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2014年7月29日火曜日

(株)エルトップさんのヤマナシ産地見学ツアー

平成26年7月2日、株式会社エルトップ主催のヤマナシ産地の見学ツアーに参加させていただきました。

エルトップさんは、「LOISIR®」(ロアジール:豊かな時間、余暇)というブランド名で
裏地などの企画・生産・販売を行う東京の企業。

ヤマナシ産地のハタヤさんとの密接な関係づくりを長く続けてこられた、
産地になくてはならない取引先のひとつです。
「産地見学ツアー」と書きましたが、より正確にいうと
エルトップさんの取引先にあたるアパレルブランドの方々を対象とした、
産地で裏地の生産現場を見て学ぶ研修会です。

正式には「
12回 富士吉田産地 ベンベルグ先染織物研修会」。
なんと今回は12回目。
そう、エルトップさんでは、こうしたツアーをもう10回以上も開催されているのです。
産地のハタヤさんとの信頼関係が根付いているからこその、
また東京から日帰りできる地の利を生かした、この素晴らしい企画の模様をレポートします。



紺色のジャケットの方が、(株)エルトップの小林達司社長。
社長自らバスにのって産地をコンシェルジュします。

最初に訪れたのは
「撚糸屋」さん。



上の写真はキュプラの原糸です。

ちなみに、研修会のタイトルにあった「ベンベルグ」とは、旭化成が生産するキュプラ糸の商標です。


このキラキラと光るキュプラの糸は、化学繊維ではなく、れっきとした天然素材でできています。
原料はコットンからとれる
コットンリンターという短い繊維。
キュプラは、これを再生してフィラメント(長い繊維)に生まれ変わらせた、
再生繊維」に分類されます。

詳しくは、エルトップさんのHPでどうぞ。


撚糸屋さんが担当するのは、この原糸に撚りを掛ける工程です。










下の写真が、撚りをかけたあとのキュプラの糸です。


まっすぐな糸だった原糸とちがって、ねじられているので、表面の光沢はソフトになっています。
この撚糸によって、糸は染色や織りの加工、そして着用時の刺激にも耐えられるようになるのです。



ところで撚糸工場の様子、ワイン醸造用ブドウを作る垣根式ぶどう畑に似ていませんか?

下に両方の写真を並べてみました。





似てる! (カゴまで!)





撚りをかけた後は、撚りがもどらないよう、熱セットをかけます。


撚糸工程の説明に感銘を受けているこの女性は、なんと東京造形大学とヤマナシ産地のコラボ事業、FUJIYAMA TEXTILE PROJECTにこの3月まで参加していた藤原かえでさん。
4月に就職したアパレルメーカーの研修として偶然の再会でした。

学校を卒業し、プロジェクトを巣立ったあとも
産地と関わる仕事をしてくれるというのは、ありがたいことです!
 




撚糸工程のあとは、染色です。

織ってからではなく、糸の状態で染める「先染め」がヤマナシ産地の得意技。

糸や生地の染色、整理加工をする
(株)富士セイセンさんに向かいました。



糸の原料を実物で見せてもらうと、実感がわきます。

キュプラの原料のコットンリンターは、綿実をやさしく包んでいるデリケートな繊維だということが分かります。



糸をこのようにボビンに巻いて染める方法を「チーズ染色」と呼びます。
ナチュラルチーズのカタマリのような形状からそう呼ばれています。




なにげないところに可愛らしい模様()が見つかるのも工場の魅力です。



次に向かったのは、染めたタテ糸をビーム(おまき)に巻く「整経工程」。
織物にとって経糸の整経は命ともいえる大事な工程です。









何百本もの経糸が整然と束ねられ、巻き取られていきます。
何百本もあっても、数センチにしかなりません。

これを何十回も繰り返して、必要な生地の幅になるまで巻いていきます。
糸の張力をずっと一定に保つ緻密な作業です。









整経工程のあと、富士急行線の下吉田駅へ。
 

富士急行線は、昭和初期に大量の絹織物を横浜港へ運んだ、当時の日本のシルクロードです。

出荷する織物を保存した巨大な倉庫なども残っていて、この駅は織物にとても縁があります。

下の写真は当時の貨物列車を再現したもの。織物がちゃんと積んであります。



駅舎に隣接したカフェには、なんとエルトップさんの商品見本

裏地の生地見本が置いてある駅なんて、日本でここだけでしょう。




次はいよいよ織り工程。
織る前に必ず必要な、タテ糸をつなぐ「撚りつけ」工程を見せてくれました。






糸同士を結ぶだけでなく、張力が一定でなければならない、大変な作業です。


これは織機の上のジャカード装置。
紋紙を使った昔ながらの織機を大事にメンテナンスして使いこなしている様子が伝わります。











壁には裏地のポスター。

キャッチコピーにあるように、この日は本当に裏地が表舞台の一日です。




そして織った生地は整理加工へ。

ふたたび(株)富士セイセンさんへ向かいます。





富士セイセンさんでは、生地の汚れやシワを落としたり、織りキズのチェックなどの仕上げ加工を行うほか、
静電防止加工、撥水加工、 起毛加工、エンボス加工など、生地の機能や風合いの価値を高める様々な加工を行っています。

ヤマナシ産地は、裏地だけでなく、
傘地、カーテン地、婦人服地、座布団地など、本当にさまざまな生地を作っている産地。

整理加工の職人たちの技術は幅広く、さまざまな要求に対応できるのが強みです。



そして最後に、富士吉田市内にあるエルトップさんの「生産物流センター」へ。
無数の裏地の生地が出荷を待っています。





エルトップさんによる産地見学ツアーは、
様々な工程が近い距離に点在している産地だからこそできる、
とても一日とは思えない充実した研修会でした。

また、強く感じられたのは、
エルトップさんと産地の企業さんたちの信頼関係がとても頼もしく、
良い生地を生産して届けよう!という意志を共有していると感じられたことでした。

国産の生地を作る現場が、どんなに心を砕いて良い生地を作るための努力をしているかを
見ることができるこのツアー。素晴らしい企画でした。

小林社長をはじめエルトップの皆様、大変勉強になりました。ありがとうございました!


そしてエルトップさんに、このブログのことで事前に連絡してみたところ、
なんと今日(7月29日(火))も、この研修会の第13回が開催されているとのことでした。
ヤマナシ産地のPR着々と前進していますね!



そして、シケンジョでもこの夏、ヤマナシ産地へのバスツアーを開催します。


題して「ヤマナシハタオリ産地バスツアー27AUG2014」。

こちらは公募制ですので、産地企業の取引対象となり得る業界関係者(及び出版・報道関係の方)でしたら誰でも参加できます。

ただいま参加者募集中です!

詳しくはこちらからどうぞ!


http://shikenjyo.blogspot.jp/2014/07/blog-post.html


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*日程 平成26827日(水) 

  9:00
 新宿駅西口集合、出発
10:45
 見学[(株)槙田商店、小野田染色]
12:30
 昼食(市内うどん屋)
13:30
 見学[渡邊織物、武藤(株)、(有)渡小織物]
15:15
 産地ミュージアムトーク(山梨県富士工業技術センター)
17:30
 情報交換会・夕食(「酒楽食彩さなだ」を予定)
19:15
 新宿へ  21:00新宿着

 ※
情報交換会は山梨県絹人繊織物工業組合主催により実施。

 ※
訪問先・訪問時間は都合により予告なく変更される可能性があります。




*実施主体
  主催:富士工業技術センター
  協力:山梨県絹人繊織物工業組合、
セコリギャラリー
 


*定員 15
  基本的に産地企業の取引対象となり得る業界関係者及び出版・報道関係者に

    限らせていただきます。

*参加費  4,000円程度  昼食・懇親会実費負担


*参加申込  
こちらのお申し込みフォームにアクセスし必要事項を入力してください。

  申し込み締め切り [ 814(木) ]

  応募多数の場合は抽選となります。815()に抽選結果・受付確認をご連絡します。

*お問い合わせ
  山梨県富士工業技術センター 繊維部技術支援科(五十嵐、秋本)
    TEL.0555-22-2100  FAX.0555-23-6671
   fj-seni@pref.yamanashi.lg.jp
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(五十嵐)