ページ

2015年10月28日水曜日

ヤマナシハタオリ産地バスツアー23OCT2015 開催しました!

2015年10月23日(金)、通算14回目となる『ヤマナシハタオリ産地バスツアー23OCT2015』を開催しました!

今回のテーマは『Textile★マニアック』

紗織り(しゃおり)金襴ほぐし織りニードルパンチ加工、という4つの技術にスポットライトを当て、それぞれを得意とするハタヤさんをめぐるツアーです。




マニアックの名に恥じぬよう、恒例のガイドブックもマッチング効果を高める工夫として、
今回初めて生地サンプルを貼り付け、バージョンアップしています



このガイドブックの束をぶら下げて朝の新宿西口で参加者を迎え、
バスの中ではガイドブックを使って織物の基礎知識を学ぶ入門講座を開催しました。


新宿西口を出発して90分、まず最初に訪れたのは、北口本宮冨士浅間神社


北口本宮冨士浅間神社へやってきた理由のひとつは、ここが染色や精練にも使われる富士山の湧水の清らかさを、肌で感じられる場所だからです。




名水で知られる神社の手水場で富士山の湧水に触れる参加者のみなさん。

まだ紅葉がはじまったばかりの、しっとりとした緑の中を歩いてゆきます。





吉田の火祭り』で使われる富士山型のお神輿、『御山神輿(おやまみこし)』。

吉田の火祭りは『鎮火祭』とも呼ばれ、富士山の噴火を鎮める祭りです。
富士山を模したこの神輿をかついでねり歩くときの、担ぎ手の持ち方を解説しているところです。



かつて、富士山信仰の信者たちがこの神社で身を清めてから富士登山をしたように、
今回のバスツアーも冨士浅間神社でお参りしてからのスタートです。


最初の訪問先は、(有)羽田忠織物


Textile★マニアックシリーズの第一弾は、「紗織」
「糸が少ない」と書く「紗」の文字があらわすように、糸がまばらに見えるような透け感のある薄い生地が紗です。特殊な織機により、薄いけれどユルくはなく、しっかりした張りのある生地が生まれます。




紗織りを活かした透け感のあるネクタイなど、シルク100%のオリジナルネクタイの自社ブランド「HADACHU ORIMONO」を発信する、羽田正二さんにお話しを伺います。




羽田さんのセンスが凝縮されたこの空間、この夏にできたばかりの新しいアトリエです。






スポーティでカジュアルなセンスが魅力のHADACHU ORIMONO。
現代的な自社ブランドを支えるのが、古来からの伝統的な
「紗織り」の技術です。

そして「紗織り」の技術を目の当たりにするため、近くの提携工場へ向かいます。











「紗織り」については、シケンジョテキのバックナンバー「透け感最高、紗織の魅力」もぜひご覧ください。


下の写真は紗織りの拡大図。

対になった白い経糸2本が、赤い緯糸を挟み込むように左右によじれながら織られているのが分かりますか?




下の写真では、黒い糸が経糸(画面では横向き)、青&緑が緯糸です。





紗織りの織機が普通の織機とちがうのは、経糸を上下だけでなく、左右に動かす「半綜絖(はんそうこう)」があることです。

ただでさえ複雑なジャカード織機が、半綜絖が加わったことで、さらに複雑さを増しています。
織物に詳しい人にとっても理解しがたいような織機なので、織機を見るのは初めてという方には、
紗織りの織機のメカニズムかなり難度が高いはず。

そんな難しい織機なのに、
なんとバスツアー史上初、参加者のみなさん織機を動かす体験をさせてもらいました!
(ボタンを押すだけですが…)






伝統とモダンが融合した生地や製品を作り続ける工場で、自社ブランドへの想い、伝統の紗織りを伝えていく使命感を語ってくれた羽田さんでした。





















そして、昼食は恒例の”吉田のうどん”、「源氏うどん」へ。


コシのある硬い麺が特徴の吉田うどん。
かつて織物工場のまかない食としても使われ、織物との縁もあります。
手前に写っているのは、馬肉とかき揚げが入った「肉天うどん 並」(450円)。





午後の最初の訪問先は、今回バスツアーで初めて訪問する、
光織物(有)です。

雛人形のキモノに使われる「雛生地」など和雑貨のための金襴や、掛け軸の生地を作っている会社です。


やってきたのは、古くから織物工場が密集する向原(むかいばら)地区にある工場。
ここは光織物の生地を織っている「賃機(ちんばた)」さんです。
工場といっても、住宅街の中にあり民家の離れにしか見えません。



「金糸」が織り込まれてキラキラと輝く豪華な金襴が織られているとは思いもよらないような、ふつうの家の敷地にある工場です





金糸と色とりどりの糸がジャカード織機で美しい絵柄を織りなしていく瞬間です。

上下の写真では、裏を上にして織る「裏織り」で織られていて、生地の裏側が見えています。



下の写真は、緯糸を送り出す装置です。虹のように多彩な糸がならんでいます。




できた生地を表から見ると、上の写真のような豪華絢爛な図柄が浮かび上がります。


下の写真は、金糸を織り込むための「留め糸」。
髪の毛よりもずっと細いので、まるで霧か霞のようにかすんで見えます。






下の写真は、織機のパーツで「棒刀(ぼうとう)」と呼ばれる部分。
並んだ木の板は「棒刀」と呼ばれ、ジャカード織機のしくみにドビー織機の動きを組み合わせる機能があります。

無地などの平坦な地の部分は、ジャカードでも織れますが、棒刀をつかってドビー織機のように織った方が美しく仕上がるのだそうです。





光織物の後継者、加々美琢也さんの説明で、織機の上の方にあるジャカード機構を見上げる参加者のみなさん。






今年から光織物に入った新人、高橋佑佳さんも、織機の上の方を解説中です。







高橋さんは、東京造形大学学生と産地のコラボ事業、富士山テキスタイルプロジェクトに2年間参加し、2年目のパートナーとして光織物とコラボをした経験の持ち主。
卒業後、そのままヤマナシに移住して就職することとなりました。
下は、2014年の発会式の風景。


 


下の写真の、下の方に移っているピンクブルー金色の生地をご覧ください。



これは光織物の自社ブランド『kichijitsu』の商品、「おまもりぽっけ」の生地です。

高橋佑佳さんの先輩にあたるデザイナー、井上 綾さんと光織物のコラボから生まれたブランド『kichijitsu』は、金襴の技術を生かしてポップなセンスの商品を世に送り出しています。






光織物の金襴は、こんなスニーカーにも使われています。





下の写真で二人が持っているのは、お土産にもらった生地の耳。
「捨て耳」と呼ばれ、廃棄されてしまうものですが、糸がキレイなので見学者にはいつも人気です。

耳については、こちらのバックナンバー「耳の世界」をどうぞ。



次の訪問先は、ほぐし織りの舟久保織物。



ほぐし織りは、経糸に柄をプリントしてから織る技法。
柄をプリントする前に粗く「仮織り」しなくてはならず、「本織り」と併せて2回も織らなければならない、複雑な工程が必要です。

下の写真は、そのほぐし織りの良さを活かしてテキスタイルデザイナー井野若菜さんがデザインした舟久保織物のブランド『harefune』の商品。



最初に訪問したのは、「つけ場」と呼ばれる、捺染(なっせん)の工場です。

写真では分かりづらいですが、長い板の上に、仮織りされた経糸が広げられていて、
その経糸を職人さんがシルクスクリーンの型で染めているところです。





機械式でなく、手で捺染するこうした手法を「手捺染(てなっせん)」、「ハンドプリント」などと呼びます。何十メートルもある長い経糸に、デザインによっては何版も色を重ねて手捺染していくのは大変な労力と技術が求められます。









そして、できあがった経糸で生地を織る舟久保織物の織物工場へ。




下の写真は、織機の斜め後ろから見たところ。
織られる直前の経糸に、黄色い柄が付いているのが分かりますか。





その経糸が織られて生地になっていく瞬間を目の当たりにする参加者のみなさん。



上の写真は、仮織りの緯糸を抜き取っているところ。
参加者全員がこの作業を体験させてもらいました。
数千本の経糸のあいだに挟まれた緯糸を抜き取る感触は、なんともいえませんでした。






そして、次の訪問先は、山梨県織物整理(株)

生地の仕上げ加工をするだけでなく、生地に風合いや機能を与える加工も織物整理工場の仕事です。ここではヤマナシ産地で唯一、ニードルパンチ加工を行っています。





工場の中に入ると、ここまでで訪問した3軒の家庭的な工場と違って、「THE 工場!」という感じの重厚なたたずまいです。




渡辺明宏社長から、ニードルパンチのレクチャーを受ける参加者のみなさん。









ニードルパンチ加工については、シケンジョテキのバックナンバー「ニードルパンチ加工」、イギリスのバース スパ大学がヤマナシ織物産地にやってきた!をご覧ください。


上下の写真が、ニードルパンチ加工機の中心部。

何千本も並んだ針が上下に往復する下を、生地が通っていきます。
針が生地を貫くとき、針の一本一本についた微小な棘(バーブ)が繊維を引っ掛けて動くので、
繊維同士が絡まります。2枚の生地を重ねて加工すると、繊維同士が絡み合って合体し、一枚の生地になります。







そして、最後の訪問先は、同時開催のミニ展示会、『ヤマナシ産地テキスタイルエキシビションVol.2』の会場、コミュニティカフェLittle Robotと、ホステルhostel and salon SARUYA

どちらも、古くからの商店街の空き家を改装して、今年の夏に生まれた施設です。


上の写真はSARUYAのエントランス。
富士吉田の中心街にあるこのホステルは、海外からのバックパッカーやアーティストなどをはじめとするバラエティに富んだ宿泊者だけでなく、宿泊客以外の人々もふらりと気軽に立ち寄れるオープンな雰囲気が魅力です。
街を新陳代謝する宿として「街の玄関」を目指すこのホステル。これからヤマナシ産地に通うことになるかもしれないバスツアー参加者のみなさんをお連れするにはピッタリと思い、展示会場として使わせてもらいました。

下の写真は、Little Robotの入り口です。
こちらはSARUYAと隣接するカフェ、イベントスペースとして、毎日のように様々な集まりに利用されている施設。こちらは、展示会場と、そのあとの情報交換会の会場として利用させてもらいました。






『ヤマナシ産地テキスタイルエキシビションVol.2』 のこと。

このミニ展示会は、バスツアー参加者のための商談の場として、今年から本格的に企画して開催しています。

特に今回は、初めてシケンジョの外、富士吉田の街の中での開催に挑戦しました。

かつて織物産業が全盛期のころ、富士吉田のこの界隈は「絹屋町」と呼ばれるエリアがあり、
月に2回開かれる「市(織物市)」では買い付け商人がたくさん訪れ、それは賑わったということです。

その後、時代が下って現代。
ひところの賑わいが失せて久しいこの商店街は、いわゆるシャッター通りとなり、人通りもまばらなエリアになってしまいました。

しかしここ数年、県外の若者たちが街の活性化のために、空き家を改装してコミュニティースペースやシェアハウスを作るなど、新しい動きが出てきています。
そんな中、ホステル「SARUYA」、コミュニティカフェ「Little Robot」が相次いでこの夏にオープン。

『ヤマナシ産地テキスタイルエキシビションVol.2』 は会場をシケンジョからこの2つの新しいスポットに移し、かつての賑わいの中心だった「織物市」を、ひそかに復活するという願いをこめて開催することにしたのでした。


こうした趣旨に賛同してくれたハタヤさんたち12社が集まり、
数十年ぶりの「織物市」が開かれました。


参加してくれた企業さんは次のとおりです。ご協力ありがとうございました!


 (有)羽田忠織物  ★訪問先
 光織物(有)  ★訪問先
 舟久保織物  ★訪問先
 山梨県織物整理(株)  ★訪問先
 (株)アルル
 (株)エルトップ
 (有)田辺織物
 (有)テンジン
 富士新幸(株)

 (株)槙田商店
 山崎織物(株)
 渡邊織物


そしてこちら、会場の様子です。


バスツアー参加者だけでなく、市内に住むデザイナー、布が好きな方、たまたま通りかかった方、SARUYAに泊まっている海外の方など、たくさんの方が訪問してくれました。


何より驚いたのは、昨年のバスツアーでゲストキュレーターを務めてくれた宮浦晋哉さんが、デザイナーさんを連れて顔を出してくれたことです。
お聞きすると、山梨に来る用事があり、日程をこの日にぶつけてくれたそうです。主催者としてうれしいかぎりです!


そんな賑わいを見せたエキシビションの様子を写真でお届けします。























展示会のあとは、山梨県絹人繊織物工業組合主催による情報交換会が開催されました。 




最後に記念撮影。
このなかから将来、きっと何組かのビジネスパートナーシップが生まれてくることでしょう!





バスツアー参加者のみなさま、関係者のみなさま、ありがとうございました!


次回のバスツアー、
『ヤマナシハタオリ産地バスツアー20 NOV 2015』は11月20日(金)に開催。テーマは『服地PLUS』。

次回は服地に特化しつつ、それだけではないヤマナシ産地の個性あふれるハタヤさんを訪問します。


参加者はまだ募集中です!ご希望の方はどうぞこちらの応募フォームからよろしくお願いします!




(五十嵐)