2014年1月24日金曜日

坂口昌章さんセミナー開催しました! /セミナー編

1月22日(水)、今年最初のセミナーを、坂口昌章さんを招いて開催しました!


『テキスタイル産地のブランディング』と題したこのセミナー、
長年ファッション業界で企画、コンサルティングの仕事をされてきた坂口さんから、
ヤマナシ産地の今後のブランディング、ビジョンを考えるうえで必要な、
・国内/海外のファッション業界の現状と今後の動き
・国内生地産地の現状と課題、
・産地のブランド価値を高めるための提言


という内容でお話しを伺いました。


絹人繊織物工業組合の勝俣明美理事長をはじめ、産地の中堅~若手が大勢集まってくれました。
ありがとうございます!




坂口昌章さんは、数々のアパレル企業での商品企画、ブランド開発を経て、
繊維産業のコンサルティングなど幅広い分野で活躍される方。

ご存知の方もきっと多いのではないでしょうか。
坂口さんのブログ
「j-fashion」もぜひご覧下さい。






では、坂口さんのお話しから、気になる話題をピックアップしてご紹介しましょう。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




いま中国製テキスタイルは安くはなく、少なくとも標準。
「あれは安物だ」と言っていてはいけない。

むしろ、日本のテキスタイルが、いまや超高級品の価格にあることを意識すべき。

作る側は中級品と思っているかもしれないが、もはや価格はそうではない。

高いものを売るには、たとえば高級ブランドの旗艦店のようにお金や手間をかけ、
知恵を絞っていかに高く売るか?を考えなくてはならない。


この20年、日本は安いものしか作ってこなかった。
しかしいま、安いものは売れなくなっている。
一番下の裾は、もはや売れなくなっている。
売り上げが取れているセクションは、数は出ないけれど単価が上がったところ。
それでも流通は安くないものは怖がって手を出せないでいる。
しかし消費者はもっと先へ行っていて、良いものを探しているし、良いものなら高くても買う。


若い人は、ファッションにお金を使わない。
バレンタインは自分のために買う。恋愛ばなれ。
クルマばなれ、ファッションばなれ、ビールばなれ。そのお金はどこへ行っているか?
若者は二次元にお金を使い、デジタル産業がビジネスを伸ばしている。


団塊世代のどまんなかが65歳で、リタイアした。
シニアが消費の中心になった。
65歳は平均2000万円の預貯金を持っているという。
消費スタイルは、月々のサラリーベースではなく、預貯金と年金。
背広は脱いだ彼らは、今度は趣味にお金を払うだろう。
その方々は、安物は買わない。いいものを買う。


これからの時代、店舗は本当にいるのか?という疑問がある。
ショールーミングという言葉がある。ショップを下見をして、ネットで買う。

「小売飛ばし」ともいうべき現象が起きている。
極論すれば、商品を並べるだけなら、ショップはいらなくなる。

物を並べるのではなく、イベント、ことが起きる場所になるだろう。ショップは、すべてカフェになったっていいんじゃないかとさえ思っている。


こうして生産が変わった。流通は変わった。客は変わった。
では、産地はどう変わるのか?




小さな企業で企画担当を置くのは大変、という。
しかし、企画を置かないでどうする?
「何を作るか」がものづくり。
メーカーというからには、企画があることが前提になるはずだ。


企業が新しいことをやろうとするとき、できもしないのに、社員の中でやるところが多い。
本来は、できないなら、できる人にやらせるのが、当たり前。

こうした入り口が間違っているのに、細かいところにはこだわる人や企業が多い。
もっと専門家(デザイナー、プロデューサー)にお金を払うクセを身に着けた方が良いだろう。


どっさり生地を吊るしたハンガーサンプルを見たって、プロでも分からないし、
イタリア人だって分からない。
ただ見て選んでくれ、と言われても、ゴチャゴチャで何も伝わらない。

あるイタリア人バイヤーは、それでも一生懸命見て生地を選び
「これが欲しい」と言ったところ、
「それはできない」と言われて頭にきた、という話がある。
曰く、「俺は一生懸命選んで、この生地に恋をした。
 それなのに引き裂かれたら、もう恨みしか残らない!」



イタリア人にとっては、外見が重要。
マフィアも本気の会議は最先端のアルマーニスーツで決める。
それドンが着ているのを見ると、部下たちも「今日は本気の会議だ」と伝わる。
ビジネスも同じで、商談に普段着で行ったら、本気とは思われず、相手にされないだろう。


世界のラグジュアリブランドには、
おおまかにオートクチュールから出てきたものと、
カバンメーカーから出てきたものの2つがある。
ルイヴィトンはカバン屋だけれど、服も作ることで、ブランドになっている。
カバン屋がかばんを作ると、いろいろなものを作って、横に広げてしまう。

それではイメージが拡散して、ブランドにならない。
しかし、そこで服を作ることで、それが絞られる。それでブランドになる。


ヤンマーが、佐藤可士和を総合プロデューサーとして雇った。
ヤンマーの次世代トラクターを奥山清行にデザインさせた。
ワークウェアを元ミヤケの滝沢直己に作らせた…

社員は、これらを一目見て、うちの会社は変わる、と一瞬でわかっただろう。
そして消費者にもそれが一瞬で伝わった。

山梨は、テキスタイル、ワイン、ジュエリーと、
高級イメージのある産業があり、和も洋もある。
また和風すぎないところが特徴。
西洋のものを積極的に受け入れた土地というイメージを活かすべき。

商品だけでブランドはできない。
きなりの絹の色、水晶の透明感、ワインの色。
どんな質感が良いのか。それを突き詰めていき、最初のイメージの核を作ること。
人に意見を聞くと、広がってしまう。むしろ絞って行くことが必要。


甲斐というのは良い名前。
やり甲斐、生き甲斐、甲斐甲斐しい、など、ポジティブな意味合いで使われる。
甲斐という言葉を活かしていく道を考えてみては?


日本では、仕事を手配する人と、下請け仕事をする人に分かれている。
一方、イタリアは各工程が<売り買い>で繋がっていて、

たとえば染め屋は生地を買い、それを染めて売る。それぞれの工程での責任の持ち方がちがう。
何が言いたいのか。
工程をただ連ねていくのではなく、クリエーションが重なって行く仕組みが欲しい。




まだまだ沢山あった坂口さんのお話しのごく一部をご紹介しました。
みなさん、いろいろな部分で心に響く言葉があったのではないでしょうか?


そして本編のセミナー終了後は、鈴木客員研究員が登場。
受講者との橋渡しをしながら、質疑応答へ。








千年単位のヤマナシ産地の歴史をうけつぐハタヤさんたち。

産地の存続をかけた勝負を日々すごしているだけあって

真剣な質問、意見があいつぎました。

これまで取り組んできた富士山テキスタイルプロジェクト、ヤマナシハタオリトラベルなどなどの

今後のステップアップをどう果たしていけばいいのか?
大きな刺激をうけたひとときでした。






そして後編、セミナー前後に坂口さんを産地をご案内した、工場見学編に続きます!



(五十嵐)