微量金属(銀orバナジウム)を使った染色研究を担当しているUです。
今回は、国内でも希少な技術である紗(しゃ)織りを用いたヤマナシ産地の最新商品等を通じて紗織りの魅力をお伝えしたいと思います。
まずはこちら、先日の伊勢丹新宿本店「日本の手しごと展」(2013 4/3-4/8)でも大好評のストール(再掲載)。
黒い糸がたて糸で、紗織り技術により黒い糸がカッチリとよこ糸を絡んでいます。
最高の透け感です。
先染め(糸段階で染色)+紗織り+後プリント(伊勢型紙)のなんとも豪華な組み合せです。
しかも色域の境界がとてもシャープです。高い塗布技術に加えて、染料粘度を調合する技術力の高さがうかがえます。
モアレが見えます。これは紗織りにより非常に規則正しく並んだ糸がヨレルことなく並んでいることで、生地が重なった時、光の干渉が起きていることを示します。通常の織り方ではなかなか見ることができない現象です。
お問い合わせはこちら。
次は紗織りの仲間であるフレスコ織り。
ネクタイ業界では絡み織りをフレスコ、和装業界では紗と呼ぶそうです。
バナジウムを新たな発色補助剤(繊維重量の約0.1%付着)として使い、天然染料ゴバイシ(繊維重量の50%使用)で耐光性の高い濃黒色を実現したシルクを用意しました。
このシルクで紗織りストールにしていただきました(マクロレンズで再撮影)。
紗織りは強制的にたて糸をよこにずらす特殊な機構が必要です。
通常の織機はたて糸は上がるか下がるかの動きをします。
密度の薄い透け感のある織物は、例えば平織りなどで作ると簡単に糸がずれてメヨリを生じてしまいます。(シケンジョテキスタイル研修で用いる資料より)
そこで、通常の織機でも擬紗(ギシャ)あるいは模紗(モシャ)という(紗っぽい織物を作る)組織があり、このパターンで織ると3本ずつ糸が交差することで比較的透け感のあるものが作れますが・・・。
ツルツルした糸で、さらに目を粗くして透け感を求めることは難しく(写真のようにずれてしまう)、やはり最高の透け感、かつ丈夫に作るとなると、特殊な紗織り機構が必須になってくると思います。
(麻や綿等のスパン糸を使った擬紗の生地等は糸同士が強く絡み、涼しげで夏の商材としても人気が高いものもあります。)
(上垣)