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2014年6月29日日曜日

オランダ・デザイントーク in ヤマナシ

7月11日(金)、シケンジョにてオランダ王国大使館のイネケ参事官をお招きし、
オランダのデザインについてのデザイントークイベントを開催することになりました!

きっかけになったのは、オランダ出身アーティスト、メルヴィン・モティ氏の
森美術館での展示「MAMプロジェクト021: メルヴィン・モティ」展」に合わせ開催された
オランダ王国大使館でのアーティストトーク。

オランダのデザイン専門の大学、DAE(アーントホーフェン・デザインアカデミー)で
学んだことのある家安客員研究員からのお誘いで、

ヤマナシ産地関係者もお招きいただいたことが始まりでした。

トークショーのあとのレセプションで、
オランダ王国大使館の報道文化担当のイネケ参事官とお話し、
山梨のモノづくりに大変興味を持っていただき、今回の来県のお話しにつながった次第です。


コンセプチュアルで斬新なアプローチから
世界のデザイン界をけん引する存在であるダッチデザイン。
山梨ではなかなか体験できないイベントになりそうです。

興味のある方、織物業界にかぎらず、ぜひご参加ください。


詳しくはこちら(シケンジョHP)


では、そのキッカケとなったアーティストトークが開催された6月12日の夕方、
神谷町の一角にあるオランダ王国大使館へおじゃましたときの写真をご紹介します。

夕闇せまるオランダ王国大使館の玄関。
きちんと手入れされた濃い緑の庭園に囲まれています。

伝統的な家具と、現代のダッチデザインが共存している館内。

古風で荘厳な館内に、モダンデザインが溶け込んでいるのが
本当に格好良くきまっています!



カワイイ……?

グランドピアノと漆の組み合わせ。




そして、モティさんのアーティストトーク会場へ。


さすが、大使館。国際色豊かです。

こちらがオランダ王国大使館のイネケさん。

メルヴィン・モティさんのアーティストトーク。
自らのインスピレーションの源である「空間」や「時間」、「距離」とその関係性について、
様々なアーティストの作品を紐解きながらの解説が行われました。


終了後のレセプション。バルコニーで歓談する各国の来場者たち。
海外の小説の一節を思わせる、ステキな夜会でした。




建物を出ると、そこには東京タワー。
「日本へ帰ってきた!」という感じです。


東京にいながらにしてオランダの文化、ダッチデザインに触れることのできた一夜でした。

これをぜひ山梨でも体験したい!ということで開催するデザイントークイベント。
参加無料です。お待ちしています!



デザイントークイベント「オランダの社会・文化におけるデザイン、アートの役割について」

 ・日時/
平成26年7月11日(金) 13:15-14:45 

 ・会場/富士工業技術センター 2階講堂
 

 ・テーマ /「オランダの社会・文化におけるデザイン、アートの役割について」
 

 ・スピーカー/イネケ・ファン・デ・ポル氏(Ms. Ineke van de Pol)
         (オランダ王国大使館 報道・文化部 参事官 )
 

 ・通訳&司会/家安 香 客員研究員/Edelkoort East 株式会社代表取締役。


[参加申し込み・問い合わせ先]  
 富士工業技術センター 繊維部技術支援科 五十嵐、秋本
 TEL.0555-22-2101  FAX.0555-23-6671  kougyo-fj@pref.yamanashi.lg.jp




(五十嵐)

2014年6月23日月曜日

「持ち歩くテキスタイル」 鈴木マサル傘展 in 倉敷

5月27日(火)-6月8日(日)、倉敷の林源十郎商店で開催されていた
「鈴木マサル傘展」へ行ってきました!(幸運なことに、出張先のすぐそばでちょうど開催中でした)

鈴木マサルさんは、いまや日本を代表するテキスタイルデザイナーの一人。

ヤマナシ産地との縁は深く、ハタヤさんたちからも絶大な信頼を得るスーパーデザイナーです。


この「鈴木マサル傘展」、青山スパイラルガーデンでの展示が好評で、
さまざまなメディアに取り上げられていましたが、
 現在は、青山→高知→倉敷→富山→山口と、全国を巡回中です。

シケンジョテキでは、そんなわけで運よく訪問できた、

倉敷会場での様子をご紹介いたします。



倉敷美観地区の中にある林源十郎商店
生活デザインミュージアム倉敷 “ミュージアムショップ”と”ミュージアムカフェ”。
展示中の商品もさることながら、内装や什器もすばらしいです。





青山での展示と同じように、鈴木マサルさんデザインのテキスタイルが
カフェのテーブルクロスとして使われています。贅沢!


色とりどりのテキスタイルに彩られた空間。手前はカフェ、奥はショップになっています。



全面にほどこされた図案は、職人の手刺繍によるもの。ためいきが出ます。



この羊柄は、お持ち帰りさせていただきました。

旅先で傘を買うと、どんなに晴れていても必然的に「持ち歩くテキスタイル」に…。

いろんな所へ羊を連れて歩きました。

 

さて、その鈴木マサルさんが監修する、
ヤマナシ産地と東京造形大学生によるコラボ事業、
「FUJIYAMA TEXTILE PROJECT」
今日はその第1回のミーティングがシケンジョで行われ、
とうとう6年目の今年も、いよいよプロジェクトが始まろうとしています。


これまでいくつものコラボ商品が生まれたり

ヤマナシ産地に移住するテキスタイルデザイナーが続出したりと、
さまざまな足跡をのこしてきたこのプロジェクト。


今年はいったい、どんな出会いが生まれるのでしょうか?

乞うご期待!


情報はシケンジョテキでもお送りしますが、
こちら(東京造形大学テキスタイル専攻公式ブログ)や、
こちら(FUJIYAMA TEXTILE PROJECT フェイスブック)でも
ぜひご覧ください。







(五十嵐)

2014年6月19日木曜日

滑脱抵抗力(カツダツテイコウリョク)試験とは

これまでに開発した、銀染ginzome糸を使った布

TATAMIテキスタイル」を使って、縫い目カツダツテイコウリョク(滑脱抵抗力)試験について、一部ご紹介いたします。

縫い合わせます。

縫い目は写真の通り

5~15kgfの力で引っ張ります。

製品用途によって、荷重は異なります。

縫い目付近がビリビリっと。

顕微鏡で観察。

写真は片側だけですが、縫い目について縫い糸と次の糸とのピッチを0.1mm単位で測定します。

荷重設定や製品用途にもよりますが、両側の合計で3mmや5mmの基準値以内をクリアした製品は、袖口等の縫い目強さが確認されたことになります。

(上垣)

塩素処理水を作製

染色した繊維の色がプールに含まれるレベルの塩素水に対して色落ちしないかどうか調べる
「塩素処理水に対する堅ろう度試験」の依頼試験がきました。
 
シケンジョにおけるJIS依頼試験は様々なものがあります。ひとつひとつの試験には薬液調整や繊維の前処理も必要です。
 
塩素試験の場合は、まず濃度10 mg/Lの塩素処理水を作ります。
 

ツルクロン(漂白剤)に含まれる有効塩素を滴定(3回)によって確定します。
塩素はとびやすいので、冷蔵庫に保管されていたツルクロンの現在の濃度を調べるためです。

色が変わった瞬間。

計算によるとツルクロンの有効塩素は8%でした。

ここから、希釈を繰り返して10 mg/Lの濃度に調整したものを、染色堅ろう度試験で用います。

(上垣)

混用率試験のための準備

微量の麻が混紡されている場合は、硫酸で麻を溶解させます。

その後、「絶乾重量:カラカラに乾燥したときの重さ」を測定し、「公定水分率:素材ごとに定められている」を掛け合わせて、組成を百分率で出します。

この百分率の結果が、製品のタグなどについている表示等に用いられています。

麻等のセルロース系繊維を溶解するための硫酸作製。

モノスゴク熱くなるため、水にちょっとずつ硫酸を入れていきます。

氷水で冷やしながら、保護手袋&メガネ着用でなかなか時間のかかる作業です。 


織物はたて方向、よこ方向さらには種類ごとにバラバラにしておきます(写真は色目等について画像処理ソフトで変更してあります。イメージ写真)。

セルロース系繊維の混紡されている糸は、別途先ほどの硫酸でよーく溶かして、1%アンモニア水等で中和・洗浄し、再びカラカラに乾燥させます。

製品の組成表示に用いる試験であるため、夏物向け製品は、春ごろから夏前の時期に、この試験が多い傾向にあります。

(上垣)

ポリエステル&麻素材(混紡)糸の断面出し  

シケンジョに持ち込まれる依頼試験。

最近、試験の一覧表をUPしましたが、設計部分を除いた消費性能に関する項目でもかなり多種類あります。

このなかで、習熟度が相当必要となるレベルのものがいくつかあり、今日はなかでも高レベルな「混用率試験」、の前処理である素材鑑定に関する部分でご紹介いたします。

次の写真は、糸数本の断面写真です。


1本の中に例えば5%程度の異素材が入っているとします。

写真の場合は青く染色されたポリエステル麻(白い中空あり)が混紡された糸です。

例えば、0.002gの糸ですと、麻は0.0001g、このように極微量なためフーリエ変換型赤外分光 (FT-IR) のような機器分析にかけても、おそらく「麻」と判別することは非常に困難です。

FT-IRや質量分析装置等では、綿やキュプラといった麻同様に植物のセルロース成分由来の信号を検出限界ギリギリのところで捉えられるかどうか、というきわどい分析になると思われます。

ゆえに、微小領域での断面・側面観察と各種薬品への溶解性から職人が判断することになります。

写真にあった、麻をまず見つける技が必要で、発見したら、「硫酸」で溶かし、極微量の麻の減量分を考慮して、数回行う評量誤差を1%以内に抑えるという、集中力を必要とする試験です。

0.55mmの穴に糸が数本、詰まっています。
両面をカミソリでカットするのですが、大抵の場合、裏面をカットするときに抜けてしまってやり直しになります。
シケンジョには断面出し(やり方はこちら)のプロが2名います。


両面カットしたい理由は、下からの透過光で観察するためです。

これにより、1枚目のような綺麗な写真が撮影可能となります。

反射で観察すると。

このように、見えにくいです。

これらの、素材鑑定の後、「混用率試験」を行います。

糸1本中に混じる素材の重量まで算出するため、今日のように、まずは何が潜んでいるのか、「発見」してから、溶解性の相性を判断して、どの素材をどの薬品で溶かすか考えていきます。
 
 (上垣)

2014年6月13日金曜日

山梨の桃農園が開発しているハナモモ染色シルクストール

今年も桃のシーズンがきています。

昨年度、山梨の桃農園さん×甲府の食品系研究キカン×シケンジョによるコラボから
通常、色がつきにくい花弁色素での桃色染色に成功しました。
ハナモモ抽出液で染色:2013年6月19日」

今日は、こちらの桃農園:農業生産法人マルサフルーツ古屋農園さんから

「甲斐絹の商品を購入して、シルクのストールを染めてみたらかなりいい桃色にできました」
という連絡をいただきました。


こちらがハナモモ抽出液を使ったシルクストール。

従来は、剪定枝等を使ってなんとか茶っぽい色がだせるところですが。

花弁色素でシルク素材を、ここまで濃く染めているところが、スゴイところです。

しかも、昨年までは、アクリル素材しか着色しませんでした。

他にも、さまざまな草木染めを試されていました。
タマネギとか。

マルサフルーツ古屋農園のフルヤさんと果樹未利用素材の活用に関する研究を実施した食品系研究員(甲府市にある山梨県工業技術センター)。

このお二人が食品系のコラボ研究を進めるうちに、最終的に廃棄する真っ赤な色素抽出液を染色へ使えるのでは、というアイデアが産まれたそうです。


 
Tシャツの型染めも。


クッキングスタジオが併設されていて、さまざまなイベントも行われています。

管理栄養士さんらが教える体験型カフェ。ランチもやっているとのこと。

体験は県外からも問い合わせが多く、それぞれがだいたい20名までで実施しているそうです。

 近くの畑で収穫して。

スイートポテトにしたり。

ツルでリースにしたり。








敷地奥のほうでは、大雪で壊れたハウス(柿を干す等に使うそうです)を組み立てていました。

この写真のようにシーズンにはあんぽ柿でいっぱいに。

柿を干していない時は、イベント会場になるそうです。




体験型イベントで作ったという桃カレーの写真。

**********草木染めに戻ります*********


 ハナモモ染色はクエン酸で抽出するところが、ポイントです。

草木染めで、ここまでのピンクはなかなか出せません。











中田さんも応援してくれています。







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ハナモモの色素は原材料の販売提供が可能で、抽出方法も確立されています。

山梨の桃農園×ハタヤさんのコラボにつながればと期待しています。

国道沿いの直販店に、桃のコンポート等と一緒にハナモモ染色ストールが、桃狩りの時期に並ぶ様子を想像しました。

地場産品の研究開発は面白いです。

染色の処方箋はシケンジョにもデータがそろっております。

ご興味のある方はコチラかシケンジョまで。

(上垣)