最近、試験の一覧表をUPしましたが、設計部分を除いた消費性能に関する項目でもかなり多種類あります。
このなかで、習熟度が相当必要となるレベルのものがいくつかあり、今日はなかでも高レベルな「混用率試験」、の前処理である素材鑑定に関する部分でご紹介いたします。
次の写真は、糸数本の断面写真です。
1本の中に例えば5%程度の異素材が入っているとします。
写真の場合は青く染色されたポリエステルに麻(白い中空あり)が混紡された糸です。
例えば、0.002gの糸ですと、麻は0.0001g、このように極微量なため、フーリエ変換型赤外分光 (FT-IR) のような機器分析にかけても、おそらく「麻」と判別することは非常に困難です。
FT-IRや質量分析装置等では、綿やキュプラといった麻同様に植物のセルロース成分由来の信号を検出限界ギリギリのところで捉えられるかどうか、というきわどい分析になると思われます。
ゆえに、微小領域での断面・側面観察と各種薬品への溶解性から職人が判断することになります。
写真にあった、麻をまず見つける技が必要で、発見したら、「硫酸」で溶かし、極微量の麻の減量分を考慮して、数回行う評量誤差を1%以内に抑えるという、集中力を必要とする試験です。
0.55mmの穴に糸が数本、詰まっています。
両面をカミソリでカットするのですが、大抵の場合、裏面をカットするときに抜けてしまってやり直しになります。
シケンジョには断面出し(やり方はこちら)のプロが2名います。
両面カットしたい理由は、下からの透過光で観察するためです。
これにより、1枚目のような綺麗な写真が撮影可能となります。
反射で観察すると。
このように、見えにくいです。
これらの、素材鑑定の後、「混用率試験」を行います。
糸1本中に混じる素材の重量まで算出するため、今日のように、まずは何が潜んでいるのか、「発見」してから、溶解性の相性を判断して、どの素材をどの薬品で溶かすか考えていきます。
(上垣)