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2013年12月24日火曜日

甲斐絹ミュージアムより #9  「この松竹梅がスゴイ!」

冬の吉祥文様の代表、松竹梅シリーズ、第2弾です。

この松竹梅がスゴイ!と題して、とっておきの2点をご紹介しましょう。


[1] E013 絵甲斐絹 『松竹梅』


甲斐絹ミュージアム E013 絵甲斐絹
西暦 1914 年[ 大正 3 年] 北都留郡上野原 製作者: 佐藤林之助
http://www.pref.yamanashi.jp/kaiki/kaiki_museum/kaiki-sample/e/e013.htm
 



松皮菱、竹の輪、梅花、の3種が描かれた絵甲斐絹です。

これまで見たものと同じように、絵甲斐絹では
具象的なところと、抽象的な描きかたが
不思議なハーモニーで入り混じっていますが、

今回も「なんだこれ?」と思ってしまうような図案です。


では、この不思議な図案を読み取ってみましょう。

黒々とした巨大な松皮菱を背景に、梅が咲いている様子は、
おそらく梅の花が咲いた山の風景

そして、その背後にある竹の輪は、
ズバリ、山の背後から昇る朝日!




竹の輪=太陽   松皮菱=山    梅花=山の梅の木


つまり松竹梅の意匠を使いながら、

風景画を同時に描いているわけです。

こういうダブルミーニング、いかにも洒落た、江戸っぽいセンスですね。
ほかの甲斐絹でもよく見られる、常套手段です。



しかし腑に落ちないのが、画面の下半分↑。

上半分を風景画だとすると、下はいったい何なんでしょうか??

それでは、画面を180度回転してみましょう。

竹の輪=満月   松皮菱=夜の山    梅花=夜の梅の木


すると、上の写真にあるように
こんどは松竹梅をつかって描かれている風景は、
まさしく夜の山の風景です!

梅もモノトーンになっていて、
松皮菱も、輪郭だけがうっすら見えています。

そして竹の輪は、こんどは山からのぼる満月に!

この作品は、松竹梅の意匠をつかって朝と夜の風景を一度に描く
という豊かな発想も素晴らしいですが、

上下どちらの向きでも使うこともあり得る裏地ならではの意匠、
という意味でも特筆すべきものではないでしょうか?

この松竹梅はスゴイ!







[2] 甲斐絹ミュージアム E088 絵甲斐絹 『松竹梅』
甲斐絹ミュージアム E088 絵甲斐絹西暦 1914 年[ 大正 3 年] 南都留郡 製作者: 志村作太郎
http://www.pref.yamanashi.jp/kaiki/kaiki_museum/kaiki-sample/e/e123.htm



この2枚目も、モチーフは松竹梅です。

梅花は、分かりますね。

は、梅の後ろに敷き詰められている松葉に気が付けばわかります。

では、
竹はどこにあるでしょうか??


…この竹には、
僕も長いあいだ気づかずにいました。


もう見つけられましたか?


答えはここです!










 











90度回転すると、見えてきました!

なんと、竹の節だけ(~)を絵甲斐絹の技法で描き、

竹の本体は縞柄で描いていたのです!  ( ̄0 ̄;)..オオ!!





絵甲斐絹の技を知り尽くした意匠ですね。



この竹、細かくみると非常に芸が細かいです。

節の部分の輪郭は、なんと少しだけ膨らんだリアルな形になっています。
恐るべし、甲斐絹…。

この松竹梅もスゴイ。


「この松竹梅がスゴイ」シリーズ、

これを大賞に選びたいと思います!!


(そういうシリーズではなかったのですが、年末なのでなんとなく…)


では次回の甲斐絹も、お楽しみに!




(五十嵐)