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2020年4月24日金曜日

【オンライン織物基礎研修 ④】タテとヨコの違い

織物の基本となる考え方を学ぶシリーズ、第4回。

今回のテーマは、経糸緯糸の違いです。

タテとヨコには、どんな違いがあるのでしょうか?

ではさっそく問題です!


【課題1】


下のA・Bの方法で、どちらも全く同一の布が織れる場合、

あなたは経営者として、A・Bどちらの方法を採用しますか?

では、経糸と緯糸の太さ・密度が完全に逆転しています。

出来上がった布を、90度回転すれば、まったく見分けがつかなくなるという前提です。

「経営者として」という言葉は、「生産性」がポイントですよ、というヒントです。



【答】

お分かりいただけたでしょうか?

そう、生産性に敏感な経営者のあなたが選ぶべきなのは、だんぜんです。
仮に120本/分の速度の織機でこの図の本数を織った場合、

所要時間は〔30本/15秒〕 vs 〔8本/4秒〕でBが圧倒的勝利!


織機というのは、あらかじめ用意しておいた経糸に、緯糸を1本ずつ織り込む機械です。

どのくらい早くたくさん緯糸を織り込めるかが、生産性を左右します。

だから、同じものが織れるのなら、緯糸が少なくてすむ方が良いわけです。


それでは、次の問題です。


【課題2】


A「タテとヨコが同じ」と、B「タテ=細・密、ヨコ=太・疎という

異なる条件で織られた2種類の布があります。

結果的に同じような品質・外観・風合いが得られるので、

どちらの方法で作ってもOK、とお客さんからもお墨付きです。

作るとしたら、あなたは、どちらの布を選びますか?


【答】




この場合も、もし問題なく同じようなものが織れるなら、

早くできる分、の方が経営者にとって魅力的です。


ということは、問題がなければ、織物はなるべくなら

「タテ=細・密、ヨコ=太・疎」

という設計にしたくなるような、

経済的な原理が働いている、ということができます。

(もちろん、これに従わない例外もあります)



それでは実際の生地(たまたま手元にあった6種類の生地)の写真で、

[タテ=細・密、ヨコ=太・疎]の事例を見てみましょう。

数字のあいだの不等号の色は、[タテ=細・密、ヨコ=太・疎]

従っているものを朱色、従わないものを水色で示しました。

この原則に従っているケースが、大多数であることがわかると思います。


[ タテは双糸、ヨコは単糸が多いワケ? ]


ここで、上の写真のA、B、Cの繊度を見てください。

注目してもらいたいのは、下の写真でピンク色で示した部分です。


「20/2」のような書き方は、その糸が「双糸」であることを示しています。

こうしてみると、たまたま手元にあった6種類の布では、

双糸経糸だけ使われ緯糸すべて単糸でできています。

それは、なぜでしょうか?

みなさんも、考えてみてください。

【課題3】


双糸が経糸に多く、緯糸は単糸が多いのはなぜ?


ヒントは、前回の「単糸/双糸、撚糸、インターレース糸」で紹介した

ストレートロングさん、三つ編みさんの違いです。


前回の「単糸/双糸、撚糸、インターレース糸」を理解してくれた方は、

織機の仕組みをまだ知らなかったとしても、

単糸と双糸を使い分ける理由はわかると思います。


【答】

双糸が経糸に多く使われるその理由は、経糸には丈夫さが求められるからです。

それはなぜか?下の図をご覧ください。

経糸は、織機の上にセットされてから織られるまで、

いくつもの試練を耐え抜く必要があります。

緯糸は、織られるときの一瞬、力がかかるだけです。


こうした製造時の制約から、一般的に

経糸には、緯糸よりも丈夫な糸が用いられます。


そして、その違いが、織物の上の役割分担にも反映されることが多いのです。

下の写真のようなネクタイ生地では、経糸と緯糸のどちらもシルク糸ですが、

かなりハッキリと役割が分かれています。

ネクタイにシルクの光沢を与え、鮮やかな色を演出しているのは、

もっぱら緯糸の役割です。経糸は、ほとんど脇役に徹しています。


中島みゆきさんの「糸」という歌では、

経糸が、比較的頑丈な男性の役割として歌われているのは、

ある意味、現実に即しているといえるでしょう。


今回の内容を覚えておけば、布の切れ端を調べたとき、

どちらが経糸か?というのも、ほとんどの場合に分かります。

シケンジョの顕微鏡を使えば一目瞭然ですので、

お近くの方はぜひご活用ください。

(予約は不要ですが、受付で所定の手続きをしたあとで、繊維技術部の職員をお呼びください)



今回は、2018年のバックナンバー「タテの糸とヨコの糸」との

姉妹編のような内容です。

今回の内容よりも、少し難解なところもありますが、

よろしければご覧ください。

それでは、また!


(五十嵐)