研究中の、微量バナジウムを発色補助剤にしたグリーンストールが完成しました。
素材はシルクカシミヤ、ウール、絹紡糸を交織しています。
染料は、発酵させて作る天然色素クチナシグリーン液を使っています。
植物の葉緑素(クロロフィル)等、緑の色素は身の回りにありふれていますが、実は単一でしっかりと染色できるものはほとんどないと言ってよさそうです。
そのため、藍と黄色色素の重ね染めによる方法がとられています。しかしながら、これは結構大変な作業です。
市販で手軽に入手できる緑色系天然色素に「クチナシグリーン液:山宗実業」があります。
クチナシは緑色の食品添加物として利用されています。
従来の染色方法では鉄を補助剤として若干、濃色へもっていけます。
しかしながら、鉄を用いてもすごい濃色にできるわけではありません。
また、最近の膨大な天然染料染色物(測色物総数9605点)の色彩的特徴の解析報告*によっても低明度の濃い緑色が存在しないと報告されています。
*古濱祐樹:CIELAB空間から考察した天然染料の色彩的特徴、繊維製品消費科学会誌、Vol.54(12)、p49-56(2013)
そこで、本研究は鉄よりも濃色にさせる方法(低コストで)についても探索中です。
現在、さらに発色以外にも微量バナジウムの効果について検証中で、面白い科学的実証データが得られそうな段階にあります。
デザイン及び作製は産地企業のフジチギラ株式会社さんに委託しました。
染色ノウハウの技術移転済みで、製品の製織データもフジチギラ㈱さんがお持ちです。
これらのストールにご興味のある方は、ぜひお問い合わせしてください。
(上垣)