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2013年6月19日水曜日

ハナモモ抽出液で染色

シケンジョで、染色に利用できないか、と真っ赤な液体を預かってきました。

今回、この液体を使って各種繊維を染めるテストを実施。


この液体は、果樹未利用素材(例:摘果モモ、花弁色素)を食品加工に用いる最新の研究における初期工程で発生します。
食品にはちょっと利用しにくい液体です。

しかしながら、通常の熱水抽出よりもかなり効率良く色素を取り出せています。

⇒染色に利用したら面白いのではないかという話をいただきました。

上の写真は、左が熱水抽出、右がクエン酸(レモンの酸っぱさ成分である)添加抽出。

酢酸、・・クエン酸等、さまざまな有機酸を添加する方法を試し、クエン酸が最も鮮やかな色を出すのに良いことを見つけています。

そういえば、シソジュース作る時もクエン酸を入れていますね。

数年前に植物染料の研究を発表したときも、クエン酸やビタミンC(アスコルビン酸)を添加してみたらいいかも、とアドバイスをいただいたことを思い出しました。

摘花したハナモモで冷凍保存していたもの。 

こちらの花ビラの色素を煮沸して取り出します⇒一次抽出液(1枚目の写真にある抽出液)。

抽出液の色を測定(分光測色計:SD-6000、日本電色工業㈱、設備利用料金¥400/1H)しました。

読み取った波長のデータから疑似色を表示してくれます。

1枚目の写真にある抽出液はケンフェロールと呼ばれる、おなかを下してしまう成分が含まれるため、おかしやジェラート等の食べ物の加工には利用できず、廃棄してしまいます。

食品の研究ではこれらを取り除いた次の抽出工程でできる液を使って、素敵な試作品が完成しています。



それでは、抽出液で染色テストした様子を以下に示します。


100℃で1時間。

*今回の分散染料はポリエステル用ではなく、アセテート向けのものを使用しています。
また、各染料の濃度は異なります。

結果
素材別の染まり具合として
酸性染料に近いことがわかりました。

シルク、ウール、ナイロンが染まります。

pHを酸性ではなく中性(写真右端)にすると、先の3素材に加えてアクリル素材(ふつう、基性染料が用いられる)がピンクに染まる現象が珍しくて面白いと思いました。

ただ全体的に、抽出液の濃さのわりに・・・
・・・・淡色なのがいまのところ残念な感じです。

しかし、産地の花ビラ染め製品を開発している企業からの情報によりますと、

現在では染まりにくい花の色素を、マイクロカプセル化して化学的にくっつける技術もあるとのこと。

これらの技術も期待です(バナジウムを含めて各種の媒染効果はあまり見られませんでした⇒発色補助の役割を果たす「媒染」を必要としないメカニズム?!)。





桃狩りシーズンに利用できる、果樹未利用素材(例:摘果モモ、花弁色素)を活用した食品加工体験に加えて、ハナモモによる染色体験や、そこで用いるピンクのエプロン等が提案できる、かもしれません。

(上垣)