山梨県にある養蚕農家の見学会が開かれたので、その模様をご紹介します。
絹の原料となる蚕をそだてる養蚕も盛んで、以前までは県産の絹糸のほとんどは山梨県内で生産されていました。
しかし、外国産の絹糸の普及とともに山梨県内の養蚕農家は減少し、今では数軒の養蚕農家しか残ってない状況となっています。
今回はこの貴重な日本の養蚕技術を見せていただけるということで、郡内の機屋さんの皆さんと見学に訪れたのでした。
しかし、外国産の絹糸の普及とともに山梨県内の養蚕農家は減少し、今では数軒の養蚕農家しか残ってない状況となっています。
今回はこの貴重な日本の養蚕技術を見せていただけるということで、郡内の機屋さんの皆さんと見学に訪れたのでした。
納屋の階段を上がると、そこにあったのは繭がぎっしりと詰まった格子状の紙が吊るされている、異様な空間。まるで現代アートの作品を見ているかのような迫力です。
養蚕において、この道50年の大ベテランのお二人です。
「蚕」という漢字は、天の虫とかいて「かいこ」と読みます。
ご夫妻の蚕に対する呼び方も「おかいこさま」や「おぼこさま」 と呼んでおり、蚕の対する尊敬の念をヒシヒシと感じました。
夏の間は、どんなに蚊が多くても蚊取り線香を焚かず我慢し、また、蚕を育てる部屋は、人間の寝起きするところよりも、風通しのよい住みよい場所を選ぶとのことでした。すべて蚕中心に回っているのが当たり前になっている生活には、何か現代人がなくしてしまった仕事と生活のあり方が見たようでした。
※おぼこさま(甲州弁):「ぼこ」とは子供の意味で、子供より大切であったから尊敬語の「お」がついたと言われている。
写真に写っているものは「回転蔟(まぶし) 」といい、蚕が高いところに繭を作りに登ると、重みで回転するという仕組みになっています。回転することで均等に繭が部屋に入るようになっており、シンプルながらとても機能的な構造にはとても驚きでした。
蚕は行儀よく自分の部屋を選び、繭をつくっていきます。
こちらは「回転蔟(まぶし) 」を抜け出し、天井で繭を作っています。
ご夫妻のお話を聞いている間に偶然にも羽化したカイコガ。
蚕は見ての通り羽は小さく退化し、飛ぶことはできません。人間の家畜として長い歴史のあいだに飼いならされたため、野生では生きることができず、野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物と言われています。
ところ変わって、桑畑にやってきました。
蚕の餌となる桑の葉っぱは自分たちの畑で育てており、蚕の生育によって与える葉っぱの硬さや収穫する畑を変えたりするらしいです。 適当なものをあげていると、糸の質が悪くなってしまうらしく、良い織物をつくるには、畑の土から考えなくてはいけないという事実には驚きでした。
間違って、農薬のついた桑を与えてしますと、幼虫から繭を作れなくなったりもするようで、そのようになってしまうことを「ボッコ」と呼んでいました。
きれいに整頓された桑畑。
ナスも、蚕の糞を肥料に育てたものです。
ナスも、蚕の糞を肥料に育てたものです。
ご夫妻の生活はすべて蚕とつながっており、それはより良い糸をつくるために自分の生活を養蚕にささげているかのようでした。
繊維産業に携わるということは、このような方々の魂の仕事の積み重ねの上にあるということを身をもって知った一日となりました。
これから、いままで以上に感謝の気持ちを持って生地を扱えそうです。
(高須賀)