毎年恒例、シケンジョで年度初めに開催している研修「技術者研修『織物基礎及び設計』」が終了しました。
参加したのは、宮下織物(株)、光織物(有)、富士桜工房(山崎織物(株))、OULO、装いの庭、で働く6人の研修生。
職場だけでは学べない、織物の全体像を理解してもらうためのカリキュラムです。
14日間×2時間、使ったパワーポイントは600ページという、膨大な研修内容をダイジェストでお送りします。
一日分ごとに、より詳しく学べるシケンジョテキの過去のアーカイブへのリンクを貼りますので、内容を詳しく見たい方はぜひそちらもご覧ください。
DAY1
*織物とは/織機の歴史/織機の原理/織物の設計要素/産地の概略
*スパンとフィラメント/糸をほどいてスパンかどうか確認
【オンライン織物基礎研修 ①】機屋さんのテキスタイルデザイン
【オンライン織物基礎研修 ②】スパンとフィラメント
織物とは何か?人類の歴史をひもときながら、最後にはみんなで糸をひもといて、スパンかフィラメントかを調べました。その違いを知らなかった、という研修生が多数。
*単糸と双糸/インターレース
*顕微鏡で生地を観察
【オンライン織物基礎研修 ③】単糸/双糸、撚糸、インターレース糸
研修は基本的に座学の勉強ですが、なるべく体を使って体験できるように試みました。
原始的な織機、腰機(こしばた)体験では、織機に張られた経糸の張力を整えることがとても重要であることや、手織りの大変さを実感してもらうことが狙いです。
スパン/フィラメントに加えて、単糸と双糸についても学び、糸についての解像度がだんだん高くなっていきました。
DAY3
*撚り / S撚・Z撚 / 上撚・下撚 / 強撚・甘撚
*模型で撚りを体験する/検撚器実習
*経と緯/密度/鯨寸と曲寸/筬羽/〇羽〇本入れ
スパン/フィラメント、単糸/双糸の次は、撚りのS・Z、上・下、強・甘の違い。
三日目ですが、まだまだ糸の勉強が続きます。
ちなみに研修で体験した実験を収録したバックナンバー「「撚糸」のひみつ」は、シケンジョテキで最高の閲覧回数を誇る人気コンテンツです。
DAY4
*繊度/番手/恒重式と恒長式/デニールの測り方
*密度と番手を調べる実習
【オンライン織物基礎研修 ⑤】糸の太さ ~ 繊度と番手 ~
4日目は糸の番手。まだ糸の勉強は長く続きます。
そして密度と番手の測り方を学び、だんだん織物に近づいてきました。
*染色/素材と染料/染色実習
*品質検査/各種測定機器の見学
5日目は講師陣が変わり、染色と品質検査について学びました。
各自の染色体験を染色機にかける時間を活用して各種測定機器を見学し、濃厚な一日に。
DAY6
六日目は産地の歴史から現在を学び、100年前のルーツ甲斐絹を見学する日。
富士吉田市役所の富士山課からもゲスト聴講に来てくれました。
日頃は一般公開していない甲斐絹サンプルをじっくり観察し、産地のルーツを感じてもらいました。
*染色/かせ染色とチーズ染色
【オンライン織物基礎研修 ⑥】糸の太さ ~ 絹の「中と片」~
糸の勉強のラストは、絹糸の番手に使われる「中」と「片」。山梨が養蚕王国だった時代のことも勉強しました。
整経、染色の職人を紹介するビデオ映像も鑑賞。部分整経と見本整経の違い、かせ染色とチーズ染色の違いを学びました。
*組織を顕微鏡で観察する実習
ついに織物組織に入りました。
あらかじめ渡してあった生地サンプルセットを使い、生地に触ったり顕微鏡をみたりしながら、組織の違いとその役割を学びました。
*織物組織/繻子織の組織図の描き方/飛び数
*組織を顕微鏡で観察する実習
三原組織のラスボス、繻子織について学び、そのあとは簡単な組織で複雑な柄を出す工夫として、色糸と組織の組み合わせによる表現について、方眼紙で塗りつぶしながら実習しました。
織物組織の役割を考えると、三原組織の違いよりも、むしろ重いか軽いか、大きいか小さいかが重要と思えることが多いです。
*紋栓図と引込図
*ジャカードとは
さまざまな組織の実例をとおして、ドビー織機でいかに複雑な表現をするか、という先人の工夫を学びました。
*多丁杼のジャカード
*ジャカード織物の設計実習
【オンライン織物基礎研修 ⑪】ジャカードという名の劇場
これまで学んだ組織の知識を生かして、最後の仕上げはジャカード織物の仕組みとその目的について学びました。
ジャカード織物は、部分ごと(場面ごと)に主役・脇役になる糸(役者)や、その見え方(演じ方)が変わり、それを設計することは、芝居の脚本を書くことに似ている、という観点から、「ジャカード織物とは、糸が織りなす劇場である」という自作の格言を披露しました。
研修の最後の日は、恒例の相互会社見学。
織物企業が自社で直営し、他社のファクトリーブランドも含めて販売するという、産地と消費者の貴重な出会いの場になっています。
図案と組織の境界レベルの微細なところまで、手作業できれいにしていく現場を拝見しました。