文科省のサイエンスパートナシッププログラム(平成25年度)
において地元の吉田高校の企画:富士山の地下水に含まれるバナジウムとこれを利用した新しい染色技術の体験学習が採択され、実験や講義の外部講師として参加してきました。
第1回:場所 吉田高校(富士吉田市)
1週間前の土曜日に、山梨県環境科学研究所の長谷川博士(薬学)による利き水講座を行いました。
バナジウム含有天然水を題材とし、人間の生活に欠かすことのできない身近なものを選択して生徒の興味・関心を引き出す工夫をしています。
とりあえず、カンパイ。
ですよね。
残留塩素や総硬度等の成分分析結果と照らし合わせ、官能試験による予測との違い等について考察したようです。
第2回午前:場所 シケンジョ(吉田高校のお隣)
この写真は後に織物データになります。
シケンジョ講堂で、バナジウムを発色補助剤に利用した黒系の染色技術及び染色物の色の測定・評価方法、さらに自動車の塗装評価や肌の解析等への応用について説明。
また、面白いかと思ったのでシケンジョ職員(山梨県職員の研究職)や全国の公設試等の機関のお仕事及び就職などについてもちょっと触れさせてもらいました。
カメラ目線にすぐ応えてくれる、ってふだんあまりないのでうれしい反応ですね。
講義のあとは、いよいよ実験です。
予め用意してあった、各自の名前入りビーカに、微量バナジウム処理の有及び無のシルクを入れて、発色用染料となるポリフェノール液を3種類のうち好きなものを選んでもらいました。
なかには3種混ぜてみるとどうなるか?と考えてミックスした生徒もいました。
約80℃くらいになってくると徐々に黒くなってきます。
発色する瞬間という現象をじかに見れるところが、染色機をただ見るのとは異なり面白いかもしれません。
放射熱を測るガンタイプの温度計。
ホットプレート上のビーカ内溶液等の温度をリアルタイムで見るためのもので、予想通り多くの生徒さんが興味をもって手にとっていました。
アイツの体温、高い!とか。
発色後のシルクサンプルをすすぎ、乾燥させます。
全員のサンプルが、ポリフェノールの調合具合や温度、水の量等によって黒系統でも染まり具合が異なる結果を得ることができるため、この後のグループ毎のバラツキや黒さの程度差に関する考察材料にもなることと思います。
一度に30名近くは実験ができないので半分に分かれて、待機しているグループは素材燃焼当てクイズ等をしてもらいました。
「アッチー!」
「クッセー」←シルクやウール等タンパク質繊維は髪の毛を燃やした時の臭いがします。
「ライターどうやって使うのでしょうか?」
等、にぎやかに言葉が飛び交います。
シケンジョにも、「素材の鑑別」という依頼試験があります。
繊維素材の鑑別は通常まず、燃やした感触で大別します。
髪の毛が燃えるような臭いや燃え方:シルク、ウール
⇒顕微鏡で観察してスケール(ウロコ模様)があればウール
紙が燃える臭い:セルロース系繊維例えば綿、レーヨン、キュプラ
⇒側面に筋があればレーヨン、ツルツルならキュプラ、ツイスト形状なら綿
プラスチックのような臭いや燃え方 :化学繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、アセテート等)
⇒多くの種類の薬品を使って、それらへの溶解性から判別
といった試験です。
この道の熟練者では、一瞬燃えた残り香から、複数種の混ざった糸1本中に含まれる素材で2,3種類をだいたい嗅ぎわけるようなスゴイ人もシケンジョにいらっしゃいます。
極微量バナジウム(0.01%)のくっついていた方のシルクだけが発色しました。
ビーカには赤いマジックで
A:特濃ボッショクシ酸
B:ボッショクシ酸
C:ゴバイシ
A、B、AB混合、ABC混合などと自分のチョイスした染料タイプを記載してもらいました。
集団検診方式で、順番に各自のサンプルの染色後の色について数値化していきました。
日本電色工業㈱の測色計:SD-6000
これらの数値を使って、午後は高校理科室へ移動し、大学や社会人になってからほぼ必須のエクセルやパワーポイントの使い方、グラフの作製、班ごとの発表用スライド作りを行いました。
集合写真を撮影した直後にシケンジョ特許技術使用の
早業で高精細ジャカードデータを作製しておき・・・・・
サプライズ!
特徴は特有のデコボコ感と緻密さなので「触ってみたい」という意見がでてよかったです。
第2回午後:場所 吉田高校理科室 へ移動しました。
最終日に、今回の講義と体験を通じてバナジウムに関すること等についてまとめ、班ごと発表し、サイエンティストとして討議し、修正を実施したものを提出して修了となります。
染色をテーマにした内容や。
色の話。
利き水や水の話、についてまとめる班など、さまざまです。
自分たちの顔写真をとってナレーション風にしているスライドもあって面白かったです。
シケンジョの発表でも技として応用してみようと思いました。
講師のわたしたちはウロウロしながら、ソフト操作を教えたり、
絡んだり?!しながら、リラックスできました。
モニターでは表を作るノウハウをそっと示したりもしながら・・・・。
シケンジョでの体験学習も生徒さんが独自に練り上げたオリジナルストーリーに仕立てられているはずです。
「君たちは来週はサイエンティストになるんだよ、サイエンティストはどんどんディスカッションで攻撃(口撃)していいんだ、でも遺恨は残さないのがサイエンティストだ」長谷川博士
まとめの発表では、生徒自身が考えた課題の解決方法等が出され、他者との考えを比較し互いにディスカッションすることになろうかと思います。
高校生のエネルギッシュな勢いも新鮮でしたし、サイエンスは楽しいものだと思えました。
もちろんシケンジョはサイエンスにはまるだけでなく、それらを活かして工業製品への利用や各種試験、支援に一役買っていくために頑張らねば、とも思いました。
アンケートを実施したところ
パワーポイントによる発表とディスカッションが好評でした。
まさに本プログラムの目的であった、各自が実験を通して考えた結果を伝えることに相当すると思います。また、燃焼試験による素材判定にも興味を持った生徒さんもいらっしゃいましたし、染色技術をもっとつっこんで学びたくなったという意見や、水に興味をもったという意見もいただきました。
あと、工場でのインパクトが大きかったようです。
(上垣)