維持しながら、バナジウム使用量をcまで下げることが可能であることがわかりました。これにより、単純計算で一般的な染色にかかるコストに近くなりました。







ふじさん牧場で採取した五倍子は、市販のものと比べても遜色なく濃黒に染まりました!



  
右がふじさん牧場採取五倍子抽出液で、左が市販品五倍子抽出液による染色結果。


この図は五倍子濃度を変えたときの黒さをプロットしたものです。
一般的に縦軸の値が300以上が黒色と言われています。




ウールにくっつけるバナジウムの量について、
黒さをキープしつつどこまで少なくできるかを検討しました。
右側にいくほど媒染時のバナジウム量を多くしてあります。
染色時の五倍子濃度は一定です。
ビンに入っている液体は、奥のメスシリンダー(目盛付)の液体が、バナジウムで媒染後の
排水(元は水色の液)で、手前の液体が五倍子抽出液(一定の濃度)で反応後の排水です。
通常捨ててしまうのであまり色は見ないかもしれません。

赤線で囲った茶色と黒色の排水に注目しました!この間の染色条件には無駄なくバナジウムがウールに吸われ、余剰のバナジウムが出ないため排水が黒くならない最適な配合比率が隠されていることがわかります。
ここに、もっともコストパフォーマンスが良好なレシピがありそうです。 



溶液の化学反応!


ここまでで明らかになったもっとも効率の良い配合で
同じ濃度の鉄媒染と比較してみました。
鉄×五倍子は「お歯黒」の処方です。お歯黒は歯を虫歯から守る保護膜の役割もあったそうです。
これをみると、従来の黒と比較していかにバナジウム媒染の効果が高いかがわかります。


そして、植物染料は耐光性が弱い!のが常識です。
次の図は耐光性試験の前後における色の変色具合を示したもので、
小さいほど良い結果となります。
実は植物染料での染色物は通常、一番左端の赤い棒よりもずっとずっと大きなものになります。
つまり、すぐに光で色が変わる(分解してしまう)わけです。
それなのにバナジウム媒染を用いると、なぜか耐光性がバツグンに良いことがわかります。
「濃黒色かつ耐光性が高い」植物染料での課題を同時に解決する可能性が見つかったことになります。
****コストの試算について****
バナジウムは試薬と20kgベースでの入手価格を比べて、
約 1/50に下げられることがわかりました。
1kgの繊維を染めるのに、バナジウム代はほとんど無視できるという試算もでています。
原材料代の試算では、実用化が可能なコストだと考えていますが、そのほとんどを
五倍子の価格が占めているので、これをいかに少量にできるかにかかっています。
そのため、先ほどのもっともコストパフォーマンスが良いポイントをさらに絞るべく、細かく条件を設定して実験していく予定です。
ふじさん牧場で採取した五倍子は研究目的のため特別に無償でいただきましたが、富士山麓で天然五倍子をいかに集めるか、方法や仕組みが必要になりそうです。また、需要が増えると価値が上がってくるかもしれません。
この染色方法が実現すると、「バナジウムといえば富士山、富士山麓の五倍子」という地域のストーリー性を持たせた商品開発が現実味を帯びてくると考えています。



そして
なぜ黒くなるのか?
なぜ耐光性が高いのか?
というサイエンスとしても興味深いので
現在、さまざまな角度から検証しているところです。
解明されれば、さらにさらに少ない量で濃く発色できるようになる・・かもしれません。 

五倍子ですが、
アブラムシがまだ中にいる時(つまり9月ころ)がもっとも
ポリフェノールが豊富であるということも聞いています。
今回のふじさん牧場産五倍子、および市販の五倍子における抽出物について
総ポリフェノール量やその有効成分(没食子酸)量についても測定中です。

 

産地の方、その他の方もご興味のある方はお近くにお立ち寄りの際はぜひシケンジョにいらしてください。

 (上垣)



2012年11月6日火曜日

ポリフェノールたっぷり五倍子ハンティング


いまシケンジョではバナジウム×ポリフェノール⇒耐光性の濃黒色染色技術を研究しています。

これまで、市販の五倍子(ごばいし)で染色していましたが
地域性のあるモノ作り
(富士山麓の材料及びバナジウムを使うことで製品にストーリー性をつける)
を意識して
富士山麓の「天然五倍子」をハンティングしてきました。
場所は富士吉田市内にある「ふじさん牧場」。
ここに天然五倍子があるという目撃情報(携帯画像)を入手し、さっそく牧場オーナーに
特別に許可をもらって採取に行ってきました。





ブラックシープ(ウメェ~、ウメェ~~と鳴いていました

五倍子はヌルデというウルシ科の木にできる虫こぶ(ストレスで植物が異常発達したこぶ)で
タンニン(ポリフェノール)を60%近く含んでいます。五倍子は中国が一大産地でChinese Gallと言われています。また、同様の虫こぶで中近東のブナ等の若芽に蜂が産卵・傷つけると生じるこぶは没食子(ぼっしょくし:Gallnuts)と呼んでいます。
これらはタンニンが豊富なため、「皮なめし」にも用いられています。

シケンジョではこれまで、タンニン(ポリフェノール)の構成成分である没食子酸が、
バナジウム媒染での耐光性の高い濃黒色染色に欠かせない成分であることを明らかにしました。


ヌルデの木は早めに紅葉するため、この時期見つけやすいです。
ちなみに五倍子は抗菌・収斂・止血・解毒作用があるとされている(生薬:しょうやく)でもあります。





採取した「ふじさん牧場産の天然五倍子」


これはアブラムシが花に近い変な場所に住み着いてできたのでしょうか?変わったカタチでした。



じつは五倍子を粉砕した粉はお歯黒に用いられていました。
お歯黒はバナジウムではなく鉄と反応させた被膜で、虫歯予防としての働きがあったとのこと。
また、五倍子から精製されるタンニン酸や没食子酸は鉄と混ぜると黒くなり、Gall inkとして用いられています。
残念ながらこれらの黒い液では繊維を濃黒色にできないため、
微量のバナジウムを使った新しい化学反応を研究しているわけです。


落ちていた雨ざらしのものも拾ってきたので表面にさまざまな変色が見られましたが
染色結果は良好でしたので、次回の(五倍子×バナジウム:天然染料で驚きのスーパーブラック!)
においてご紹介します。


(上垣)


2012年11月5日月曜日

『ヤマナシ ハタオリ トラベル』 開催レポート!

9月10日から10月14日まで、期間限定のコンセプトショップ「ヤマナシ ハタオリ トラベル」がエキュート立川にて出店されました!!

この企画は「富士山のふもと、スロープロダクツに出会う旅」というコンセプトのもと、普段は生地を織っている機屋さん達が店頭に立ち、山梨のテキスタイル製品と山梨という土地の素晴らしさをお客さんに直接伝えていこうという、今までにはなかった展示販売の形として行われた企画です。
一ヵ月以上もの長期間のイベントは産地の中でも初めての試みということで、陰ながらシケンジョもお手伝いをさせていただきました。


それではその模様を写真を中心にご紹介します。

まず会場で目に入るのがこの「かせ繰り機」!!昔、実際に使われていたのもので、電源を入れると今も現役で動きます。
ヤマナシ ハタオリ トラベル初めてのお披露目はエキュート立川イベントスペース「TORICO」で行われました!!
かせ繰り機には本物のシルクの糸がかけられています。機屋さんならではの演出です。
こちらも機屋さんならではの一品「撚り付け機」です。この機械は何千本もある経糸を一本一本結び付けていく機械です。お客さんも興味深く「撚り付け機」を眺めてました。
産地で職人が使っている道具やコアな品々などを紹介するコーナー。
こちらは全景
リネンの織物を得意とするテンジンの自社ブランド「ALDIN」
丈夫で長持ちなリネンの布で作るインテリア布製品のブランドです。

実は、今回のこの「ヤマナシ ハタオリ トラベル」を立川エキュートで開催するきっかけづくりをしたのはALDINを手掛ける織り職人の小林さん。また、チームリーダーとしてメンバーをひぱっていました。
リネンの織物は洗えば洗うだけ目が詰まり、風合いが増してい行きます。また、使っていくうちに白くなっていくというのも、リネンの織物の特徴です。
商品のポップテキストは、機屋さんが直接書いているので作り手の思いが伝わります。
こちらは渡小織物の新商品「A NEW HOPE TIE」。きれいな色合いが目に飛び込んでくる商品です。ネクタイはリバーシブルになっていて、裏からちらちら見えるストライプがなんともお洒落です。
「CHO-TIE FIGHTER」


某SF映画に登場する敵の戦闘機の形が蝶ネクタイの形に似ていたからつけた名前だとか。。ユーモアと可愛さを持た蝶ネクタイです。
つけ襟にとまる「CHO-TIE FIGHTER」
光織物とテキスタイルデザイナー井上綾のコラボブランド「kichijitsu
写真は全国で続々と取扱店が増えているおまもり型の小物入れ「おまもりぽっけ」
「kichijitsu」の新作「くっつきのし」
プレゼントにくっつけて渡すと、めでたい感が3倍増しです。
ネクタイも好評でした!


この写真で写っているのは、「Olu' lu'」のメランジネクタイ。

今までに見たことのない質感と手触り。それなのにシルク100%!
一風変わったゴルフボール柄のネクタイ。
「富士桜工房」のシルクサテンのネクタイはシルク独特の上品な光沢感とネクタイ好きをうならせる極上の高級感が目を引きました。
ネクタイを織るときに使っているシルクの糸。こんなに細い糸で織られているのかと驚いてしまいます。
ネクタイ生地で作った花のコサージュ。
ストールは特に人気でした。
珍品、紗織りのストール!
高級なシルクの光沢感と紗織り独特な透け感が、今までにない風合いを作りだしています。
オーガニックコットンのパイオニア「kai’s farm
気持ちのよい生地で作られた商品が並びます。
こちらはお寺の座布団生地を織っている田辺織物の生地をリプロダクトしたブランド「NEGENTROPY」。すれに強い座布団生地を用いてデザインした、PCケースや名刺入れなどのラインナップ。

お寺の座布団生地独特のギラギラした生地は人の目を引くこと間違いなし!!商品はほとんど一点ものです。
金襴生地の反物のミミ。
舟久保織物とテキスタイルデザイナー井野若菜のコラボブランド「harefune」
ヤマナシの織物産地ならではのほぐし織りの傘がお洒落にデザインされています。
「harefune」の傘の注目ポイントは傘のミミ部分!織物のミミをそのまま使ったり、耳だけ組織織りを入れ込み、今までありそうでなかったデザインの傘として提案しています。
nidのクッキーも置いてあります!!商品の中でこちらのクッキーが一番リピーターが多かったとか?
畑から素材を作っている、Jun&Companyの手作りジャム!!とてもおいしいです!!!




以上、「ヤマナシ ハタオリ トラベル」のレポートでした。

今回の企画で行った、観光や地域性をものづくりと同時に打ち出していくという見せ方は産地としても新しい試みであり、何かこれから大きな流れへとつながっていきそうな予感を感じました。

自分たちの地域性や歴史を見直し、しっかりと意識してモノづくりをしていくことで、初めて他の産地では真似できないような打ち出しが出来ていくのではないかということ、そして、ローカルを極めることがはじめてグローバルな土俵で商品が生きていくのではないかということを、今回の企画で感じました。
モノづくりの産地としても、もっともっとヤマナシの魅力を伝えるべく、このような機会を増やしていき、お客さんとモノを介してコミュニケーションが取れていけたらよいと考えています。
シケンジョとしても、そのお手伝いを少しでもできれば幸いです。


「ヤマナシ ハタオリ トラベル」 HP
Facebook「ヤマナシ ハタオリ トラベル」

[ 出展ブランド(会社名) ]
 ALDIN (㈲テンジン
 G-style (G-style
 harefune (舟久保織物)
 Kai's Farm (㈱前田源商店
 kichijitsu (光織物㈲×井上綾)
 NEGENTROPY (㈲田辺織物
 opiyo 大飛世 (武藤㈱)
 渡小織物
 富士桜工房 (山崎織物㈱)
 'Olu'Olu (㈲羽田忠織物)


(高須賀)