「サテン」 という言葉を知っていますか?
ジャズのスタンダードナンバー『サテン・ドール』では、
着飾った魅力的な女性のことを ”サテン・ドール” とうたっています。
この歌のように、贅沢で華やかで美しい、というイメージがサテンにはあります。
今回のシケンジョテキでは、サテンの美しさ、特に光沢のひみつに迫りたいと思います。
サテンを知っている方は、きっとこんな光沢のある生地を
思い浮かべるのではないでしょうか。
サテンというのは、織物の織り方のひとつで、
高級なウェディングドレスではシルクのサテンがよく使われます。
思い浮かべるのではないでしょうか。
サテンというのは、織物の織り方のひとつで、
高級なウェディングドレスではシルクのサテンがよく使われます。
上の写真も、ヤマナシ産地(宮下織物(株)さん)で作られた、シルクのサテンです。
ではまずサテンとは何か、まとめてみましょう。
サテンの基本
基本的な3つの組織、平織、綾織、繻子織のうちの一つです。
上図の右側にある、描かれた方眼紙に「■」を並べて描いた図は、織物組織を表すもので、組織図と呼ばれます。
組織図では、経糸と緯糸の交点で、経糸が上なら「■」、緯糸が上なら「□」で表されます。
上の図で5×5マスの□で示したような、繰り返しパターンの一番小さな単位のことを
完全組織と呼び、ふつう織物組織は、完全組織で描かれます。
光沢のひみつ
なぜサテンの生地は、光沢があるのでしょうか?
まず、綾織と繻子織の組織図を比べてみましょう。
どちらも、経糸「■」と緯糸「□」の比率が、1:7 の同じ比率になっている組織です。
経糸「■」の面積比率は、綾織と繻子織、どちらも全く同じです。
次に、それを実際に織ってみた写真をご覧ください。
織った結果、黒い経糸と、青い緯糸の見え方の比率は、どうなっているでしょうか?
上の綾織では、黒い経糸のナナメの線(////)がハッキリ見えていますが、
繻子織では、黒い経糸は、青い緯糸の陰にかくれて少ししか見えていない!のが分かりますか?
黒い経糸が、青い緯糸にかくされて見えなくなる傾向は、
緯糸の密度が高ければ高いほど、はっきりと現れ、
織物組織のなかでも、経糸の比率が低い(=完全組織のサイズが大きい)ほど、
経糸は隠される傾向が強くなります。
下の写真は、経糸:緯糸が1:15の、綾織と繻子織を比べたものです。
繻子織では、経糸がほとんど見えなくなってしまいました!
ほぼ青い緯糸だけが見えている状態になっています。
組織図と、製織後のイメージを比べて見ると、こんな感じです。
製織後の写真にあるように、繻子織の場合、
組織図中の■が、ふくらんだ緯糸に隠されて、見えづらくなっています。
これは、綾織の場合とちがって経糸の見えている組織図中の「■」が、
互いに隣接していない構造になっているところと、
緯糸が途中で膨らんでいることにポイントがあります。
さて、このようにほとんど緯糸だけが見えているということは、
どういう見た目の効果に結び付くのでしょうか?
それはズバリ、緯糸だけということは、
横方向の繊維だけがきれいに揃って見えているということです。
言いかえると、織られる前の緯糸の姿に近いということです。
(もちろん、裏側から見ると経糸だけの繊維が目立つことになります)
(もちろん、裏側から見ると経糸だけの繊維が目立つことになります)
織物工場で織機にかけられた経糸を見た経験のある人は、
こう思ったことがあるかも知れません。
「織る前の糸の光沢は、織ったあとよりもむしろキレイなんじゃないか?」、と。
「織る前の糸の光沢は、織ったあとよりもむしろキレイなんじゃないか?」、と。
※イメージ映像 上の写真は、今回織った織機とは別の写真です。
※イメージ映像 上の写真は、濡れ巻き整経で使われる経糸のかたまり、「経玉」です。
できれば織らずに身にまといたいくらい、美しい糸の光沢。
その美しい光沢を、織ったあとでも最もキレイに再現するための織り方が、繻子織です。
濡れ巻きのこと
濡れ巻きは、染色後に経糸を湿らせたまま、手作業で乾かしながら整経する技法で、
サテンの輝きが増すと言われており、その効果はシケンジョの研究からも実証されています。
濡れ巻について知りたい方は、下のリンク先をご覧ください。
・濡れ巻サテンの輝き
また、サテンは織り方だけでなく、
繻子織で織られた生地、とくに絹の生地をさして、
布の種類を表す言葉として使われることもあります。
satin と sateen
satin [sˈætn] サテン、サトゥン
sateen [sætíːn] サティーン
satin と sateenは、どちらも繻子織で作られた生地をさしますが、
特に satin は、シルクやポリエステルなど、光沢のある糸で作ったものをさし、
sateen は、綿など、光沢のないスパン糸で作ったものをさすそうです。
サテンの光沢のひみつ、いかがでしたでしょうか。
サテンのひみつシリーズ、次回は、様々なサテンの種類についてお話しします。
それでは、また。
(五十嵐)